あらすじ
花塚姫子12歳、土屋文治30歳。ふたりの関係は「許婚」だった――。西洋のモダンな文化が広がり始めた大正時代。華やかで活気に溢れたその空気の中で、「文治さま」「許婚殿」と呼び合うふたりは、18の歳の差を超え、ゆっくりと愛を育んでいく。『ルドルフ・ターキー』でアメリカ黄金期を活写した長蔵ヒロコの最新作は、濃厚で芳醇な愛の物語。読切掲載時に熱狂的な支持を得て連載化が決まった本作がついに刊行!! 分冊版第3弾。
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月と名前
西洋モダンが定着した大正ロマンあふれる名古屋を舞台に十二歳の小学生の女の子と十八歳年の離れた軍人の男性の許婚の二人の日常を描いたくすぐったくなるような甘酸っぱいラブストーリーの第三話。
九月のある秋の夕暮れ。
その日、花塚家にやってきた文治は巻き割りの手伝いをしていた。
そこに姫子が手伝いを申し出たのでやらせてみるもののふらふらとおぼつかない。
そんな彼女に巻き割りのコツを教えながら小学校の事を聞いてみる文治。
実は姫子は最近東京から名古屋に引っ越してきたばかりだったのだ。
巻き割りを終えるころには日が暮れてしまっていて、女中たちによってお月見の準備が整っている状態なのでみんなで月見団子を食べるが東京や名古屋、静岡などそれぞれの出身地でお団子の形や味が違うことなどで盛り上がる。
姫子はお団子を食べながら月にいろんな名前があるのはそれだけ愛されているからだという話をされる。
そんな彼からの「姫子さん」という呼び名により一層ときめくのだった。
お団子に地域差があるというのはこの話で初めて知ったのでとても有益な作品だと思った。