あらすじ
祝! 作詞家生活55周年。2100曲以上の作品を世に送り出してきた空前絶後の作詞家が、日々思うこと、思い出すこと、これからのことを縦横に語る。朝日新聞土曜別刷り「be」の人気連載「書きかけの…」待望の書籍化。
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Posted by ブクログ
作詞家•松本隆のエッセイ。2017年に朝日新聞夕刊に載ったものと、2022〜2025年8月2日までの朝日新聞日曜版に載ったものをまとめた一冊。作詞活動55周年記念公演に合わせて出版されたものだろう。
“はっぴいえんど”のドラマーとして作詞を担当した時代から、松田聖子の一連のヒット曲を世に送り出した時代も含めて、今の松本隆が現在進行形で語られている。所々に“詩人”としての矜持が顔を出していて興味深い。
【余談】
個人的には、松本隆の本当の“凄さ”に気付いたのは、ようやく1990年頃になってからだった。
自分がリアルタイムで聴いてきた
太田裕美 と、
岩崎宏美 (偶然だがどちらもヒロミ)のシングル曲を、CDで発売順に聴き返してみて初めて気付いた。
“両者とも作曲者は全て同じなのだ!”
だが、受ける印象が違う。全然違う。極端に言えば、太田裕美の曲は、本人が“今”唄っても、さほど違和感を感じない。
だが、岩崎宏美のデビュー当時の曲は、年齢を重ねた女性歌手が唄うのはやはり無理がある。あまりにもアイドル然としていて、“十代の女の子のナマの感情”がストレートに語られた歌詞だから。(作詞は全て阿久悠)
全ての曲が筒美京平の手によるものである事は更に驚異的だが、両者の違いが“作詞家”の視点が生む方向性による違いだという事に初めて気付いた瞬間だった。
同様の事は松田聖子の諸作品にも言える。
“今”でも唄えるのだ。
言葉に普遍性を持たせる魔法。その魔法を使う魔法使いのことを人は“詩人”と呼ぶのだ。