あらすじ
いまあなたは、どんなきもちですか。こころってふしぎ。目に見えないのに、確かにある。うれしくなったり、かなしくなったり…目まぐるしく変わるこころの内側のようすを、彩り豊かな絵で表現します。「わたし」と「あなた」の感情に向き合い始める子どもたちにおくりたい一冊。付録として、いろいろな気持ちの景色を表現した「かんじょうカード」つき。
*電子版には、折り込み付録の「ふしぎ新聞」および年3回の一枚絵付録はつきません。
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Posted by ブクログ
福音館書店の月刊「たくさんのふしぎ」シリーズの本書は、『感情の起伏が激しくなり、内面的な成長が著しい時期』である、小学校3・4年生頃を対象年齢の目安とした、科学的な視点で「こころ」を見つめる絵本となっております。
『こころはたしかにあるはずなのに、目で見ることもできないし、さわることもできない』、確かにね。では、そんなこころをどうやって表現するのだろうと気になっていたのだけれど、これを『きみのこころのおうち』として、そこは「わたしたち『かんじょう』が住むところ」と紹介しているのが分かりやすい上に、とても親しみやすく、そこに本書の作者である齋藤槙さんの描く、温かみのある淡い色合いの絵が組み合わさることによって、こころの悩みを抱えた子どもたちに優しく寄り添ってくれる印象を与えてくれますし、絵の作品性として見ても、複雑で様々な気持ちたちを悲しい場面も含め、見事に想像力豊かな精神的世界として描いており、更にまるで大きな希望の灯がともっているかのような『かんじょう』が結集した形には、きっと勇気づけられるものがあると思います。
そんなこころのおうちに住んでいるのは、「ぷんすか」「よろこび」「しくしく」「ぶるぶる」といった、イメージしやすい可愛らしい名前から子どもたちへの配慮を感じさせる『かんじょう』たちであり、彼らの様子を見ていると、絵本の中の「きみ」にうれしいことがあると「よろこび」がお祝いの盛り上げ役をするし、かなしいことがあると「しくしく」が泣き出してしまい、更には雨も降ってきてと、こころのおうちは天気も雰囲気もびっくりするくらいに様変わりして、その目まぐるしさには思わず混乱してしまいそう。
ただ、そうした表現には齋藤槙さん自身、小学生だった頃に感じたことがそのまま活かされていることを知り、それは本書に付属された「ふしぎ新聞」の「作者のことば」によると、まるで「竜巻のなかにいるような目まぐるしく変わる景色のなかで、『安心感』とは程遠い感覚だった」ことから、『そんな竜巻の外側へと手を取り、連れ出してあげられるような絵本が作れたら』というように、齋藤さんの中では、自分のような思いをしてほしくない気持ちも込められていたことを実感することで、本書に対する真摯な思いにも、きっと気付かれるのではないかと思います。
そして、時には持て余してしまうような困った存在にも見える『かんじょう』だけど、彼らは「きみ」にとって大切なものを抱えていることも教えてくれて、例えば怒りの感情「ぷんすか」は『守りたいと願っているもの』と、何かを傷つけられたり奪われそうになるときに怒りたくなることが分かりますし、怖がりの「ぶるぶる」は『安心と安全』で、怖いというのは恥ずかしいことではなくて自分自身を確実に用心深く守りたいからなんだよ、ということが分かるように、「心地よくない『かんじょう』も、きみのこころを知るための大きなヒントなのかもしれない」のです。
更に、『気持ちはつねにうつり変わっていく』し、『どんな気持ちも、それでいい』と認めることも大切だと思うし、何より『わたしたちはいつもきみと一緒にいる』の言葉に、まるで私の中には「かんじょう」という友達が居るような感覚を覚えて、それは自分自身に何が起こっているのかを客観的に見て知ること、そして安心することの大切さを教えてくれることから、大人が読んでも気付きや癒しを得られる絵本なのだと思いますし、新学期を控え不安な気持ちを抱く子どもたちには、ぜひ読んでほしい一冊です。
☆5は対象年齢に向けたものとしての評価です。