あらすじ
皇女の人生を悲劇に変えた。皇女の母を消し去った。青年の「姉」を葬り去った。世界を争いの炎で燃やした。――そのすべては、バルガ帝国の皇帝が描いた物語だった。
その物語を終わらせるため、ツシマとルプスは再びバルガの地に踏み込む。皇帝を倒すためには、その騎士にして六帝剣最強と名高いアマノミカミを避けては通れないと知りながら。
第一皇子カウサやその騎士フィーネ、ツシマの旧友アイマンまでもが己の信念を貫くためだけに、立場を捨てて戦いに身を投じていく。そして明かされる、ルプス逃亡劇の真相と皇帝の野望。ふたりの復讐の刃は皇帝を斬り捨てることを躊躇わない。皇女反逆編、堂々完結の第三弾!!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『汝、わが騎士として3 皇女反逆編Ⅱ』は、「仕えるとは何か」「守るとは何を引き受けることなのか」という問いを、最後まで真正面から描き切った完結編である。物語は派手な英雄譚へと逃げることなく、騎士と皇女、それぞれが背負う覚悟の重さを、静かでありながら確かな筆致で積み重ねていく。
本巻で印象的なのは、戦闘そのもの以上に、そこへ至るまでの決断の連鎖だ。剣を振るう理由、命を賭す意味、裏切りと忠誠の境界線――それらが安易に整理されることはない。登場人物たちは常に迷い、葛藤し、それでも選び取る。その不完全さが、物語に現実的な厚みを与えている。
特に「皇女反逆編」という枠組みの中で描かれる皇女の姿は、理想と現実の板挟みに苦しむ為政者としての顔を強く印象づける。彼女を守る騎士もまた、命令に従う存在ではなく、自らの意思で「仕える」ことを選び続ける。その関係性は主従という言葉だけでは収まりきらず、相互に覚悟を預け合う関係として描かれている点が、本作の芯の強さだろう。
物語の終盤は、すべてを劇的に解決するのではなく、傷や犠牲を抱えたまま前へ進む形で幕を下ろす。その選択が、このシリーズを軽いファンタジーに留めず、重みのある物語として読後に残す要因になっている。読後に残るのは爽快感よりも、静かな納得と、選び取った道の重さへの敬意だ。
『汝、わが騎士として』シリーズは、この最終巻によって、「騎士であること」「忠誠を誓うこと」を単なる美徳ではなく、覚悟と責任を伴う生き方として描き切った。剣と誓いの物語でありながら、人が何に忠実であろうとするのかを問い続ける、確かな厚みを持った完結編である。