あらすじ
全国の地方自治体が指定する有害図書、そして東京都が指定する不健全図書(8条指定図書)について、事例と議論を総まとめ。どこのような本が指定されるのか? 誰がどのように指定しているのか? 指定されるとどんな影響があり、どのような問題を引き起こしているのか? 「有害」の名のもとに多くの本を切り捨ててきた制度を見つめ直す。
■有害図書規制について聞くインタビューも多数収録
●漫画家:森川ジョージ
●漫画家:山本直樹
●作家・科学監修:くられ
ほか
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Posted by ブクログ
有害図書類指定制度――それは、青少年の健全な育成のために、必要な環境の整備を図ることなどを目的として制定された、青少年保護育成条例の一つ。
1950年に岡山県から始まり、全国に広まってから半世紀超。自身の著作が有害図書指定されたことから、著者らが有害図書の現在について調査したことで明らかになった、「地方行政」の"問題"とは――。
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平たく言うと、有害図書類指定制度は、青少年の健全なる成長と社会秩序のために、彼ら――制定者である地方議員――なりに"当時の"社会常識に従って制定された。しかし、憲法、民法、刑法、そして校則もそうだったように、この制度もまた定期的に見直されることなく、惰性で継続される内に形骸化していった。
有害図書類指定制度は決して悪法ではない。問題は、図書の選定基準が、"当時の"社会常識のままで行われているので、対象が性や暴力、反社会的と感じられるジャンルに偏っていて他の分野は野放しになっていること、さらに表紙や選定者の主観、過去の選定から判断して、内容を精読しないまま指定されがちであること、そして近年まで選定の詳細がブラックボックス化していたことであり、それが市民に知らされていなかったことだ。なお、本書でも明示されている通り、後者は報道までされたことで、透明化が進みつつある。
今一つの問題は、条例も法令も、議員自身が問題意識を持たないか、市民の方から働きかけないか、ある程度"炎上"しない限り、制定も撤廃も変更もされないことだ。
何かを変えるには、自ら動かなければならず、更に時間も手間もかかる。そうした地方行政を含む法制度について考えるきっかけになる、ということでは、若者に読んでほしい一冊だろう。