あらすじ
とんちで知られる一休宗純。
その人生は波乱にみちたものであった。
将軍、天皇、僧侶、侍、民衆…さまざまな身分の人間の思惑が混ざりあい、混乱を極める室町時代。
高貴な身分でありながら出自を隠し、真剣に悟りを目指す一休宗純は迷いながら懸命に生きる。
矛盾と不条理と苦しみに満ちた世間のなかで、どのように生き、そして死ぬのかを考えるきっかけとなる傑作。
アングレーム国際漫画祭遺産賞を受賞し、世界からの評価が高まる坂口尚。
その遺作となる本作は、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した幻の作品。
大判かつ高精細な印刷で、人生の指針を与えてくれる本作をお楽しみください。
第4巻で描かれるのは、老境の一休。死を目前とする老いた肉体と精神の全記録。
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Posted by ブクログ
全巻まとめての感想。
おそらくとても多くの資料を元に一休さんの一生を漫画化された作品。
故に多くの漫画に見られる流れ、エンタメ作品としてのプロットの組み方はされていない。
また、複雑な時代背景についての権力者たちの描写が多く、作中で一休さん周りのエピソードへの強欲が私には芽生えた。
これもしかして禅の修行??
いやまぁ、そういう政治的なところが、仏教、ひいてはそういった世界と一休さんとの描写の緩急が重要なテーマになっているのもわかるんだけど。
権力者たちの話のみならず、猿楽界隈のエピソードが力強く描かれているが、これは……描きたかった……のか??
となる。
かっこいいけど、あまり本作で描かれる一休さんの人生に深く絡んでくるわけでもなく。
いやまぁ、ご子息が少し絡むけども。
絵柄や構図、ポージングはけっこうかっちょ良くて好き。
故にこの描写がしたい! が強く出てプロットよりも優先されてるところもあるのかなと思ったりもする。
良い事とか悪い事ではなくね。
時代もあるけど画風が無理な人もいるだろうなとは思う。
単純に一休さんは魅力的に描かれているけど、それ故に五山叢林側が悪として描かれて過ぎじゃね? ちょっとそれはそれでデマゴーグ的というかプロパガンダ的というか、禅じゃなくね??
とも思った。
まぁその辺り商品として売り出す漫画作品としてバランス取ってたらネームが描けないまま作品として浮かび上がることすら出来ないという感じかも知れないけども。
なんや感やいうて、この作品の一休さんから強く魅力を感じたし、かっこいい描写も多くておもしろかった。
作品評価とは関係ないけど、先に水上勉の『一休伝』を読んでいた。
理由は電子書籍で読めたからで、本作『あっかんベェ一休』最近復刊されるまで読みたくても読めなかった。
はじめから読めたら『一休伝』には手を出していなかったかも知れないので、それはそれで良かったのかも知れない。
縁だ。
なお、絵柄的には坂口尚先生の方が親しみやすいが、物語のテンポ的な意味では水上勉先生の方が読みやすかったり、引用した文献が違うのか、作品としての落としどころの違いか、それぞれの差異を見ながら読み返すのもおもしろい。
なんにせよ一休さんへの興味が増したので、他の文献でいいのがあれば読んでみたい。