【感想・ネタバレ】ここにあるはずだったんだけどのレビュー

あらすじ

育たない胸に、どうしてこんなに悩んでいるのだろう。いくつ年を重ねても、いつも人生に自信を持てない。たかが胸なのに。されど、胸――。生きづらい世の中との隔たりをやわらかく溶かす珠玉の小胸小説。『ブラ男の告白』『EあるいはF』『授乳室荒らしの夢』『胸は育たない』の4篇を収録。

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Posted by ブクログ

大好きな佐々木愛さんの新刊がでていたことにようやく気づきました。
あるはずだったのに、ない。そのことに彼女らはいつだって大真面目に悩んでいる。
「たかが胸、されど胸」な珠玉の短編が4篇。

『EあるいはF』
推していた俳優が結婚したグラドルの胸のサイズがEなのか、あるいはFなのかに囚われる「Aカップ無職」の私。お洒落なFマークを掲げたファミーユ藤田に暮らし、近所の高校の吹奏楽部が奏でる音色を耳にしながら日々悶々と過ごしている。
直視できないような彼らの眩しさを前に、自身の高校生活がよみがえってくるなかで気づくもの。自分が傷つかないように逃げ続ける彼女に足りなかったものは、本当に胸なのか?あるいはちがう何かなのか?
コミカルながら胸に迫るような青春小説で、最後にはなんだか泣きそうになってしまった。

『ブラ氏の告白』
巷を騒がせている露出狂・ブラ氏は、ひょっとしたら自分の夫なのではないか——?という疑念をもった64歳になる主婦がやがてとった行動が、冷えていた夫婦のほんとうの関係を浮かび上がらせる。
こちらもまた切実でいてコミカル。ブラ氏捕りがブラ氏に、とでも言いたくなるような喜劇で、でもとてもあたたかくて、なんだか不思議な気持ちにさせられた。

『授乳室荒らしの夢』
ひょんなことから授乳室荒らしとなり、都市伝説化したとある女性がたどり着いた人生の境地。
(我ながら、さっきから何を言っているんだというようなあらすじが続いている。)
授乳室とはたしかにパステルカラーで誰をも受け容れてくれるような優しさでそこに存在してながら、そのじつ選ばれた者しか入室することは許されていないという厳粛さがある。
人目を忍び、あえてそこに不法に(?)滞在するという修行を己に課す主人公・偽モナが抱える傷に泣けた。授乳室荒らしの後継者がみつかったことは、お互いにとっての朗報なのだ。

『胸は育たない』
とある高校の吹奏楽部。ひそかに想いを寄せていた小田君が、とてもすてきな胸をもつ憧れの先輩・綾子先輩と睦み合う姿を目撃してしまった、未だかつて胸の成長を感じたことがない貫禄のAカップであるわたし。
小田君と綾子先輩が奏でる完璧なトランペットの旋律にコンプレックスを膨らませながら、オーボエを吹いている。
彼らのあいだに流れる緩慢な空気と、ときおり胸を刺すちくっとした鋭い痛みに、なつかしい青春の風を感じさせられた。私には好むと好まざるとにかかわらず勝手に育つ胸はあったけどさ、こんな青春はなかったよ。

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2024年01月13日

Posted by ブクログ

好きな俳優が一般女性と結婚し、それを祝福していた主人公。しかし後に元グラビアアイドルだったことを知ってから少し祝福の気持ちに変化する。胸のサイズがEかFらしく、Fだけは嫌だという主人公にとっては大事な理由。全四編収録されている短編集で、他の三編もモヤモヤしている今の自分をなんとかしようとするそれぞれの人物たち。あまり理解してもらえないことだったりする悩みもいつしか大丈夫と思えるようなものがあって温かくいま特に注目している佐々木愛さんの絶品の作品集。

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2023年03月26日

Posted by ブクログ

胸に纏わる四話収録の短編集。

たかが胸、されど胸。
よほどの胸フェチでない限り、そうそう他人の胸に関心はないと思うけれど、小胸に悩む本人にとっては人生にまで影響を及ぼす重大ポイント。

小胸がコンプレックスとなり、生き辛さまで抱えた彼女達の思いは切実だ。

"F”に拘る女性を描いた一話『EあるいはF』と最終話の『胸は育たない』は彼女達の必死さと切なさに愛おしさが込み上げる。

二話『ブラ氏の告白』ブラに拘る小太り夫婦の異様で奇妙な世界観に何度も噴き出した。

極限の生き辛さを描いた三話『授乳室荒らしの夢』の結末はグッと来る。

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2023年03月07日

Posted by ブクログ

胸にまつわる短編集。たかが胸って言っちゃいけないんだろうけど、推しと結婚した元グラドルの胸についてよくそこまで考えられるものだと思ってしまった。EあるいはF、なかなか面白くてちょっと怖かった。

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2024年08月10日

Posted by ブクログ

誰にだって悩みがある。
その内容は他の人に言えないような、
秘密にしたいことだったりもする。

何十年も月日が流れて、
後から考えたときに
「そんなことで悩んでいたときもあったなぁ」って思えている自分だったらいいなと思いました。

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2023年08月08日

Posted by ブクログ

ここに(一般人の平均レベルの胸があった)はずなんだけど。
せ…せつない(笑)小胸で悩んだあの頃を思い出すわ。今はもう諦めてはいるけども、たまに巨乳になってビキニで海に行きたいと妄想してしまうもの。

本書はことごとく微乳の女子たちを落ち込ませる出来事が勃発する。
好きな俳優の結婚相手がEカップ元グラドルだったり、好きな人が美しい胸の先輩と交わってるのを見てしまったり。
どう足掻いてもないものはない。その分、きっと違う得るものがあるはずと私は信じている。信じさせてくれ(笑)

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2023年06月18日

Posted by ブクログ

胸に悩む女性を題材にした短編集
『授乳室荒らしの夢』は好きだった。

この世界に馴染めないわたしが
あなたの幸せを祈り続ける
そして
『わたしはあなたにこの世界にいてほしい』
『あなたはわたしに会えたから、幸せになれる』
そう伝える。

そういうのっていいなと思った。

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2023年04月19日

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