あらすじ
人類の進化か終焉か?
念じるだけで意思を伝えることができる――。そんなSFのような技術が現実になりつつある。
脳科学とITを融合させた「ブレインテック」への投資が、世界各地で指数関数的に高まっているのだ。
2021年4月には、米ニューラリンクが、脳波でゲームを操るサルの実験動画を公開し世界に衝撃を与えた。
スタンフォード大学は手足が麻痺した男性の脳にデバイスを埋め込み、1分間で90文字の入力に成功している。
AIと競合していく時代に入った現在、この技術は人類の救いの手となるのか?
国内外で加速する研究の最前線から、医療やマーケティングへの応用事例、法的・倫理的な問題点までを解説する。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
脳を科学的に測定し、感情や思考を読み取る。そんな技術が今、現実のものになりつつある。IT企業などが開発を加速させる「ブレインテック(脳の技術)」の最前線に迫る書籍。
コンピュータなどの機械を脳と接続し、双方の間で直接情報をやり取りする技術を「BMI(ブレイン・マシン・インタフェース)」と呼ぶ。BMIは医療への応用を想定して基礎研究が進められてきたが、近年、半導体技術の発達を受け、IT産業が新たなビジネスチャンスとして取り組みを始めている。
テスラのCEOイーロン・マスクは、ニューラリンク社を創立しBMI分野に参入した。同社は、人間の脳に電極などを埋め込み、コンピュータなどを自在に操作する技術の実現を目指している。BMI技術の中でも、こうした「人体(脳)に外科手術を施す」ものを「侵襲型の技術」と呼ぶ。
侵襲型技術への生理的な抵抗感から、手術を要しない「非侵襲型」のBMI開発に乗り出す企業も少なくない。例えばフェイスブックは、「脳の思念でコンピュータなどを操作できる特殊な眼鏡やヘルメット」などの実現可能性を探っている。
IT企業のBMI分野への参入に対しては、個人データやプライバシー保護の観点から懸念の声も聞かれる。また、BMIには次のような問題が生じる恐れがある。
・企業が従業員にウエアラブル端末の装着を推奨し、これを介して忠誠心や意欲の有無などを測ろうとする。
・ハッカーや犯罪集団などが、脳に埋め込まれた半導体チップを介して人々の心身を自由に操る。
アメリカでは、四肢の一部を失った人が自在に操作できる「革新的な義肢」の開発が進む。最先端の義手は、モノを掴つかんだ時の感触などの情報を脳にフィードバックするという。