あらすじ
――霧の向こうに浮かぶ、英国のもうひとつの貌――
●人間はいつでも得体の知れないものを抱え込んでいる
この本を「スピリチュアリズム」の入門書として読んで下さってもいいし、これらのエッセイが最初に連載された『心霊研究』の発行元である日本心霊科学協会では、そういうふうに見ているようである。
あるいは、この本を、十九世紀末から二十世紀初頭にかけて、産業革命の機械と石炭の歴史の背後に脱落した部分を補う数ページとして読んで下さってもいい。人間はいつでも得体の知れないものを抱え込んで、それを無視したり、軽蔑したりしながら、その力にひきずり廻されているという姿が浮んでくるかもしれない。
また、この本を、ちょっと変った現代英国の旅行記として読むことも出来るだろう。(「文庫の前書き」より)
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Posted by ブクログ
単行本は1983年刊。ぐいぐい読ませる。
著者は明治大教授(当時)。専門は英米文学。1年間のサバティカルを利用して、心霊研究の本場イギリスに乗り込んでゆく。副題も「心霊体験紀行」。
冒頭は、歴史的にも由緒ある心霊研究協会(SPR)、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで3日間にわたって開催されたSPRの国際大会に参加する。そこでなにを見、なにを聞いたのか。そしてどのような人たちと知り合うことになったのか。驚くのは、初めから本丸に斬り込んでゆくその姿勢。単刀直入なスタンスが本書を貫いている。
ポルターガイスト(騒霊)、交霊、透視、超心理学の講座の聴講、心霊治療……冒頭では心霊現象に懐疑的であったはずなのに、しだいに考えが変化していっている。これって、ミイラとりがミイラ?
研究者には見られないような文章のキレと展開の巧さ。読み終わってから気づいた、著者は芥川賞作家(1988年)。