あらすじ
ハイとロウ、芸術と路上、知性と野生。
異形のヒップホップ論にして、斬新な現代文化論。
批評再生塾の初代総代にしてラスボス、MA$A$HIが遂に単著デビュー!
──佐々木敦(批評家)
最後の音楽であるヒップホップは、未だ強く新しいナラティヴを生み出そうとしている。
そしてやがてそれは終わるだろう。
モダニズムという脂質と、歴史という糖に、同時に淫する、誠実な吉田の、誠実な両価性(アンビバレンス)。
──菊地成孔a.k.a. N/K
アメリカと日本(フッド)に引き裂かれた日本語ラップには、戦後社会のアンビバレンスが凝縮されている。
緻密な楽曲分析を通し、ヒップホップの本質とこの国の「リアル」を抉る、衝撃の日本=ラップ論。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
まず初めに言っておくが、この書籍は解説書ではなく、吉田雅史によるヒップホップの「批評本」である。それを念頭に置いておかなければ所々に違和感を感じることになる。佐々木敦の『あなたは今、この文章を読んでいる』でも同じような現象に遭遇したが、この本を読んだ上で取り上げられている曲を聴いて「何か違うな」と感じることが多い。小林秀雄曰く「批評とは他人の作品をダシに自分を語ること」と言うが、それを理解して吉田雅史という男のモノの捉え方や表現を楽しむための書籍と思った上で読んだ方が良いと思う。
実際そのように視点を切り替えて本書を読むと、ヒップホップというジャンルに対しての著者の思いが並々ならぬことがわかり、リズム符や哲学書を引き合いに出した緻密な持論の展開に引き込まれる。ヒップホップとはリアルであり、フィクションであり、貧困や言語的な問題による苦悩との葛藤を軸に歴史を刻んできたと見る著者の捉え方や未来のヒップホップの行末を言祝ぐ幕引きには胸を打たれた。賛同できかねる点も見受けられるが、それは自己を語る書籍で不特定多数の人間が読むものであれば避けられない事だ。伝統に基づきながら新たな視点を提示するアツい名著である。