あらすじ
著者自らが厳選したハートカクテル決定版!あのきらめきが最新のデジタル技術でよみがえる!1983年から89年にかけて連載されたカラーコミックの傑作が復活。著者自ら厳選した作品を四季の風に乗せてお届けします。第3弾は「冬」の物語25編を収録!!
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Posted by ブクログ
イラストレーターであり漫画家のわたせせいぞう(1945-)の、『ハートカクテル』からの自選作品集。『ハートカクテル』は1983年から雑誌『モーニング』で連載されていたわたせの代表作で、本書収録作品の雑誌初出は1983年から1989年。
たまたま、わたせせいぞうの展示を観に行った。それまでは、享楽的な80年代シティポップ、雑誌『ぴあ』の表紙、という大雑把な認識しかなかった。会場には「ごく限られた地方に降った雪」と「ジンジャー・クッキー・レディー」の原画が展示されていた。再会の話と、別れの話。タイミングもあってか、どちらも深い印象を残した。本書にはどちらも収録されている。作者としても気に入っているのだろう。
鮮やかで多彩なPaintingは、まるで無意識の世界に広がる夢のイメージのようにも感じられるが、Drawingはシンプルで、それがかえって人物の表情を繊細なものにしている。登場する男女は、みな感情の表出が抑制的だ。それが当時の若者の姿そのものではないだろうが、そういうポーズに憧れる美意識はあったのだろうか。作品世界は、明るい色彩空間なのに、そこには、街の喧騒が遠くに聞こえているような、そんな抑えられた静けさを感じる。
「小説は風俗描写から古びる」と、星新一は繰り返し述べていた。ファッション、アクセサリー、クルマ、音楽など当時の若者を取り囲む商品文化のアイテムや、彼らの言葉遣いまで描く漫画となれば、そしてそれが都会的な流行に沿ったものであればなおさら、古びるのは早くなるだろう。しかし、少し時代を隔てた都市文化の洗練された雰囲気と、抑制された、しかし双方相手を想っている男女のやりとりが、読んでいて、自分を、現在という時間(あるいは時代)から引き離して、別の世界の可能性に開いてくれるようで、心地いい。この作品の、色彩の美しさと、抑制された男女の姿は、古びないような気もする。
再会は奇跡であるし、別れは厳粛である。そこには、生きるということに対する、自分だけではいかんともしがたい、世界の側の動かしがたさが、世界との断絶が、顔をのぞかせている。特に恋愛というのは、そういうものだ。そのいずれの場面にも、世界の側にいる相手に大事に橋を架けるような(『クヌルプ』)、そういう敬意と優しさを持ちあわせていたい。