あらすじ
高校受験を控えた小笠原幸は、バトン部に所属している。地元のテレビ局からバトントワリングコンクールの密着取材を依頼された途端、幸は退部を申し入れる。なぜ突然、退部を決めたのか……。教師にも親友にもその理由を話そうとしない幸。それには4年前の、ある出来事が関わっていた。そんな中、固く閉ざされた彼女の心を解きほぐしたのは、意外な人物だった。過去の扉が開かれる青春ミステリー。
※本作品は2019年5月に小社より単行本刊行された『君の××を消してあげるよ』を文庫化に際し改題し、加筆修正をしたものです。
感情タグBEST3
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怖かった。
終始ゾクゾクして、ラストは感動した。
助け合うことで信じ合うことができるんだと思った。可逆・不可逆という言葉は印象に残った。例えばケンカをしても仲直りできるから可逆。でも過去の傷は取り除くことができないから不可逆。それを考えながら生活すればより良くなるのではと思った。
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部活、友人関係、いじめ、恋愛、家族問題。
青春の日々。
なぜ彼女はいきなり部活を辞めたいと言ったのか。
めまぐるしい日々の中で問題が山積み。
過去の出来事で、がんじがらめになって、何もうまくいかない、苦しくなってゆく。
本当のことを言いたい、でも…。
「今日」あった出来事を大人に全て語るような、子供のように、天真爛漫でも、純粋でもない。
子供でも大人でもない溝にいる彼ら。
だからといって、何も知らないわけじゃない。
大人のずるさも傲慢さも、子どもとみなして言いくるめようとする手段も見破っている。
口にしないから、行動しないからと言って、わかっていないわけじゃない。大人はいつまでも子供だと思っている。
彼らは、モヤモヤもイライラも自分でうまく処理できないことも多いけど、間違った行動にも出やすいけれどあがいている、乗り越えようとしている、成長している。
自分達の正義を見つける。
間違ったとしても、後悔するとしても。
自分だけの力ではどうにもならなくてたいへんな日々を送る人には、自分の居場所があれば、ひとりでも、ひとつでもあればと、願う。
作中に出てくる、ロックバンドの歌も合わせて聴いた。
Posted by ブクログ
※
バトン部に所属する主人公の幸(サチ)が、
中学生活最後の大会を前に退部の意思を
顧問に告げるところから物語が始まる。
退部をバトン部の親友に伝えるタイミングに
悩んだり、家庭環境の負担も最底辺な状況
でないと自分に言い聞かせて自分を納得させる
ことで不満を押し殺したり、
周囲の変化に戸惑いながらギクシャクする微妙な
友人関係に居心地の悪さと孤独感を募らせる反面で、
自分は悪くない、私のせいじゃないと感じている。
胸に生まれる色々な思いをうまく相手に伝えたり、
鬱憤を適度に発散させる方法を未だ知らなくて、
揺れる感情のエネルギーがくすぶっている様は
小学生ほど幼くないけれど、高校生ほど大人に近づき
過ぎてないローティーンの繊細さやアンバランスな
空気を感じさせる。
知る前と知った後では元に戻れない不可逆さ、
危うい境界線上を行きつ戻りつしながら、
徐々に変化していく主人公たちの姿が瑞々しい
お話でした。