あらすじ
これ、だれが殺ったことにする?
芸術村存続のために練り上げた殺人のストーリーは、
成立間近で、思わぬ事態に――!?
芸術家の卵たちが巻き起こす、魅惑の冤罪ミステリー!
「仕方がない。犯人になってもらおう」
アーティストを支援する山あいの芸術村に、九人の芸術家の卵と一人の居候、そして四人のスタッフが暮らしていた。
ニックネームで呼び合うこの村で、ある日、スタッフのわたしは、発明家エジソンさんの死体を発見。殺したのは恋人で歌人の小町さんのようだが、彼女を犯人にしたくない村長さんは、わたしに、CGアーティストの写楽さんを「真」犯人にするよう指示する。
無茶苦茶な要求に戸惑うわたしだったが、いつしか冤罪作りに夢中になって……。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
冤罪を“晴らす”ために奔走する話ならいろいろ読んだけど、冤罪を“かける”ために脳みそをフル回転させる話は初めてだった。
通常ならあり得ない事も芸術家の卵を支援するこの『芸術村』で起きた事件であれば成立する、
と何故か私も思ってしまうから不思議。
犯人をでっち上げて無事解決…しないところがまた面白くて一気読みした。
読めそうで読めない展開が良い。
でもホント書生さん(一般人)が居てくれて良かった、と心底思ったわ。
Posted by ブクログ
わたしの好きな石持作品が還って来た!
考えすぎな人たちが、はたからみたら異常なシチュエーション(死体を横にして、など)で、冷静に知恵を出し合うという読む方も脳を振り絞るこの感じ、大好きです。
Posted by ブクログ
石持浅海さんの新刊は、石持流の無理筋路線を維持しつつ、シチュエーションにひねりを加えた力作か。真犯人ではなく「真」犯人。その心は?
舞台は、様々なアーティストを支援する、山あいの芸術村。芸術家の卵たちはニックネームで呼ばれるが、スタッフの「私」は、発明家のエジソンさんの死体を発見する。殺したのは、現場で倒れていた恋人で歌人の小町さんのようだが…。
35歳で退村するルールのこの村で、小町さんは初めて物になりそうな村民だった。そこで村長は考えた。小町さんを逮捕させるわけにはいかない。誰か他の物にならなそうな村民を犯人にしてしまえ。そのシナリオを、「私」に描けという。
こんなもん、設定の時点で笑うしかない。石持作品で、警察への通報を遅らせるパターンは多いが、推理のためではなく、「真」犯人の捏造のためですよ、おい。警察を信じさせるようなシナリオなど、本気で描けると思っているのか?
村長は本気なのだ。元作家志望の「私」も、最初は渋っていたが、結局は嬉々としてシナリオを考える。周囲のスタッフも、村長を諫めるどころかあっさりと従う。毎回、登場人物の思考回路に呆れるが、今回は呆れを通り越してしまった。
言うまでもなく、予期せぬ事態に見舞われる呆れた面々。その度にシナリオは練り直し。それでも諦めない。出版社からオファーがあるという小町さんの短歌が、どれだけ素晴らしいのか知らないが。結局、混乱する一同の救世主となったのは…。
それにしても、芸術村のスタッフたちも、石持さんご自身も、芸術家をかなり曲解しているのではなかろうか? 小町さんに売れてほしいがために、他の村民には「堕落」の烙印を押す。こんな事件を起こした芸術村を、存続させるのか、おい。
何だか石持作品には珍しいエピローグという気がしないでもないが…やっぱりそうなっちゃうよねえ。淡々と語っている「私」はどうよ???
Posted by ブクログ
死体の発見者たちが、犯人だと思った人を庇うために、犯人をでっちあげようと右往左往する。
最初から勘違いなわけで……
前提が違うとシュールだなあ。
「芸術家」ってなんだろう。
で、いちばん気になったのは「書生さん」って、誰のお子さん? 今までのシリーズものに出てきた誰かかなあ。「さすがは、あの方の息子さんだ」とか思わせぶりな台詞があると、気になってしまう。
Posted by ブクログ
芸術家の卵たち9人が暮らす芸術村には、村長と番頭、寮母と丁稚(私)と居候の書生(大学生)が暮らしている。
ある日、スタッフの私が発明家エジソンさんの荷物を届けに行くと血だまりの中で死んでいて、隣りには恋人で歌人の小町さんが倒れていた。
殺したのは小町さんであり、彼女を犯人にしたくないと言う村長は、私にアーティストの写楽さんを犯人にするよう指示するのだが…。
私の過去にも驚いたのだが、犯人を決めてそのように計画を練るという村長に乗るのも如何なものか…と思っていると案の定、書生には勘づかれていたではないか…と、この後から怒涛のように繰り広げられる模様に驚く。
結局、芸術村存続のために練り上げたストーリーも思わぬ事態になってしまう。
エジソンを殺したのも多分あの人だろうと結論付けられるが、冷静に見ていたのは書生だけだったと。