【感想・ネタバレ】彗星の孤独のレビュー

あらすじ

私も父も彗星だったのかもしれない。暗い宇宙の中、それぞれの軌道を旅する涙もろい存在。ふたつの軌道はぐるっと回って、最後の最後でようやく少しだけ交わった。そんな気がした。――「二つの彗星」


「遠くて遠い」父、娘たちのぬくもり、もう会えない人と風景。ひとりの人間として、母として、女として切実に生きる日常を、世界を、愛おしく、 時には怒りにも似た決意を持って綴る。闇から明かりさす世界に向かう、光のような言葉。


亡父・寺尾次郎(字幕翻訳家)について書き、大きな反響を呼んだ「二つの彗星」をはじめ、新聞、雑誌、ウェブ、これまで様々な媒体で書いた文章の他に、大幅に書き下ろしを追加。唯一無二の音楽家・文筆家による待望のエッセイ集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「好きだな、この人」と思った。
直接、会ったことはない。
この人の作った音楽を聴いたことはない。
仕事をしている領域は、たぶん、重なっていない。
日常生活の中でキャッチしている物事も、自分とはかなり違うのだろうと思う。

しかし、寺尾沙穂さんが著書「彗星の孤独」に書かれていることを読んでいて、
寺尾さんが感じていること、価値の置き方に魅かれた。

本書の中に、次のような記載がある。

『何かをアウトプットする時、
まわりの評価や世間の常識の中でものを考え、
そこからはみ出さない範疇で選択したり、
答えを出すことに私たちはすっかり慣らされている。
そのほうが楽だからだ。
まるでその術をうまく知っている人が、頭がよく、
仕事のできる人のようにも錯覚する。
うわさに耳をそばだて、安全牌のうまく頼れれば、「成功」はなかば保証される』

『文学や芸術はもっともっと一個人に開かれていいものだと思う。
誰がいつ始めてもいい。
その巧拙やレベル如何に最後までこだわる人もいるだろうが、
一番大切なのはひとりの人間にとっての切実な表現と喜びがそこにあるかどうか。
それから、それを認めて受け入れてくれる人が身近にいるかどうか。
これは、人の幸福を決める大きな要因であり、人が生きていく上で、最強のセーフティネットになりうるとも思っている』

寺尾さんは、音楽家であり、文筆家だそうだ。
音楽家も作家も、それで生計を立てられる個人は、一握りだろう。
表現を手段にして生計を立てていない場合、
その人の表現に価値がないというわけではない。
頭の中では理解できても、生活は切実な問題があるので、
お金にもならない表現を続けていてよいんだろうかと思ったり、
自分自身の表現活動が中途半端なものに思えたりする。

根っこを掘り下げれば、
「表現したいから、表現する」という動機があるはずなのですが、
それがどこかに消えてしまう。
自分の動機を掘り下げることについて思考停止して答えを出すほうが、楽だからだ。こうすれば上手くいくという方法や、安全な流れに乗っかっていくほうが都合がいいだろう。
でも、「それで幸せか?」と考えると、自分自身の答えが見えてくる。

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2019年07月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ようやく。『高橋源一郎の飛ぶ教室』で紹介されて、リストに入ってた本。すらすら読んでしまえるタイプの本ではなかった。むしろ、考えながらゆっくり読むべき本だったように思う。
寺尾紗穂さんの曲は、テレビ番組のテーマに使われてる一曲しか知らないので、時々、YouTubeで音源を拾ってきて、流しながら読んだ。
元ミュージシャンで後に翻訳家になったお父さんのことは、源一郎さんの番組で聞いてたし、あの時、紹介されたのもそのお父さんとのことを書いた部分だったような気がする。
だが、それが出てきたのは、ほぼ最後。それまでは、彼女が各連載で綴ってきたことをまとめたものがメイン。その中には、彼女の曲風とは真逆の(?)パンクでロックな思いのようなものが見え隠れしている。戦争のこと、原発のこと、放射能のことetc. 聞き書きで本も出されてるという。梯久美子さんばりの仕事ぶり。そして、自分の立ち位置を決めてらっしゃる覚悟が見えて、好感と尊敬の念を覚えた。
登場するいく人かの方は、寺尾紗穂さんファンには有名な方なんだろうけど、私は坂口恭平さん以外、知らなかった…というか、坂口さんのバンドにいらっしゃったと聞いてびっくりした。

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2025年10月28日

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