【感想・ネタバレ】若者の戦争と政治 20代50人に聞く実感、教育、アクションのレビュー

あらすじ

「社会や政治に無関心な若者」は、こうして生まれたー

「慰安婦」の文字が教科書から消され、戦争における加害の歴史を学ばなかった。
性教育がバッシングされ、激しいジェンダーバックラッシュが起こった。
生きづらさを自己責任で丸め込まれ、「ゆとり」や「さとり」と後ろ指をさされる。
第2次安倍政権下で義務教育期を過ごしたかれらは、当時の政治や教育にどう影響され、何を感じてきたのか。生まれ育った1994-2024年の政治、教育、文化、社会の動きを年表で振り返るとともに、若者たちの声を聞く1冊。

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Posted by ブクログ

一旦読み進めずに、自分なりにこの本の形式に沿って書いてみる。

1,「バカのすること」祖母がいつもそう言っていたのを思い出す。正直どういう背景でそう言っていたのかは分からない。満州から引き揚げてきた…サハリンや北方領土から逃げてきた…断片的にそう聞くことはあるが、北海道本土は被害が甚大ではなかったせいか(はたまた自分が知らないだけか)先の大戦のことは少し遠い国の話に感じる。
日頃人と人が競争する意味が分からないので、人と人が殺してまで争う意味などもっと分からない。「バカのすること」だと私も思う。

2,小学校3年生の11月頃だったと思う。授業で「火垂るの墓」を観た。この経験が私にとって人生最大のショックの1つだった。まず初めて「死」という概念を知った。そして平和な日常が突然奪われる可能性があることを知った。鑑賞後の数ヶ月、毎日夕方になると、いつこの日常が終わるかもしれないという不安が襲った。ちょうどその時間帯、母親がドリカムの暗い短調の曲(曲名は知らない)をピアノ伴奏ver.で練習していた。なので今でもその曲を聴くと、反射的に、北海道の雪が降り積もるまでの寒くて暗い空の下で、身近な人と引き離されてひとりぼっちで生きていくかもしれないという、恐怖や不安が襲う。
中学生の頃は社会科の授業でNHKの「映像の世紀」をひたすら鑑賞した記憶がある。それ以後学校で戦争について学んだことは、「史実」「歴史」でしかなく、感情的に何か刻み込まれているものはない。

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2025年10月07日

Posted by ブクログ

かつて田中角栄氏は、「戦争を知っているやつが世の中の中心である限り、日本は安全だ。戦争を知らないやつが出てきて日本の中核になったとき、怖いなあ」とこぼしていたという。

「日本の平和教育は徹底しているから、さすがに同じ過ちは繰り返さないだろう」とたかを括っていたが、近年の政府や国際情勢を見ていると、氏の「予言」は的中しているようにしか思えない。誰の脅しか日本政府は戦争に協力的だし、終戦の年に生まれたタモリさんも、今の時代を「新しい戦前」と呼んでいる。
そしてそれは本書の若者たちの証言で、更に立証された。

戦争と政治。
この2つの項目について、1994年から2004年生まれの20代に、アンケートをとったものだ。
「イマドキの若者は政治や国際情勢に疎い」と聞くが、その「定説」は読後見事に覆された。「何とかしたいけど方法が分からない」「自分たちは無力では?と思うことがある」など戸惑う声は散見されたものの、無頓着な者は50名中誰もいなかったのだ。

「今の日本で政治が市井の人々を守るとは到底思えず、そこにあるのは『対話』や『信頼』とは真逆のものだ」(P 99)
「生活することの脆弱さを知ってなぜ私たちは生活の基盤を切り崩すような争いや政治ができるだろうか」(P 161)

戦争も政治も、「疎い」どころか自分の言葉を以て、堂々と意見を述べる人が多かった。
「戦争とは国や軍によって多くの人が犠牲にされながら、同時に個人が自らを大きな物語に同一化していくような過程だと思う」って、21歳ではなかなか出てこない文言だと思うぞ!?
モニターを通してロシアのウクライナ進行やガザ爆撃で「戦争」を目にする中、なかなか自分ごとで捉えられないと打ち明ける子たち。「中高を卒業してから、日本は戦争加害国であることを徐々に知っていった」と、耳を疑うような話をする子も何人かいた。
平和教育も危ういのか…でもみんな危機感を覚えているみたいで、この先少しは希望を持って良いのかも。

もっと危なそうな政治教育。案の定、ほとんどが「置いてけぼり」を喰らったままに選挙権を与えられたようだ。
しかし全体で見ると、みんな意外と自発的。選挙権を得る為に住民票を移したり、制服姿でデモに参加したり…。海外生活や現地の学生との交流を通じて、政治について積極的に発言することの大切さを痛感した子もいる。
自分の一票は希望通りに働いてくれない。かといって声を上げ続けないと、簡単に「なかったもの」にされてしまう。
我々だけでなく、若い世代もこの悩みに直面しなきゃいけないのが、何とも心苦しい。

「私は自分の一票が社会を変えられるなんて思っていなくて、自分が社会に変えられないために一票を使おうと思っています」(P 107)

戦争を知らない政治家おじさんたちに好き勝手されていては、じきに戦争になる…。
若者たちの話を読んで気付いたのが、この危機を救うのは「想像力」と「危機感」だということ。今はSNS上のショート動画でも、じかに話を聞いたり肌身で触れていくことで、どちらも養っていける。
年上もこうしちゃいられない。ひと肌ふた肌、脱いでいこう。

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2025年07月13日

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