あらすじ
他人の背中に「幸福度」が見える。本の背をなぞって中身をすべて記憶する。毎朝5つ、今日聞くセリフを予知する。念じることで触れたものを壊す。奇妙な能力を持つ4人の高校生が、ある少女の死の謎を追う。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
10冊に1冊、それ以上の冊数を読んで1冊。時間を忘れて読み進めることができる小説に出会えると思ってて、まさしくこの本がその出会い。疲れてると活字が読めなくなるけれど、疲れていても続きが気になって読み進めてしまう本。浅倉さんの本、全部読んでみよう。
Posted by ブクログ
700ページ超のボリュームと小さめの文字にビビってしまったが、
読んでみたらかなりハマった。
4人の登場人物たちの、冒険のような濃い5日間の出来事や事件(?)を描き切った傑作長編。
4人それぞれの性格や描写も興味深かったし、とにかく惹き込まれるから先が気になって何度も夜更かし読み。
現実感は薄いけれど、そこはフィクションならではの面白さが詰まってる。
個人的に「のん」の性格や考え方がツボにはまって、クスクス笑ってしまった。
こんな子いたら面白いなぁ。
初浅倉作品かつデビュー作を手に取ったが、失敗なしと実感。読後感も満足。
他の作品もとても気になる。
Posted by ブクログ
皐月ちゃん死んじゃってるしお父さんの野望ってかなりの極悪なやつなのかなと思っていたけど、自分の失敗を繰り返さないようにという不器用なだけの悲しい理由だった(…ってことよね)最後に青い飴を舐めれば子供ができると言って渡してたやつ、きっと社長が改心して解毒剤を作ったわけだしいい方向にいったのでは
主人公たち4人、また会うんだろうなーと想像した
最後葵ちゃんは昏睡状態から復活した人のこと壊しちゃったから贖罪しなくてはと思いこんでたけど、チカちゃんを死なせてしまってるのに何もしてないわけだから全然許さなくていいよね…
表紙のイラストと中身に結構ギャップがあって、この表紙の子一人がトランプで魔術的なこととかで無双する話なのかとおもった
4人と皐月ちゃんの絵だったら良かったかも
Posted by ブクログ
こういうタイプの本大好きです♡
最初700ページ以上あると知り
読めるかかなり不安でしたが...汗
無事に読破!
おもしろかったです(*ˊ˘ˋ*)
4人の子高校生のキャラが素敵でした!
葵と江崎には またどこかで再会して
ほしいなーと思いました(´-`).。oO
Posted by ブクログ
あらすじ
"普通ではない"ところをもつ4人が集められる。なぜその4人でなければいけなかったのか?4人がすべきこととは?4人が"普通ではない"人になったのはなぜか?という疑問が徐々に解き明かされていく。
感想
同著者の「六人の嘘つきな大学生」に魅了されたため、この本を手に取った。文庫本にしてはなかなか分厚くて驚いた。
まず読んで思ったことは語彙や知識が豊かだということだ。もちろん作家という職業柄、語彙は豊かであるべきかもしれない。しかし、知識がインプットされてなければアウトプットすることはできない。また、先人たちの思想の導入も美しい。話の内容と思想を巧みにリンクさせ、物語を深いものにしていた。読み進めていくと伏線・回収もまた美しく行われていく。臨場感がありこちらも手に汗を握る気持ちで読む手が止まらなかった。
浅倉さんの作品はまだ2作しか読んでいないが、学ぶことが非常に多い。あとがきも良かった。デビュー作とは思えないほど読みやすく、内容が充実していた。
フレーズ
"《すべての良書を読むことは、過去の人と会話をするようなことである》こんなようなことをデカルトは言ったわ。"
"覚えたって理解しなければ意味がない。暗記しただけではそれはただの呪文であって、人生を豊かにする『言葉』には成り得ていないのですよ。"
"自分にとって重要な存在というのは、よく練られていない中途半端な表現や言葉で、簡単に体外に排出してはいけない"
"《好機に出会わないものはいない。ただ好機にできなかっただけだ》──アンドリュー・カーネギー"
"デカルトに言わせれば思考をしている最中の人間はちょうど森のど真ん中に佇んでいる状態といえるらしい。よって思考の森から抜け出すためには必ず『歩き出さなければ』ならない。"
※以下ネタバレ含む
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
黒澤父や黒澤娘の革命は方法としては賛同できるものではないが主張は理解できるし彼らなりの信念がある。江崎の言う通り、簡単に正誤の結論を出すことができない問題はたくさんある。しかし、乗る価値がある道を自分で決め、胸を張って進むことができるなら、それは自分にとっての正しい道であると思う。もちろん他人の権利を侵害するものや危害を与えるものは制限されるが…。
Posted by ブクログ
浅倉秋成のデビュー作にして760ページを超える超大作
伏線の散りばめ具合としては現作品の方がはるかにレベルが高いように思うが
デビュー作にして、心をざわつかせる伏線の散りばめ具合、それを綺麗に回収していく様は
あっぱれ以外言いようがない
5人の多視点での物語展開で読みずらさを始め感じたものの
1人1人のキャラがしっかりと際立っており
人物像が混じり合うことなく
整理しながら読める読みやすさがあった
6人の嘘つきな大学生でもそうであったが、一見不遇な立場にいた登場人物が最後はハッピーエンドで終わると言う展開も個人的にはとても心温まり非常に好きである
最後に今回の本の中で好きなフレーズを箇条書きでまとめたいと思う
P.223. 覚えたって理解しなければ意味がない
暗記しただけではただの呪文であって、人生を豊かにする“言葉”にはなり得ていないのですよ
ですので、自分の中にそっと落とし込んで、記憶の篩にかけた時、それでも自分の中に残った言葉こそが
読後感、あるいは感慨、感銘と呼べるのです
P,36 すべての良書を読むことは過去の人と会話をするようなものである
p.552我思う、故に我あり ルネ デカルト
世の中のすべてのものが疑わしく思え、すべての物の存在が証明できないとしても、その存在を疑っている自分だけは確かに存在している
つまり私は考えているのだから、確実に存在している
(中略)
私とは、即物的な世界から隔離された別次元に存在する物であり、精神は松果体を媒介して肉体を操作している
肉体は精神でないが故に存在が疑わしく、本当の意味で“真”のラベルを貼ることができるのは私の精神のみである
p.699
私は自信が持てなかった
私は自分に都合のいい助言を耳にして、一目散に飛びついているだけではないだろうか
蛍光灯にたかる羽虫のように、ただ自分の要求を満たす主体性のない迎合をしているだけなのではないだろいうか
ならどうしたらいい。私はどうしたらいいのだろう。江崎くん
(中略)
きっとそんなものは俺たちにはわかりはしないんだ
難しすぎるフィフティフィフティの問題なら東大生に出そうが、小学生に出そうが、正答率はちょうどチャンスレベルの50%。これを消極的選択だと詰られれば、俺は反論なんてできない。だが、俺はこれでいいと思っている
もし自分が考えた上で導いた回答なら“それに乗っかる価値は十分にある”
Posted by ブクログ
「六嘘」をきっかけに毎日読書に夢中な僕にとってずっと読みたかった作品です。
主要な4人の登場人物がとても魅力的な学生。これは浅倉秋成先生の作る文章にとことん魅了されているからだと思います。 この後あの子はどうなるんだろう…。 さっき画策した作戦はうまくいくのだろうか…。 ずっと彼らを応援していたので読んでいる時間がとても幸せでした。
内容について大須賀にだけ。
それぞれのエピローグを読んでいて、理由は分からないんだけど、そんな要素がたくさんあった訳ではないんだけど、大須賀には弥生を幸せにしてあげて欲しいと思っていました。 彼のエピローグがまさしくそういった内容で希望通りに運び嬉しかったです。
素敵な作品をありがとうございます。
Posted by ブクログ
いや〜おもしろかった!
若い学生モノで、登場人物多すぎると萎えてしまうきらいがある方なんですが、読み進めるたびにグイグイ引き込まれて夢中で読みました。
良い作品、良い作者に出会えたと思います。
Posted by ブクログ
ボリュームはあったけれど、読みやすくてほぼ一気読み。
うまくできすぎでは?と思わなくもなかったけど、そもそも「普通じゃない力」を持っているというスタートなので、そこまで気にならなかった。
高校生が力を合わせて何かを成し遂げようとさるのは、青春だなぁ。彼らの青春を楽しむための物語だった。
漫画的興奮
主人公の超能力の設定に心躍らされる。江崎の勝負場面はまるで漫画の激アツシーンを見てるかのようにハラハラドキドキして、オチも完璧だった。見事でした。
Posted by ブクログ
700ページを超えて非常にボリュームがありますが、4人の視点で交互に語られるので飽きずに読み進めることが出来ました。
多少ご都合主義的なところも見られますが、ファンタジーとして楽しむには問題なしです。
文庫本なのに厚くて持ち運びにくのは難点。
Posted by ブクログ
ちょっと長かったけど続きが気になる系でおもしろかった。だいたい気になることは最後の方でスッキリしてくれるのでよかった。江崎くんはロジカルでかっこいいけど、ギャンブラーになっちゃうの!?とちょっと笑ってしまった。静葉のあいつはクズすぎて壊れたままでいいのにと思ってしまったが、ちゃんと縁は切れてよかった…
Posted by ブクログ
デビュー作らしく、「6人の嘘つきな〜」と比較すると人物•心象描写で引けを取るもストーリーは素晴らしかった。超能力を使える高校生4人というありがちな設定でありながら「背中に数字が見える」「今日話される言葉が5つ聴こえる」など地味だが使い方次第ではひょっとして凄いのかも?と思わせてくれる魅力があった。キャラクターの中では江崎くんが好き。少し厭世的で大人っぽくあろうとする子供っぽさもありながら、クールなようで一番の気遣い屋さんで頼りになる男の子。主人公の大須賀くん、物静かな葵さん、妹的なのんちゃんも魅力たっぷり。黒澤孝介が考えるヒトの愚かさ。ヒトは「子孫の繁栄」という目的を背負っているがそのための手段であるセックスには代償が無く「快楽」のみである。子作りには代償が無ければならない。モニターのアンケートと称して「舐めたら子供が出来なくなる飴」「子供を作る代償として五感のどれかをランダムに失う飴」を何も知らないカップルに舐めさせるシーンは怖すぎる。黒澤の陰謀を止めるために江崎くんが『ノワール•レヴナント』に挑むシーンは熱い。ギャンブルは運だけでなくハッタリや度胸が必要なのだと分かる。あと葵と黒澤皐月の関係も好き。幼少期にピアノのライバルだった2人。葵が弾く「英雄」と皐月の「革命」。才能の葵と努力の皐月という対比に相応しい選曲。さらに父から愛されずやがて父殺しを計画する皐月にとって自分や周りの環境を変えたい想いも「革命」の2文字に相応しく、終盤に葵が新しい一歩を踏み出すために「革命」を弾いたのも印象的だった。
Posted by ブクログ
単行本にしてはページ数が膨大で最初は読むの大変だろうなと思いました。思った通り序盤は話を理解していくのに苦戦しましたが、少しずつ話を理解してくると読み進めていくのが楽しくなりました。最後の200ページくらいはあっという間でした!
Posted by ブクログ
特殊能力持ちのクセ強高校生4人が1人の女性の死を巡りある陰謀に巻き込まれていき、それぞれの答えを出す物語。
冗長な部分もあるかもしれませんが設定・登場人物・ストーリー・人間関係・結末 、よかったと思います。ボリュームはあるが意外とサクサク進み、混乱(何回も戻って振り返ったり確認するなど)せずに漫画の感覚で画を想像しながら読めた。
Posted by ブクログ
分厚くて読めるかな?と思ったけど、後半は一気読み。
最初の、背中に今日の幸福の偏差値が見えるっていう能力の話から面白そう!と思って引き込まれた。
後半、カジノの場面とか、侵入したりするところはハラハラドキドキで楽しめた。
のんちゃんがカタカナの発音が変な理由と、黒澤皐月の日記が、漢字で書くべき単語をたまにカタカナで書いてある理由が気になって、いつか理由がわかるのかな?と思ってたけれど最後までわからなかった。どこかに書いてあったのかな?
Posted by ブクログ
とても面白かった。
ファンタジーの中に絶妙に現実的な話が入っており、そこの融合に惹き付けられた。
4人全員が主人公で、与えられた言葉に対する考え方、行動の仕方がまるで違っていたのが面白いと思った。
心的な描写が多く、4人とは環境が全く違うのに共感出来る部分がたくさんあり、物語の中に引きずり込まれた様な気がした。
Posted by ブクログ
かなり分厚い本なので読むのに時間かかるかな〜と思ってましたがあっという間に読み終わりました。
謎解きする要素ももちろん面白いけれど、潜入するところや、カードゲームのところのドキドキハラハラ感もとってもよかった!
物語の発端となる孝介の、普通何かを得るためには対価を払うのに対して、子供の場合は快楽の上に得ることができるのはおかしい、という考え、あながち間違いではないなと思ってしまいました。もしかしたら、孝介が成そうとしていた世界が、現実に起こらないとも限らない、そう感じました。
Posted by ブクログ
超大作!!!
浅倉さんのファンなので今回の作品も読み終わった。
やはりこの方は天才か。
能力系バトル物?って思ってたけどそうではなく、(バトル系は教室での時にやってたしな)
二転三転がうまい! ファンタジーだからなぜ?っていうのは置いておいて…
中身も面白かった。
ただ一つ。あのくそやろうが治ったことと、ぼこぼこにしてほしかったなっていうモヤモヤだけ
Posted by ブクログ
背中に幸運レベルが見える人。
本を指でなぞると内容を記憶できる人。
毎朝、1日で聞く台詞を予知する人。
念じると触れたものを壊す人。
普通ではない4人が、ある少女の死の謎を解き明かす話。
分厚い本で読むのに時間がかかった。
でも、おもしろかった。
Posted by ブクログ
語り手となる主要人物の4人の高校生全員が特殊能力を持っているという設定。そのそれぞれの能力を活かして情報を引き出したりトランプゲームに興じるシーンはスリリングで読みごたえあり。キャラクターも総じて個性的で読者を惹きつける魅力がある。青春ミステリというだけあって少しばかりの恋愛要素もある。目が離せないシーンの連続で最後まで一気に読み進めてしまった。
ただ、少し気になったのは(ネタバレになるので深くは触れないが)物語の終盤で明らかになる敵の計画のところ。内容が少々現実的ではないし、その動機にあまり共感できなかったので。
Posted by ブクログ
女性陣は皐月と直接的な関係だったが、男性陣はかなり複雑な人間関係だった。また大須賀だけ平和ボケなパワーで、弥生との関係も実に平和なところが良かったというか救いだったような気がする。静葉には一言言いたい。真面目過ぎる。確かにもっともっと傲慢になって良い。恋愛も望めば良い。
Posted by ブクログ
浅倉秋成さんの初読書。長いけど、中だるまず読めました。推理ものではなく、時間制限の中で、ひとつずつ着実に真実に近づいていく。なぜ四人が異能を得たのか。異能を得た四人は、異能を与えた言葉に協力しなかったら、何が起きるのか。面白い
Posted by ブクログ
物語として、作者の理想の話に仕上がっていたのだろうなと思う(特にあとがきを読んで)。
実際疑問が残る点が多少あり消化不良感は否めないものの、面白くはあった。
中々予想はつかなかったけど、良い意味で、とは言い切りづらいかな。ミステリー及第点。
Posted by ブクログ
最近では一押しの作家、浅倉秋成のデビュー作。デビュー作ということもあり、作者が好きなこと、書きたいことを詰め込み過ぎていて、やや散らかった印象はあるものの、全体的な雰囲気やキャラクターなどは非常に好きな作品。
主人公サイドの登場人物は4人。この4人はいずれも特殊な能力を持っている。
他人の背中に「その日の幸福偏差値」が見えるという能力を持つ大須賀駿
指で本を読み、その本の内容を頭に入れることができるという能力を持つ三枝のん
毎朝、目覚めるとその日に聞く5つのセリフを予知する能力を持つ江崎純一郎
触れた物のスイッチを押すことで、それを完全に壊すことができるという能力を持つ葵静葉
少し長めのプロローグでは、この4人の能力の紹介と普段の生活が描かれる。
大須賀駿は、同級生の真壁弥生との淡い恋のエピソード
三枝のんは大量の本を買いに行くエピソード
江崎純一郎は、いつも訪れる喫茶店で「ボブ」と呼ばれる男とトランプゲーム「ノワール・レヴナント」を行うエピソード
葵静葉は、ピアノを弾くことをやめたピアニストとして、自身の能力で「壊した」ピアノを弾くエピソード
そしてこのプロローグの中で、4人それぞれが7月23日~27日に東京ビッグサイト東ホールで行われるイベントとホテルの宿泊チケットを手に入れる。
ここから、7月23日、24日、25日、26日、27日の話が描かれ、最後に少し長めのエピローグ、回想へと続く構成
7月23日は、4人の出会い。それぞれが別のイベントに参加する目的で、東京ビッグサイトを訪れる。
大須賀駿だけは、道中「メイ」や「ノワール・レヴナント」と名乗る謎の少女と出会う。
「あなたにも、一目会っておこうと思ったの。どんな人なのか少し気掛かりでね」とその少女は言う。
イベントが開催されないことに困惑しつつ、出会った4人は、それぞれが「普通ではない」能力を持っていることを知る。
4人は、能力を得たときに聞いた謎の声を思い出す。 「…その時が来たら、私に協力しなさい…」という声を。
4人は有明ボストンホテルに泊まり、翌日レゾン電子のイベントを訪れ、資料に記載してあった「田園調布」の住所を調べることにする。
7月24日。大須賀駿と三枝のんは、レゾン電子の偵察のため、モニターとなるイベントに参加する。
その中で、三枝のんは自分が読書をするきっかけとなった「さっちゃん」との出会いについて触れる。江崎純一郎と葵静葉は田園調布の住所へ。その住所にはクロサワという家があったが、火事で消失したという。
この中で、葵静葉は友人であるチカが自死し、そのきっかけとなった男を「壊した」話をする。
4人は、三枝のんがイベントの中で指で読み取ったレゾン電子の名簿から「クロサワ」という人物を調べ、「黒澤龍之介」を訪れ、謎の質問と悪い噂といった情報を得る。
レゾン電子には7年前に退社した社員が多い。火事があった「クロサワ家」で死亡していたのは、黒澤皐月。葵静葉は、かつてピアノコンクールでショパンの革命を弾く黒澤皐月に衝撃を受けていた。4人が能力を得たのは4年前の8月1日。それは黒澤皐月が火事で死亡した翌日だった。
黒澤皐月の写真を見て、大須賀駿と江崎純一郎は面識がなかったが、三枝のんには面識があった。かつての親友であった「さっちゃん」だった。ここで2日目、7月24日は終わる。
7月25日。三枝のんは、黒澤皐月とのエピソードを語り、葵静葉とともにレゾン電子への潜入を図る。レゾン電子への潜入はなんとか成功し、三枝のんはいくつかの資料を指で読む。しかし、レゾン電子の藪木という男がホテルを訪れ、追い詰める。
大須賀駿は、黒澤皐月が通っていた学校で情報収集を行う。江崎純一郎は、レゾン電子の元副社長・森重昭と会い、話を聞く。江崎純一郎は、森重昭からカジノの入場パスを受け取る。また、喫茶店で懇意にしていたボブが、レゾン電子の社長・黒澤孝介の兄だと気付き、自分に能力が与えられたのはボブとのつながりがあるからではないかと考える。7月25日、3日目はここまで。
7月26日。江崎純一郎は、森重昭から受け取ったパスを使い、三枝のんが本を買うために用意していた20万円を借り受け、カジノに赴く。予言と葵静葉から借りた音楽プレーヤーを使って、ノワール・レヴナントというトランプゲームの勝負に挑む。ノイズキャンセルと予言で勝ち、153万円までチップを増やすが、操作ミスで予言を活かせず、チップを失う。チップを失っても10ピリオドはゲームを続ける必要がある。当日返済は150万円。その後は1日1割の利子という金利で100万円の貸付を受ける。
江崎純一郎は、「~です。」となっていない予言がディーラーの発言でないことに気付き、実力でノワール・レヴナントを達成し、数千万円の勝利。ディーラーに黒澤孝介への面会を取り付ける。三枝のんは、黒澤皐月の家が火事に遭った際に残った品を預かっているサービスに向かう。そして、黒澤皐月の日記を指で読む。
大須賀駿によると、三枝のんの「幸福の偏差値」は58、江崎の「幸福の偏差値」は75だった。
7月27日
三枝のんが語り手となる形で、黒澤皐月の日記が描かれる。4人は手分けをし、江崎純一郎と葵静葉は千葉のレゾン電子の工場に向かう。大須賀駿と三枝のんは、レゾン電子本社に向かう。三枝のんは5階のトイレへ、大須賀駿は黒澤孝介と面会する。
三枝のんは、江崎純一郎と葵静葉が向かう千葉の工場のパスワードを盗み出すが、不正アクセスがバレ、藪木に捕まる。
大須賀駿による黒澤孝介との面会。黒澤孝介の計画は、子どもを産めない人間を作ること。江崎純一郎と葵静葉は三枝のんが盗んだパスワードで工場に侵入。大須賀駿から指示があれば、葵静葉の能力で「子どもを産めなくなる薬」を生産する機械を破壊することになる。
大須賀駿は黒澤孝介の考えを聞く。「子どもを得るに値する人間のみが子どもを手にするべき」「醜きものから何人もの醜き子どもが生まれていく循環」…それはもはや「ヒト」ではない。4年前の火事の話。そして、真壁弥生の話。黒澤孝介は真壁弥生の父でもあった。大須賀駿が見た黒澤孝介の「幸福の偏差値」は34。こんな低い数値では、何もできるはずがない。大須賀駿は黒澤孝介と闘うことを決意し、江崎純一郎と葵静葉に連絡する。
連絡を受けた後、葵静葉はチカのことを思い出し、本当に機械を壊してよいか悩む。江崎純一郎と会話をし、自身の「物を壊す能力」はこの機械を破壊するための能力だったと気付き、機械を破壊する。
黒澤孝介は、千葉の機械が破壊されたという報告を受け、大須賀駿に問う。「君はなぜ……ここまでして私たちのことに首を突っ込んできたのかな?」。大須賀駿は、「黒澤皐月の遺志」と答える。黒澤孝介は「拘束している人間はすべて解放して結構。工場の処理はあとで考える」と伝える。
「私は『敗北』を許さない。勝ち逃げなど絶対にさせはしない」「君にプレゼントをあげよう」として、小さな茶色の紙袋を渡す。「ノワール・レヴナントによろしく」と告げ、黒澤孝介と大須賀駿の面会は終わる。ドミノはすべて、倒された
少し長めのエピローグ。葵静葉。これまで壊していたものがすべて治っている。「あの男」も目覚めている。江崎純一郎からのメッセージを受け、「あの男」に二度と会わないと伝え、改めてピアノを始める。「自分の人生において、一切、恋をしないこと」という自分への罰は引き続き有効にすることを決意する。江崎純一郎に、「いつかどこかで、また会えたなら」という思いで。
江崎純一郎。カジノで得た3000万円ほどの金をボブに渡し、ギャンブラーになることを決意したことを伝える。ボブはその金をマスターに寄付。江崎純一郎は、この喫茶店の名前が「ブランシュ」であることを知る。
三枝のん。江崎純一郎に増やしてもらった資金で本棚を購入。指で本を読めなくなっているが、黒澤皐月との思い出を胸に、本の森に乗り出す。
大須賀駿。真壁弥生の育ての親である叔父、叔母に会い、黒澤孝介の妻、黒澤皐月の母=真壁優美の話を聞く。真壁優美は黒澤孝介と結婚するが、黒澤孝介は娘を愛せなかった。離婚し、夫に姉である黒澤皐月を預け、娘を愛することができれば再婚するとしたが、死んでしまう。真壁優美が死んだ原因は出産。黒澤孝介の計画は、このことも原因だったのかもしれない。
大須賀駿は真壁弥生に告白する。大須賀駿の能力は失われていない。この能力は、真壁弥生を幸せにするために黒澤皐月が与えたもの。その能力はまだ目的を達していないから。
大須賀駿は黒澤孝介からもらった飴を、隣人でレゾン電子のモニターに参加していた田中夫婦に渡し、あの5日間を思い出す。
回想
4人は連絡先を携帯電話から削除していた。もし再会できれば、感動すると言って…。
【感想】
浅倉秋成作品としては、話題となっていた『六人の嘘つきな大学生』を読んで気に入り、『九度目の十八歳を迎えた君と』『教室が、ひとりになるまで』『フラッガーの方程式』と読んでから、デビュー作の『ノワール・レヴナント』を読んだ。
第一印象としては、キャラクターの魅力は感じるが、やや詰め込み過ぎ。どうして黒澤孝介が主人公たちを許したのか、いまひとつ納得ができないと感じた。
特殊な能力を持っていた主人公たち、大須賀駿、江崎純一郎、三枝のん、葵静葉のキャラクターは非常に魅力的。特に三枝のんのキャラクターがお気に入り。もっとも、4人の主人公が黒澤皐月から預けられた能力を使い、黒澤孝介の考える「子どもを産むことにリスクを伴う世界を作る」という計画を破綻させるというストーリーでありながら、三枝のん、葵静葉の能力はうまく使われているものの、江崎純一郎の予言の能力はうまく使われていない。結局、江崎純一郎は自身の力でカジノに勝っており、予言はなくてもよかった。このあたりの割り切れなさが、浅倉秋成らしくないと感じてしまう。
ストーリー的には、ノワール・レヴナントと名乗る謎の少女の正体と、主人公たちが協力すべきことは何かといった謎を解明していく展開はスリリングで、三枝のんが大活躍するが、やや冗長に感じる。レゾン電子への侵入や、カジノでのカードゲーム、ノワール・レヴナントでの対決シーン、黒澤皐月の正体を見極めていく過程は見ごたえがあるが、一本の筋でつながっていない、散漫な印象がある。計算より、書きたいことを書いているという印象。結果として、黒澤孝介の計画を破綻させるという部分に収束しておらず、黒澤孝介の敗北、主人公たちを許すという部分に説得力が出ていないように感じる。黒澤皐月の正体を見つけ出すというストーリーがメインとなっているのに、最後に黒澤孝介の計画を破綻させるというストーリーがつながっていて、この2つの関連性が薄いと感じてしまった。
真壁弥生の存在と、大須賀駿の能力も、黒澤孝介の計画の破綻とつながっていない。黒澤皐月が三枝のんの幸せを願う気持ちはストーリーから読み取ることができ、説得力があるのだが、黒澤皐月が真壁弥生を愛するという部分が読み取れず、ここにも説得力がない。真壁弥生の存在がなく、大須賀駿の能力が黒澤孝介の計画を破綻させることにつながる能力だった方が一貫性があったように感じる。
総じて、今の浅倉秋成らしくない、計算され尽くしていない作品になっていると思う。デビュー作だから仕方がないところがあるし、失敗作というわけでもない。これも浅倉秋成らしさの表れともいえる。計算しつくす伏線の名手という魅力のほかに、魅力的なキャラクターを生み出す力もあり、後者がいかんなく発揮された作品という印象である。
評価としては★3で。キャラクターの魅力はあるが、ストーリー的にもう少し首尾一貫性がほしかった。浅倉秋成らしさは感じられるが、私の浅倉秋成に求める期待には応えきれていないという印象。浅倉秋成のデビュー作として評価はするが、この作品では今の浅倉秋成作品の魅力は伝わりにくいし、今の浅倉秋成の作風の方が好きなので、その点が割引きという感じである。
Posted by ブクログ
特殊能力の設定は新しさを感じて凄くワクワクした。
ただ、6人の嘘つきは好きだったが、この作品の文体は少し苦手だった。
あと、ファンタジーだとは分かりつつも、登場人物の行動原理が理解できなかったり、レゾン電子がそんなわけ無いやろってくらいガバガバセキュリティの会社だったりして、そこも気になった。
あと、黒幕が何かしょぼくて残念だった。
Posted by ブクログ
情景や人物描写、比喩などなかなかクセ強めの文章でした。
黒澤孝介の狂気に何か裏があるのかと思いましたが、ただのヤバい奴だったのは物足りなかったです。
Posted by ブクログ
『六人の嘘つきな大学生』の作者のデビュー作。表紙のイラストと裏表紙のあらすじに惹かれて購入しました。
四人の主人公がいて、それぞれのパートで一人称や語り口が区別されてたり、ちゃんとしてるなという印象。個人的には大須賀くんパートの自然体な雰囲気と、青春ラブコメ感が好きだったかな。
全体的には、先読み出来ちゃう伏線回収や、読後も謎な部分(日記のカタカナとか)があったりで、デビュー作と言われて、そうだったかぁと思うとこもありますけど