あらすじ
人気の動物アイドルユニット・チタクロリンのミニコンサート中におきた指切り事件。
そこからさらに連鎖する指切断事件。嘘つきは誰だ!
綾鹿市動物園で行われるチタクロリンのコンサート。予想以上の集客で混乱する中メンバーの飯岡十羽が撫でようとしたレッサーパンダに指をかみ切られてしまう。チーフ警備員の古林新男は綾鹿署の刑事・谷村の聴取に応じるうちになし崩し的捜査に協力していく。そして関係者次々に襲われて指を切断される事件が続いていく。
小説において、「人間を描く」とはどういうことか。あるいは、ミステリにおいて「人間を描く」とはどういうことか。
いずれも、答えようとしてもそう簡単に答え得るものではない難問である。事は、作家や読者それぞれの人間観と関係してくるし、それは人の数だけ存在する。
ならば、問いを変更しよう。鳥飼否宇という作家にとって、「人間を描く」とはどういうことなのか、と。(解説より:千街晶之)
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Posted by ブクログ
動物園で行われた、人気アイドルユニット・チタクロリンのコンサート。その最中にアイドルがレッサーパンダに指を噛み切られるという事故が発生。そしてそこから、次々と起こる指切り事件。犯人は誰で、なんのために指を切るのか。謎だらけのミステリ。
読み心地としては、かなり軽いノリです。テンポよく次々と事件が起こって飽きないし、そのわりにはなんだか緊迫感が薄い気がするし、警察が一般人に事情聴取を任せるとか突っ込みたくなるような場面が多々あるし……だけど、解決は軽くなかった! とんでもなく複雑なパズルのようで、組み立てられた全景は実に見事。本当の真相にもぞくっとさせられました。やっぱりこういう世界にはどろどろしたものがあったのか(笑)。
次々暴かれるアイドルたちの秘密、そしてバラエティ豊かな「指切りの論理」にはもう絶句。それが繋がってこのひとつの事件になったという構図も見事。流石です。
Posted by ブクログ
メンバーそれぞれが動物好き、という共通点で盛り上がり、結成された3人組アイドルユニット「チタクロリン」。全国の動物園を回ってミニコンサートを繰り返し、着実にファンを獲得していっていたある日、事件が起きた。
メンバーのひとりが動物園の人気者のレッサーパンダに人さし指を咬みきられてしまう。檻の中に手を入れて、レッサーパンダに触れようとしたのがそもそもの間違いだが、彼女はなぜそんな行動に出てしまったのか。そして普段は人に慣れていたレッサーパンダが突然とはいえ、興奮してしまったのはなぜか。警護にあたっていた動物園関係者の間にも腑に落ちないことだった。
そんな疑問が解決しないまま、今度は他のメンバーが暴漢に襲われ、中指を切断されてしまうという事件が起こる。人さし指に続いて次は中指、これは偶然なのか、と警察関係者も頭を悩ます中、第三、第四の事件が連続して起き…。
最初は指を次々と切られていくだけで、殺人事件もおきないし、おとなしめのミステリーかと思ったけど、後半から怒濤の展開になって気づけば一気読み。正直そんなに期待して読み始めたわけでもないので、読後感はとても満足。
登場人物をその都度、動物に例えているところが変わっている。イメージしやすい。巻末の解説によると、著者は本名で鳥類や昆虫関係の本を出している専門家らしい。解説の千街晶之は19世紀フランスの風刺画家グランヴィルに通じるところがあると褒めているが、それは持ち上げすぎ。せいぜい外見を云々しているだけだと個人的には思う。
ラストの謎解き、凡庸な60歳間際の動物園警備員がホームズばりの推理で、事件の全容を解説するが、なんかひっかかる、と思ってたら、ほんとのラストが最後に待ってた。
プロローグの独白の意味もそれでわかった。
あぁ、とってもスッキリ!
もしかしたら、まだ騙されてるかもしれないけど、面白かったから騙されたままでもいいや。
Posted by ブクログ
指切り事件の裏に隠された真実
人気の動物アイドルユニットTiCrP(チタクロリン、元素のチタン、クローム、リンから)。
動物園で行われた彼女らのコンサートで、メンバーの一人がレッサーパンダに指をかみ切られてしまう。それを発端に彼女らの周りで次々に指を切られる事件が発生する。
まず、あらすじを読んだ段階から。
レッサーパンダは本当に人間の指を噛みきる力はあるのか?という疑問。
軽く調べたところ、平均身長約60cm、主食は竹。犬や猫と同じ食肉目。鋭い犬歯を持つが、臼歯は平たい形となっている。コードくらいは噛みきることはあるらしい。
さらに野生はともかく、動物園生まれの野生を知らないレッサーパンダは人間に慣れているので人間を襲うことはほとんどないそう。このことは本文にも記述されている。
このことから私は現実にはレッサーパンダはいくら華奢な女性の指でも噛みきることはできないと思う。運よく骨と骨の隙間(関節)を狙えたとしても一度では難しいと思う。
著者もあとがきから、
> 著者は本名で野鳥や昆虫関係の執筆を行っており、奄美野鳥の会会長も務めている。それだけに、著者の小説では生物に関する知識がふんだんに披露されることが多いのだ。
とあるので理解した上でそうしたのかもしれない。
読んでいて思ったことは読みやすいということ。
私は小説の技術やテクニックなど細かいことには詳しくないので、本の良し悪しは読みやすいか否かで決めることが多い。
この本は物語の展開が早く読みやすい。それでいて伝えるべき情報はきちんと伝えているので破綻がないように感じた。(プロローグなど)
またトリックについて、自分はそれが実際にできるかどうかも重要だがそれ以上にその裏にある人間模様(特に苦悩)が見れるものが好みなので、この本はとても楽しめた。
ネタバレぎみになってしまうが、
後半は少し要素を詰め込みすぎたのではないか?(特に推理部分)とは思ったのだが、その推理はただのミステリー好きの素人が推理した、ということでうまく消化されていたように思う。どのようにしてそう思ったのかは是非読んで確かめてみていただきたい。
Posted by ブクログ
動物園で行われたアイドル「チタクロリン」のイベント中にメンバーの指がレッサーパンダに食いちぎられる事故が起こり、それをきっかけに指切り事件が連続して起こり、果てには殺人まで起こってしまい、話全体で見たら陰惨なものだったが主人公と警察のやり取りがコミカルなのである程度中和されていて、フーダニットと同時に「なぜ指を切断したのか」という謎を解き明かすのが面白かった。
Posted by ブクログ
次々と人が襲われ指を切断される。
猟奇的な作品なのかと思いきや、その内容は意外にもコミカル。
探偵役の警備員を含め、登場人物全員を動物に例えるのがユニーク。
そして事件最大の謎である犯人が被害者の指を持ち去った理由についても十分納得できる。
その発想がまた面白いなあと。
Posted by ブクログ
動物園で開催されたコンサートでアイドルの指がレッサーパンダに噛み切られた。これをきっかけに次々と事件が起こり始め、そのなぞを動物園の警備員である主人公と警察官が追うミステリー小説。
主人公である警備員は人を見ると動物に例える癖があり、ちょっと剽軽な警察官とのやり取りもユーモアがあって楽しく読めます。
ただ、事件そのものは生々しく、暴かれた裏側の人間関係には少し胸焼けがしそう。
どうして次々と指が切断させるのか、事件のつながりは?犯人はだれなのか?
少ない手がかりを組み立ててパズルを完成させた主人公に拍手
Posted by ブクログ
綾鹿市動物園で行われる人気アイドル“チタクロリン”のコンサート。 メンバーの一人がレッサーパンダに触れようとして指を噛み千切られてしまう。 やがて関係者が次々に襲われていき・・・。 ある者は中指を、ある者は小指を、持っていかれたり、放置されたり、指にまつわる事件は連鎖していく、果たしてレッサーパンダの事故は偶発的な物だったのか? 誰かが嘘を吐いている。
○○的でお馴染み綾鹿市シリーズ、テーマは「指」。 なんと物語早々アイドルグループの指が噛み千切られる。 そして指切り事件は飼育員や他のメンバーに波及していく。 大事なのは殺してから指を切り取ったのではなく、生きている人間から指を切り落としていくという事。 さて指を切り落とす必然性をあなたは推理出来るのか、綾鹿市シリーズにしては実に理論的な帰着でした。
Posted by ブクログ
アイドルグループ「チタクロリン」のメンバーがレッサーパンダに指を噛みちぎられる事件を皮切りに次々に起こる指切り事件。プロローグがどう繋がってくるのかと思ってたけど、なるほど。
鳥飼さんの話は登場人物や警察がコミカル。あと人物イメージが掴みやすかった。
Posted by ブクログ
*
作者 鳥飼否宇(トリカイ ヒウ)
初めての鳥飼否宇さんの小説を読みました。
題名と表紙絵はインパクトがあり、
おどろおどろしい話かと思い、
少し躊躇いながら読み始めました。
途端、怖さよりもユニークさに驚きました。
登場人物が全て動物に喩えられていて、
一人ひとりが記憶にも残りやすく、
読んでいて楽しくイメージしやすい。
なので、一旦途中で本を閉じておいて、
少しして再開して読んでも直ぐにどの人物か
記憶が繋がり話に戻れました。
小説の中では指を切られる事件が続くので
本当なら面白いというのは不謹慎なのですが、
登場人物を動物に例える表現も面白いし、
出てくる刑事のキャラクターがコミカルで
笑いを誘われます。
また、ミステリー小説を読んでいる時の
恐ろしさや恐怖や脅迫感が少ないので
ヒヤヒヤしたり、ハラハラしたい方は
その点は物足りないかもしれません。
事件はパズルのように切れ切れに発生するので、
ピースがはまらないと解答が得られない点は
ミステリーそのもの。
最後まで読み終え、プロローグの入りが繋がり
楽しく読み終えました。
また、別の作品も読んでみたいです。
Posted by ブクログ
想像していたよりコミカル風でした。じっくり考えると「でもなぁ」と思うことはいくつかあったので、あえてコミカル風にして勢いで読ませたいのかなと思いました。読みごたえは個人的になかったのですが、読みやすかったです。