【感想・ネタバレ】市川雷蔵と勝新太郎のレビュー

あらすじ

市川雷蔵と勝新太郎ともに一九五〇年代から六〇年代にかけて、大映、いや日本映画界を支えた俳優である。

歌舞伎から映画へ移った俳優たちはみな、世襲と門閥で配役が決まる歌舞伎の世界ではいい役につけず、映画という新天地を目指した。そして雷蔵の死と大映の倒産で「時代劇映画の時代」はとりあえず終わり、残った時代劇スターたちの活躍の場もテレビへ移行した。雷蔵と勝は、歌舞伎から映画へ移り成功した最後の世代だった。

はじめに
前史
第一部 関西歌舞伎の凋落
第一章 脇役の子 一九三一年~一九五一年
第二章 歌舞伎役者・市川雷蔵 一九五二年~一九五四年
第二部 長谷川一夫を追う者たち 一九五四年~一九六二年
第一章 注目されないデビュー 一九五四年
第二章 雷蔵の飛躍 一九五五年
第三章 量産時代の始まり 一九五六年
第四章 開く差 一九五七年
第五章 日本人が最も多く映画を見た年 一九五八年
第六章 忍び寄るテレビ 一九五九年
第七章 それぞれの転機 一九六〇年
第八章 悪名 一九六一年
第九章 座頭市と忍びの者 一九六二年
第三部 両雄並び立つ 一九六三年~一九七一年
第一章 カツライス時代の幕開け 一九六三年
第二章 新しい取り組み 一九六四年
第三章 第三のシリーズ「若親分」「兵隊やくざ」 一九六五年
第四章 第四のシリーズ「陸軍中野学校」「酔いどれ博士」 一九六六年
第五章 勝プロ創立 一九六七年
第六章 雷蔵倒れる 一九六八年
第七章 雷蔵無念 一九六九年
第八章 雷蔵のいない大映 一九六九年~一九七一年
終章 生ける伝説 一九七二年~一九九七年
あとがき
市川雷蔵・勝新太郎・長谷川一夫 出演映画リスト
参考文献

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Posted by ブクログ

筆者独特の、取材無し、記録と文献から作りだす一代記。起こったこと、過去に書かれてあることのみに焦点をあて、それを筆者の解説(とはいえ筆者フィルターがかかりすぎているわけではなく、確かにそうとしか見えない解説)とともに読み進められる。

映画の隆盛から衰退までのあっという間の15年間(1955年~70年)を、雷蔵と勝新を中心に映画会社並列で語っているため、全体史のなかでの彼らを読み取れる。目に見えるように映画産業が衰退していったこと、そのなかで三船と裕次郎のプロダクション設立は存外に早かったこと、そして結果ほぼ同格の4大スターが自身のプロダクションを作る中で雷蔵のみは映画会社を離れることなく劇団を作ろうとしたことに改めて気付かされた。

そして、勝新は座頭市でブレイクする前は鳴かず飛ばず、が定説であるが、なかなかどうして、長谷川一夫、雷蔵の三本柱の一角を占めていたことは、上映記録からもよくわかる。また不知火検校から座頭市物語まで、案外長かったのが認識出来たのも、時系列で追う当書を読んでこそ。

これらは他の本に普通に書かれている事実の組み合わせであるが、見方・読み方の違いにより今まで自分は全くその流れに気づいていなかった。筆者の実在の登場人物の内面に入り込まない、起こった表層・書かれた表層だけを語る切り口はそういった気づきを与えてくれるだけに貴重。

また、当書でも文末に、もし健在であれば雷蔵の歌舞伎復帰は果たせたか、の簡単な考察はあったが、あっさりと「歌舞伎座の舞台にたてても、歌舞伎の舞台にはたてなかった」としている。
そういうものか、と昨今の歌舞伎をみても納得せざるを得ない。

0
2021年11月05日

Posted by ブクログ

歌舞伎から映画へ移り成功した最後の 世代、市川雷蔵と勝新太郎――

市川雷蔵と勝新太郎はともに一九五〇年代から六〇年代にかけて、大映、いや日本映画界を支えた俳優である。

歌舞伎から映画へ移った俳優たちはみな、世襲と門閥で配役が決まる歌舞伎の世界ではいい役につけず、映画という新天地を目指した。そして雷蔵の死と大映の倒産で「時代劇映画の時代」はとりあえず終わり、残った時代劇スターたちの活躍の場もテレビへ移行した。雷蔵と勝は、歌舞伎から映画へ移り成功した最後の世代だった。

力作。まったく知らなかった作品がいくつもあった。観る機会はあるだろうか。

0
2021年10月14日

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