【感想・ネタバレ】焼き芋とドーナツ 日米シスターフッド交流秘史のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年10月23日

赤毛のアンシリーズの割と後ろの方に、ボストンに行く話が出てくる。そのあたりの感覚なんだろうなと読み進めた。日本の話のほうは、晩年しばらくやっかいになった明治末生まれの大叔母大正デモクラシーの話や女子美ができたころの話(女子美西洋画の一期生だった)を思い出しながら読んだ。それより二回り位前の話になるの...続きを読むか。シスターフッドも日常茶飯も聞き書き運動も涙が出そうになった。

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Posted by ブクログ 2023年12月03日

テーマは「働く女性の日常茶飯 in 近代日米」(漢字多…)といったところか。
有名無名問わず、歴史上語られてこなかった女性たち、”彼女たち”の生の声がいくつも取り上げられている。名前を再掲されたら何とか思い出せる程度であるが、取り上げる範囲が広すぎて把握するのに難儀した…というのが本音。
でも歴史上...続きを読むスポットが当たらなかった…ではなく、当てられてこなかった事実なだけに、どの話も興味を掻き立てられた。

第一部「日本の女性たち」
『女工哀史』や米騒動で伝えられた女性たちの生き方が教わったものと違う。只々労働の辛さに打ちひしがれ、あるいはまるで本能のままに米問屋を襲撃したと言われる姿が1ミリも見当たらないのだ。

『女工哀史』の筆者 細井和喜蔵は内縁の妻だった高井としををモデルに女工を描写した。しかしあくまで登場人物の一人であり、としを自身の言葉で語られることはなかった。本書の言葉を借りれば、「『わたし』という主語の不在」ということになる。
しかし後の聞き取りで明かされたところによると、としをは空いた時間に読書や短歌を嗜むという非常に向学心の高い女工だった。労働集会でも積極的に発言し、そこで工場食の改善を訴えた。(ちなみに採用された驚)

富山の米騒動は話し合いで済んだという。70名ほどの女性が店の前に集まり店主に嘆願していたのを米穀店の娘が見聞きしていた。その後店主は速やかに救済に動いたそう。
逆に大都市にまで波及していた米騒動は、アナキストの力が働いて全国的にエスカレート。実状は富山の分も含め、民衆暴力に訴えた「男性の言葉」に変換されていった。

「新らしい女は多くの人々の行止つた処より更に進んで新しい道を先導者として行く」

第二部「アメリカの女性たち」
津田梅子の視点を交え、現地の女性問題を分析。新しい女性の生き方を示した女流作家の紹介も、読書好きとしては嬉しい。それに日本ほど「わたし」「わたしたち」が制限されていなかったことも。

そして、ここでもフォーカスされるのは日常茶飯である。
自分同様、本書のタイトルが気になった方も多いと思う。焼き芋は、日本の女工たちが間食として休日に好んで購入していたもの。一方ドーナツは、アメリカの工場労働者(大半が女性)にとって主食同然だった。
働く”彼女たち”の胃袋に欠かせないものに変わりはないが、後者は明らかに栄養面において危うい。その問題を解決すべく、アメリカではエレン・スワロウ・リチャーズという女性科学者が、安価で栄養価の高い料理を提供する「パブリック・キッチン」を開設している。

「『少なくともここでは孤独ではない』と確認する場、つまり、孤立した胃袋が、集団のなかで居場所を見つけた胃袋となる場であった」

ここで語られる日米の”彼女たち”は日常茶飯をしっかり見据え、下手すれば男性以上に思慮深かったといえる。偏った歴史観が綿々と語り継がれているのは情けないこと。
何かを学んだ際は、著者の言う「対岸の歴史」も気にしていかないと…と肝に銘じた一冊だった。

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