感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
きちんと俵型やのに口に入れるとふんわりほどけるような優しいおにぎり…みたいな小説3編。
小児病棟に入院している小学生(夏の体温)も、陰キャな大学生小説家(魅惑の極悪人ファイル)も、転校先で今一つなじめない中学生(花曇りの向こう)も、みんなちょっと隣を見たらいそうな子達、彼らの生活にも物語の最初と最後にとんでもなく大きな差はないのに、何か希望が灯る締め方も良い。
表題作が一番読ませるし存在感も大きい、こんな舞台で、普通は何かしらお涙演出を欲かいてしまうところやのに、日常描写だけで小説が書けるのが瀬尾まい子の凄さだと思う。
2作目が妙に気になった。なんでストブラなんだろ?揶揄われたのか、いい人すぎて逆に一物あると思われたのか?そして昨今の小説家はやっぱメモじゃなくボイスメモなんやなぁ、そこは俺が前時代文化を背負いすぎなんやろな。
3作目、中一国語の教科書用に書かれた短編。これを読む授業で彼らは何を思うのか?思わせる幅を思いっきり持たせるのが凄い、ジャンプが掲げる「友情」とは対極の位置にある潜んでいるけど地味深い友情。
Posted by ブクログ
1話目は入院中の子供と検査入院できた子供の友情の話。
2話目は極悪人を書くために“ストブラ”を取材する話。人当たりがよくて腹黒、偽善と言われるストブラが可哀想だった。
友達ができて良かった。
Posted by ブクログ
病院で、大学で、転校先で。
それぞれの出逢い。
「夏の体温」
あたたかいけどなんだかひんやり。
二人のこの先が幸せにまた交差することを祈る。
「魅惑の極悪人ファイル」
自分に自信がなく(特に容姿)、友達付き合いもうまくできずに空想(妄想)に逃げ込む彼女には、若干同族嫌悪を感じるほど(苦笑)。
「花曇りの向こう」
掌編。物語は動き出したばかり。
Posted by ブクログ
夏休み中、小学校3年生は楽しく遊んでいるだろう時に自分は血小板数値低く、経過観察で1ヶ月以上入院している。ただでさえ夏休みで遊びたい盛り。瑛介は病院内で鬱屈した日々を過ごす。そんなある日、同学年の壮太君が病院にやってきた。陽気にあいさつするが、低身長のための検査入院らしい。しかし明るく遊びの天才で一緒に過ごすのがとても楽しい。楽しすぎてしまうと、退院時のお別れが非常に悲しい。壮太君の明るさに瑛介だけではなく自分も救われた。人間辛い時だけではなく、楽しい時もある。あの夏の思い出もいずれ昇華できるに違いない④
Posted by ブクログ
入院ってほんとつまんないし子どもだとなおさら。ストレス発散しないとやってけないよね〜。元々前向きでいい子だったけど、より良い方向に向かっててほんと友達ってすごい!
Posted by ブクログ
感想
最初の話は、そのような病気の人がいるんだという驚きと子供がどのように大人を見ているのかうまく書かれていると感じた。
あらすじ
短編集3つ。小学3年生の瑛介は、血小板が少ない病気で長い間検査入院していた。同じ病棟に来るのは低身長悩む幼児で、2泊3日の検査入院がほとんどで遊ぶ相手もおらず退屈していた。ある日壮太という同い年の子が検査入院してきて、たちまち打ち解ける。
二話目は、女子大学生の作家がネタを求めて、腹黒で有名な男子にインタビューしながら物語を作ろうとするが、彼の本当の人柄に触れるために自分のことを語っていると、自分がこれまでいかに人と関わりを持っていなかったかに気づき、以降、妄想に耽らず生身の人間に興味を持つようになる。
3話目は転校が多い中学生がどう友達を作るかという話。
Posted by ブクログ
より不幸なのは誰か決めようとして比較するとか、不幸対決で負けた方は辛い悲しいって言っちゃいけないとか、そういうのって全然意味がないなとよくわかった。
比べる時むしろ相手の幸せなところや良いところが見えていることになるから、それを伝え合えたらいいのかもしれない。大人にはなかなかそんな機会がないけれど(子どももないか)。
不幸自慢合戦の先でたどり着いたのは「そんなことより俺はお前といると楽しいよ、遊ぼうぜ」って、新しくて清々しい答えだった。それでいいんだな。
マイナスなことがあったからこそ その後プラスのことがもたらされたのだとしても、無理に前向きに「マイナスなこともひっくるめて全部よかった!」なんて言えない。言わなくてもいい。
この感じが瀬尾まいこさん作品の良いところだと思う。
完全な悪人なんてこの世にはほとんどいなくて、でも傷つけ傷つけられは日常的に多発している。
その傷はなかったことにはならないんだって認めつつ、登場人物たちが嘘のない笑顔を見せてくれる。変に美談で片付けようとしない冷静さがある。
そしてそれでもこの世は優しいものだと言ってくれるのが、心地いい。
リアリティを捨てずに少し優しくなれる気がする。