あらすじ
「有史以来、サキュバスってワンパターンなキャラばかりよね」
ミューデント。それは、第二次性徴期からの若い間だけ、サキュバスや雪女のような空想上の存在の特徴に覚醒し──しかしその能力の小ささ故に、社会に影響を与えることもなく現代社会に溶け込む若者たち。
普通の男子高校生・古森翼は、幼馴染のサキュバス先輩・斎院朔夜に振り回され、生徒のお悩み相談を受ける【文芸部( )】を立ち上げることに。そんな彼の元に、猫娘(ウェアキャット)のギャルJK・獅子原真音がやってきて……?
「あたしって、みんなより個性弱いよね」「は?」
ちょっと特殊な彼女たちが抱える、ありふれた思春期の悩み。そんな異能を持った彼女たちに、普通な「俺」ができることって──?
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
榛名千紘『異能アピールしないほうがカワイイ彼女たち』は、異能を持つ少女たちのきらびやかな日常を描きながらも、その実、自己肯定と他者理解という普遍的な主題に真っ向から挑む青春群像劇である。
本作の魅力は、まず会話の妙にある。軽快なテンポで繰り広げられるやり取りの中に、登場人物たちの不器用さや優しさが織り込まれ、ラノベ特有の軽さが単なる“ノリ”で終わらない深みを生んでいる。ヒロインたちは“異能”という特別な力を持ちながら、それを誇るでも隠すでもなく、等身大の悩みを抱えている。その姿は、現代を生きる若者の「何者かでありたい」と「普通でいたい」の狭間で揺れる葛藤そのものだ。
特筆すべきは、異能という設定を単なるファンタジー的装飾ではなく、自己表現の象徴として機能させている点である。彼女たちが“アピールしない”選択をする背景には、力を誇示することよりも、自分らしさを静かに受け入れてほしいという切実な願いがある。主人公・古森の「普通」であることが、そんな彼女たちにとっての救いとなる構図も見事だ。
読後に残るのは、派手な異能バトルの興奮ではなく、誰もが抱く小さな痛みと、それをそっと包み込む温もりである。青春の光と影を丁寧に描いた筆致に、作者の誠実なまなざしを感じた。異能という題材を通して、「人は誰しも異なる才能を持ちながら、それをどう生きるかが本当の物語である」という真理を、静かに、しかし力強く伝えてくる。