あらすじ
東大哲学科出身
“世界で一番かわいい曲をつくる”異色の音楽家
注目の初エッセー
★FRUITS ZIPPER『わたしの一番かわいいところ』SNS 30億回再生
★FRUITS ZIPPER『NEW KAWAII』(第66回日本レコード大賞優秀作品賞)
バイラルヒット連発で注目を集めている現役の作詞作曲家である著者が、
「現代の歌詞、音楽のつくられ方」について書き下ろしたエッセー。
「良い歌詞とは何か?」「ヒット曲のためのタイトル作成法」「言葉の集め方」といったテーマを、
哲学の知識などを援用しながらユニークに考察し、音楽にまつわる「思考実験」としても楽しめる内容です。
アカデミックな知識に裏付けられた言葉とアイデアにまつわる思索は、
ミュージシャン志望のみならず、企画職や言葉をナリワイとする人たちにとっても大いに参考になります。
〈本書のテーマ〉
01 作詞家という仕事
02 歌詞の書き方
03 良い歌詞とは何か
04「歌詞の意味がわからない」の意味がわからない
05 個性について
06 歌詞と哲学
07 音楽と数学
08 歌詞は共感
09 アイドル
10 タイトル
11 言葉の情報収集
12 大考察時代に寄せて
13 AIと音楽
14 音楽教育について
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Posted by ブクログ
アイドルグループFRUITS ZIPPERとともに、『わたしの一番かわいいところ』を始めとするその楽曲制作で大ブレークした著者は、自分にとってはインディーズの頃推していた、哲学的なエッセンスの歌詞を歌うというコンセプトのアイドルグループ「フイロソフィーのダンス」の作詞提供者として馴染み深い人だったが、東大文学部の哲学専攻出身だったというのは最近知ってなるほどと思った。本著の「音楽論」の中身は、楽曲制作の現場にいる著者の「楽曲制作論」という意味が濃いのだが、HOWTOものではなく、そもそも歌詞と詩の違いは何か、そもそも良い歌詞とは何か、なぜ表現に個性的であることが求められるのか、アイドルが歌う楽曲とは何か、などの「そもそも論」の考察になっており、「哲学的音楽論」が小難しい哲学用語を使った抽象的な説明を言うのではなく、トレンドが物凄いスピードで変化していく時代の楽曲制作の在り方についてHOWTO的なことを書いてもすぐ古くなってしまうから、そういうことに影響されない根源的な部分での話題を心がけたという、哲学的な思考もしくは発想によって語られた内容となっている。「世界で一番かわいい哲学的音楽論」というのは自作のヒット曲のタイトルにあやかってのことで、特にかわいいわけではないが文章はとても平易である。まったくHOWTOがないかといえばそうではなく、例えば「言葉の選び方」、「言葉の情報収集の仕方」などのアイデア創出の方法などにも触れていくのだが、そこが「今限定」のHOWTOにはなっていない普遍性のあるものなのがさすがと思う。また根源的な話ばかりかというとそうではなく、昨今の特筆すべき動向として「共感というよりも自己肯定感」が好まれていることや、SNSなどを通じた大考察時代として歌詞の内容が多くの人によって「考察される」時代であること、楽曲制作の四大要素「作詞」「作曲」「編曲」「演奏」のうちAIが優位性を持つのはどれか、などにも踏み込んでいて、また時代の変化とともにこのような考察の続きが読みたいと思った。