あらすじ
日本で10人ほどしかいないクイズ専業作家は、日々どのように問題をつくっているのか? 視聴者を「へぇ」と唸らせるために、情報をどのように問題に仕立てるのか。数分で出したアイデアの裏取りに、なぜ1か月も時間をかけるのか。誤情報も混じるWikipediaを賢く利用する方法とは。クイズ作家の頭の中には、ビジネスや生活にも役立つ知識・知恵が詰まっている。随所に散りばめられたクイズを楽しみながら、クイズづくりの裏側がわかる本。
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Posted by ブクログ
<目次>
第1章 三日サボるとクイズ作問力は落ちる~ふだんやっている能力アップ法
第2章 ヒントは”日常”の隣にある~クイズは入口であり出口である
第3章 クイズ作家の収入は何で決まるのか~「誰も解けない」も「みんなが解ける」もダメ
第4章 情報の扱い方で生き残る~得意分野とその伸ばし方
<内容>
クイズの作問を生業にする人がいる。それもいわゆる”放送作家”ではなくて…。これは驚き!そのベースは「調べ魔」。確かに最近の高額クイズ番組では、”裏どり”をちゃんとしておかないと訴えられる可能性もある。その苦労話や作問が他のビジネスにも関係があることが読み取れた。ちょっとした視点の相違が面白かった。
Posted by ブクログ
集英社インターナショナルの書籍が近頃面白そう。
新聞書評でみかけた『ウンコノミクス』(山口亮子著)(未読)。他に今月(2025/7)半ばから時間をかけている一冊も集英社インターナショナルの本だ。そこに挟まれていた同シリーズの新刊図書案内の折りこみ広告で見かけたのが本書。
クイズ解答者の思考は、『君のクイズ』(小川哲著)を読んで、なるほどと感心したのも記憶に新しい。単に雑学の蓄積に長けているだけではなく、クイズ番組の特性、時代性を考慮、どんな問いが出題されるかの予想、問題文の助詞、接続詞の使い方から類推できる出題意図と解答の絞り込みなど、凡人には想像もつかない読みと駆け引きが、一瞬の間に繰り広げられているという凄みが鳥肌ものだった。
本書はその逆の、解答者ではなく出題者側の思考法というのだから、これも面白そうと興味を持ったものだ。
結果、出題創作のコツ、配慮は語られているものの、多くはクイズに使った雑学や、その活用法が大半だったという印象。
例えば、下記は、心がけ、コツであって思考法ではない。
“「次のうち」でクイズの解答の対象となる説を限定し(選択肢を用意)、「といわれる」でクイズの外にある別の説を排除しないようにする。こうした技術を使い、作問者はできるだけ事実に忠実、かつ解く人が「明日誰かにはなしてみたくなる話題」を提供するように心がけているのである。”
とはいえ、著者が培った出題を作る行程を経て思考というか、気持ちの持ちよう、行動が変わっていったという記述も見られ、それはそれで面白いところ。以下のような記述だ。
“「ですが問題」は解き手が推進力を発揮できる華のあるもんだいなのだが、私にとっては、様々なものに対して「未知の続きがある」と思える習慣をつける面で役立った。(中略)
いやなことの後ろに全然違う世界が広がっている可能性に思い至りやすくなった。“
世にも珍しい(と言っていいと思う)、稀有な職業を通じて、著者が人生をいかに謳歌しているかを読むのも痛快だ。
人生を賭けた「クイズ」そのものが、なにかの役に立ったと思える。それはクイズ作家冥利に尽きるというものだろう。
「私はクイズそのものよりも、クイズをと押して得たものを他分野で活かせたときや、クイズがきっかけで新しい事実に出会ったとき、他者とのコミュニケーションが活発になったときなどに、クイズが役立ったなと感じる。」
結局、本書も、昨今流行りのコミュニケーションにまつわるビジネス書だということがだんだん分かってくる。クイズ作家が、クイズを作り出す時に駆使する心掛けやノウハウ(これを思考法というならそうかもしれないが)、クイズの雑学を通じ、この社会でいかに対人関係を構築していくか、相手とコミュニケーションを取っていくかを、面白おかしく論じている。
「情報は、何を言っているのかわからなければ伝わらず、あえて踏み込んで理解しようとする人は少ない。そのため、入口となる素材は、情報の受け取り手にとってなじみのあるものであることが望ましい。」
これは、クイズの問いは、誰もしないことがらから始めるのではなく、小学生レベル、要は義務教育の基礎の基礎からはじめ、それに繋がる新たな気づきをその後に提示するという、コミュニケーションの段階、ステップの説明にもなっている。
入口は馴染みのあるものから、そして、相手の「へぇ!」という感心を引き出す。その内容を、著者は「明日、人に話たくなること」か否かを基準にしているという。その基準を満たすと、
“「ねえねえ知ってる?」という会話が生まれやすくなる。現代においては情報拡散の度合いがものごとの成否に深く関わるだけに、クイズに限らず様々な業種で応用できる項目ではないかと思う。”
と、明らかにビジネス書の様相を纏っている。
意外と言っていることは当たり前のことなのだが、その内容がつまらなくならないのは、クイズ、あるいは雑学を随所にまぶして読者の興味を離さない工夫がされているからだろう。
問題文を最後まで聞いて、解答を確認しようと、読み手の心理をうまくコントロールしている様が目に浮かぶ。
ビジネスの現場でも使えるような、~の法則、~理論といった小ネタが多いのも新書の読者層(ビジネスユース)を大いに意識してのことだと拝察。
そんな小ネタが仕事で有効ならば、『知って得する、すごい法則77』(清水克彦著)という法則ばかりを集めたお手軽な著作も出ているので、それも見てみるかと思う。こちらは集英社インターナショナルではなく中央新書だけど。