あらすじ
昨今、ニュースでも話題にのぼることの多い、クマによる獣害事件。
絶対的対処法のない巨大生物に、人はどう付き合うべきなのか?
本書は、明治から令和にかけて、人がクマに襲われて亡くなった事件のうち、記録がのこるものはほぼ全て収録。
当時の報道や、関係者の証言から浮かび上がる衝撃の現実。
熊撃ち猟師の経験談、専門家の研究成果も参考に「森の王者」クマの実態に迫ります。
●巻頭ルポ「山形 戸沢村人喰い熊事件」の通説は本当だったのか?
1988年、約半年の間に、3人が犠牲になった死亡事件。「加害グマの正体は、村で飼っていた子グマだった」との説は本当なのか? その真相に迫るべく、現地調査を敢行。
●インタビュー クマ撃ち猟師が語る「生きたクマ」の実像
190kgのクマを仕留めたこともある、現役猟師の高柳盛芳氏が、危機一髪の経験談など、生身のクマ体験談を語る。
●分析 日本のクマ最前線
ヒグマ、ツキノワグマの研究家、坪田敏男(北海道大学教授)、山﨑晃司(東京農業大学教授)両氏に取材。個体数の推移、近年の獣害事件の特徴、動物学的特徴などを通じ「日本のクマは今、どうなっているのか?」を探る。
【第1章クマ事件簿:明治・大正・昭和初期】
1875年 北海道弁辺村
1878年 札幌丘珠事件
1904年 北海道下富良野町
1915年 三毛別羆事件
1917年 北海道剣淵町
1923年 石狩沼田幌新事件
1949年 北海道大雪山旭岳
【第2章クマ事件簿:昭和後期】
1970年 福岡大学ワンダーフォーゲル部羆事件
1971年 北海道滝上町
1973年 北海道厚沢部町
1974年 北海道斜里町
1976年 風不死岳事件
1976年 北海道下川町
1977年 北海道大成町
1983年 秋田県田沢湖
【第3章クマ事件簿:平成・令和期】
1990年 北海道森町
1999年 北海道木古内町
2000年 山梨県市川大門町
2001年 北海道札幌市
2001年 北海道白糠町
2006年 富山県入善町
2008年 北海道標津町
2010年 北海道帯広市
2012年 秋田八幡平クマ牧場事件
2016年 十和利山熊襲撃事件
2021年 北海道厚岸町
2021年 北海道福島町
2021年 北海道夕張市
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Posted by ブクログ
北海道の三毛別事件や、福岡大学のワンゲル部事件、秋田のクマ牧場の事件や畳平の事件など、クマに人が襲われる事件と聞いて、いくつか思い浮かぶケースがあるけれども、それにしても結構な頻度で、人がクマに襲われていることに驚いた。最近は、山の中でなく人里や、それこそ市街地に近いところでのクマの目撃情報も度々耳にする。それだけ、人とクマの生活圏が近づいてしまっていることなのだと思うが、山の開発がむやみに進んだからかなと思っていたけれど、どうやらそればかりとも言えないらしい。クマを保護するためにとった政策によって、クマの個体数が増えてきているということもあるようだ。
ただ、いずれにしても、おそらくほとんどの場合は、クマは自らを守るため、本来であれば遭遇したくないところで人間に遭遇してしまったことへの防御反応としての攻撃である。確かに被害に遭った人々は気の毒だし、かろうじて生き延びたとしても、その恐怖たるや想像に絶するものがあるだろう。人的被害はないのが一番だし、それはやっぱり人間の安全を第一に考えないといけない。だけど、それはクマが悪かったのか?と思うと、むしろそうせざるを得なかったクマが不憫にも思われる。
本書にも出てきたが、母グマが子グマを守るために思いがけず遭遇した人間を攻撃した。人間は自らが助かるために、やはり母グマを倒さなければならない。母グマは射殺され、襲われた人間は命拾いをする。よかった、助かって、とは思う。だけど、残された子グマはどうなるのだろう。母グマなしで、野生で生きていけるのだろうか。
人間の傲慢なのではないか、とも思ったりもする。
蛇足。
プライバシーに配慮して、事件の個人名はそのほとんどがアルファベットに書き換えられている。でも1箇所だけ、それまでアルファベットだったはずの名前が、突然個人名で書かれている場所があるんだよねぇ、、、。校正漏れかな。こうやって、校正から落ちた箇所がそのまま本になって出版されて、第一刷は残り続けていくんだよね、校正者としてはたまらないだろうな、と、『文にあたる』を読んだせいで、変なところが気になったりする。
Posted by ブクログ
明治から令和までのヒグマ、ツキノワグマによる殺傷事件が1冊にまとめられている。
北海道の三毛別や福岡のワンゲル部などは特に有名で著書も出ているので知っている人も多いと思うが、怪我を負いながらも生き延びた人の情報も書かれているので興味深い。
ざっと、クマによる事件を知りたい場合には、非常に参考になる。
しかし、他の文献をまとめただけだし、被害者をイニシャル表記にしているが途中で本名を書いてしまったりと、詰めの甘さも感じる1冊。