【感想・ネタバレ】神風頼み 根拠なき楽観論に支配された歴史のレビュー

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Posted by ブクログ

 半藤一利氏は、日本人の欠点として「当座しのぎの根拠のない楽観性と排他的同調性の二つ」があると述べたという。 
 そのような欠点こそ神風意識によって形作られたというのが著者の仮説である。そして著者は「神風思想」の特徴を3点上げる。
1 楽観的な思想
2 厳しい現実から目を背ける
3 自分は特殊だと思い込む
そして、1と2は「当座しのぎの根拠のない楽観性」に、3は排他的同調性に関わるとする。

 以下、神風思想の元となったのが元寇における神社と武士の手柄争いの産物であったこと、神々への恩賞としての神社向けの徳政令=神領興行法について、足利義持の父義満時の対中国外交の方針変更に伴う永楽帝との交渉(本書で初めて知った!)、「日本は神国、天皇は神の子孫」という思想を吹き込んだ吉田神道の創設者吉田兼倶についてなど、興味深いトピックが取り上げられる。
 また近代に入ってからは、南朝を正統とした南北朝正閏問題のような国家の学問への介入、そして「神風」の終末として、特攻、国体護持と敗戦が語られる。

 様々な歴史的出来事を雑多に取り込んでいるとの印象は否めないが、知らなかったことも多く、また著者の評価がはっきりと打ち出されているので、全体としてたいへん面白く読める。 

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2022年09月20日

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