あらすじ
国境なき医師団(MSF)の緊急対応コーディネーターが、戦時下のガザで、人道医療援助活動に携わった6週間の貴重な記録。
至近距離での空爆、戦車による砲撃、繰り返される退避要求・・・・・・。集団的懲罰のような状況の中、必死で医療に携わり、少しでも多くの命を救おうとする人々や、疲弊しながらも希望を失わないガザの住民や子どもたちの姿。
活動責任者として、スタッフの安全を確保しつつ、地域住民との交渉などにも奔走する著者が、さまざまな背景も交えながら、戦下のガザの現実を描く。
高野秀行さん(ノンフィクション作家)推薦!
「ニュースやSNSでは見えないガザ紛争の現実に瞠目した」
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Posted by ブクログ
ガザ地区で人道医療援助団体に属して活動した日本人活動者のルポ。
日本に直接影響を与える事は少ない紛争問題はマクロの視点から見がちであるため、ミクロの視点から語ってくれる本書は貴重だ。結局いくら和平を声高に叫ぼうが、実際に戦闘が行われ被害が発生しているのである。
これがパレスチナ側によった本である事は間違いない。本人すら否定しないだろう。イスラエルにも当然言い分はあるに違いない。しかしそれでも何とかしてガザへの攻撃はやめられなかったのか。イスラエルの恣意的な非攻撃地帯の設定にどれだけの無力な住人が被害を被っているか。このミクロの視点を忘れてはならない。
しかし同時にマクロの流れを無視するわけにはいかないのである。そうすると答えは出ない。兎にも角にも一刻も早く停戦となる事を祈る。
Posted by ブクログ
本書は、ガザ地区に国境なき医師団の緊急医療コーディネーターとして入った著者の活動記録です。日々のニュースでは決して知ることのできないガザ地区のリアルがありました。
ストーリーとして読みやすく、言葉が頭にスッと入ってくる感覚があり、一気に読み終えられます。また、色々と考えさせられたり得られたりすることも多かったのですが、ここでは3つほど上げようと思います。
1つはイスラエルは何の権利があってガザを封鎖し、パレスチナ人の生命・生活・安心を奪うのだろうか、ということについて考えさせられた、ということです。
すなわち、イスラエルは市民に害が出るのはハマスの責任としているが、実態を見ているとそうではなさそうです。ドローンや爆弾など、様々な兵器を使用して現に攻撃を仕掛けているのはイスラエル軍であり、戦闘を継続するのであれば、非戦闘員を巻き添えにしない作戦を行う義務があるのではないか、という疑問が思い浮かびあがります。
なぜ病院やインフラを攻撃し非戦闘員を巻き込むのか。なぜ執拗に戦争を継続しようとするのか。イスラエルやネタにエフ首相の目的は、ハマスの掃討のみではなく、別のところにあるのではないか…。と思わずにはいられませんでした。
2つ目は、敵対している組織を巻き込んで活動する際の具体的な方法論についての学びになる、という点です。中立性、「聴く」ということ、議論のまとめ方、コミュニケーションの難しさやそれらの進め方など、実際に経験豊富な著者であるからこそ実践的で示唆に富み、ここだけでも実りの多い読書となりました。
また、3つ目として、これは一つの危機管理に携わる人に向けた教科書にもなりうるのではないか、とも考えます。 戦時下という、ともすれば自分やスタッフの文字通り生命を失いかねないという極限状況の中で、それでも医療を提供するという目的のために何をどう進めていけばよいのか、著者の経験をもとに語られており、その考え方は普段の危機管理系の業務でも十分生かせるような内容でした。
最後に、この本は「目的を成し遂げるために強い意思を持って行動する」とはどういうことかも教えてくれます。中東ニュースに関心のある人だけではなく、仕事や勉強に目的をもって活動する方にもお勧めできる本なのではないかと思います。