あらすじ
日本とは何か。日本の独自性とは何なのか──。
古代以来、日本人は〈日本文化論〉を繰り返してきた。
神国思想、中国へのアンビバレントな意識、遠きインドへの憧憬。
空想と現実、劣等感と優越感、自国肯定と排外意識のあいだで
〈日本的なるもの〉をめぐるイメージは揺れつづける。
吉備真備の入唐説話から、天竺を目指して死んだ高丘親王、
空海いろは歌作者説、やまとだましひと肉食忌避まで。
圧巻のスケールで描く「日本の自画像」千年史。
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Posted by ブクログ
古代から近世までの日本の自己像がどのようにかたちづくられてきたのかということを、さまざまな歴史上の事実を紹介しつつ、ていねいにたどっている本です。
日本は、大国である中国に近いために、つねに中国と対比しつつ自己像をつくりあげる必要にせまられていました。本書では、むろん中国を対照とした日本の自画像の歴史を中心的に紹介していますが、さらに朝鮮、琉球、インドなどにかんする言説もとりあげられています。
さらに自前の文字をもたない日本が、この事実に対してどのように向きあってきたのかという問題や、「やまとだましひ」の意味が大きな変化を遂げながら近代以降に西洋との対比によって自国のイメージを形成する潮流へとつながっていったことなども論じられています。
一般の読者に向けて書かれた本ではありますが、さまざまな史料が提示されており、著者の博捜ぶりに驚嘆させられます。オビにはいささか挑発的な言辞が載っており、また本文中に皮肉めいたいいまわしが皆無とまではいえませんが、表象ないし言説の解釈にかたよった議論ではなく、史料をベースにした堅実な内容になっています。あえて近代以降の展開を切り捨てたことが功を奏しているように感じました。