【感想・ネタバレ】私のマリアのレビュー

あらすじ

全寮制の名門女子校白蓉女学院で“白蓉のマリア”と謳われる女子高生・藤城泉子が消えた。事件か事故か、あるいは泉子の自由意思による失踪か。動揺に追い打ちをかけるように、泉子の実家で放火殺人が起こり、犯人と目される大学生を15歳の少年が刺傷する事件が発生。寮で同室だった鮎子は泉子を案じ、泉子の従兄の藤城薫と行方を追うのだが、薫は泉子がすべてを仕組んだと言い出して……。従兄弟、幼馴染み、ルームメイト、王子…。マリアの失踪に、やがて周囲は歪み始める。――2023年ノベル大賞〈佳作〉受賞作。失踪からはじまる青春ミステリー!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

全寮制の名門女子校・白蓉女学院で、”白蓉のマリア”と謳われる女子高生・藤城泉子が失踪した。その直後、泉子の実家で放火殺人が起こり、犯人と目される大学生を泉子の親戚である15歳の少年が刺傷する事件が起こる。
泉子と寮で同室だった鮎子は、泉子の従兄のであり刺傷事件犯人の兄である藤城薫と行方を追うが、薫は事件の黒幕は泉子だと言い出し……。
誰もが焦がれ、異常なほど崇拝された美しきマリアは、一体どこへ消えたのか?


ある全寮制の女子校で、マリアとまで称されるほど美しく、優しく、清らかな女子生徒・泉子。突如失踪した彼女の謎を紐解いていく、偶像崇拝と神殺しの青春ミステリ小説です。

慕われ、崇拝され、愛されたマリア。誰もの理想で、その理想を汚すようなことを誰かが口走るだけで学内がパニックになる、理想からの逸脱を一切許されない、まさに人工の神とでも言えるような美しき女子高生。
「理想」という枠を一歩たりとも踏み越える事が出来なかった、そんな聖少女の「素顔」を暴いていくのは、フィクションとはいえ申し訳なさがありました。
人は、結局自分の感情というフィルターを通してしか他人を見ないので、誰にも本当の自分を見てもらえなかった泉子はさぞ窮屈な思いをしていたんだろう。そして、だからこそ救いを選んだんだろう。それが罪と分かっていても。
なんとも不幸で残酷で、けれど彼女にとってはこの世で唯一の美しく幸福な結末だったのだろうと思います。

私もいわゆる「推し」的な対象を、一ファンとか恋愛的にとかではなく崇拝方向で好きになりがちなので、相手も一人の人間で、間違っても神とか天使とかではないという事をよくよく心に刻んでおかないといけない。本当に。

ちなみに、こちらは2023年の集英社ノベル大賞の佳作受賞作で、作者さんのデビュー作だそう。またこういった詩的で美しいストーリーが読めたらと思うと、今後のご活躍も楽しみです。

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2024年07月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゆっくりと、本当にゆっくりと明かされていく「マリア」の本当の姿。
ぽろぽろと完璧だった姿が剥がれて見える様は、終始見てはいけないものを見ているかのような罪悪感が付きまとった。
周囲は彼女が完璧な「マリア」だったという。
彼女を貶せば学内が混乱するほど。
崇拝するあまり彼女のために殺人を犯す人まで出てくる始末。
誰もが彼女に憧れ、彼女の唯一になろうとし、そしてその唯一になれずに絶望する。
彼女の謎を追うことになった鮎子もまた、彼女にとって唯一の存在がいた。
ただ皆の「マリア」ではなかったけれども。
だからこそ、鮎子は辿り着けたのかもしれない。
本当の「マリア」の姿に。

とにかく不思議な雰囲気の話だった。
通常とは違う狂気というか不穏さというか、そしてそれを見てしまった罪悪感、この先を見てもいいのかという禁忌感、とにかく終始不思議な感覚に陥った。
着地点が気になって、結末がどうなるのか気になって、とにかく必死で読み進めた。
7章までは本当にローペース、7章からは急展開。
そして、最後の最後に見せられた光景は……あの場面は最大級の罪悪感があった。
凄惨な殺人事件の現場を見るより余程恐ろしいものを見たような、それでいて酷く美しいものを見たような……
未だに何だったんだろうあの場面はと嚙み砕けずにいる。

ただ今思うのは、これで「マリア」が手に入ると思っていた男性陣が哀れでならない。
彼らはきっと一生気付かないだろう。
今のままで幸せだから。

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2024年04月30日

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