【感想・ネタバレ】トラウマからの回復と社会の修復 分断と再演を超えるのレビュー

野坂祐子

「本人の問題」をトラウマの影響の可能性から理解していくアプローチをトラウマインフォームドケア（Trauma Informed Care：TIC）という。まさにエンパワメントモデルであり，トラウマをかかえる人だけでなく，支援者の力も引き出してくれるものである。多くの事例を示しながら，著者は，児童福祉の領域を中心とした長年の臨床活動を基にトラウマにアプローチするための基礎知識と臨床知見を懇切に述べる。
本書には，全編にわたってトラウマによって傷つき，回復を必要としているのは，個人だけではなく社会ではないかという著者の思いが込められている。

[ブクログ · ★★★☆☆]

筆者がこれまでに書いてきたものを寄せ集めた書籍。そのため、同じような話が何度か出てくる。大事な概念なのはわかるが、何かにつけてトラウマインフォームドケア(TIC)なので、だんだん辟易してくる。おかげで、TICについてかなり批判的に捉え直すことができた。社会を変えていくことに着目するのは良いが、具体性には欠けているなと思った。総じて、筆者が監訳している『非行少年に対するトラウマインフォームドケア』で十分だが、治療共同体についてはもう少し調べてみようと思った。