あらすじ
東京の下町・人形町に店を構えるお香屋「夢見堂」。その店には夢を売り買いし、悪夢を食べ吉夢を授ける「獏」がいるという――
夢で見たことを人に話すと現実になる。そんな能力を持つ女子大生の結は、ある日突然、「夢見堂」店主の獏と名乗る人物と夢の世界で出会う。楽しい夢逢瀬の日々もつかの間、彼女の稀有な能力ゆえ、人に悪夢を植え付ける「夢魔」に目をつけられて、彼女は両目の視力を失ってしまう。絶望する結は、夢に関する専門家である獏を頼るのだが、実は彼も夢魔によって、自分一人で夢を見ることができない体質にさせられていたのだった。
二人は欠けた部分を補うように共に暮らし、夢魔を探しながら、夢にまつわる依頼を解決していく。
――どんな悪夢にうなされても、俺が助けに行きますから。
縁と夢と香りがつなぐ、少し不思議な夢物語。
応募総数1,210作品の頂点! 魔法のiらんど大賞2020 小説大賞《大賞》受賞作!
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Posted by ブクログ
獏と結の互助関係と言うか、お互いに必要としてて大事にしてるかんじがとても好きだった。
でも結の能力はよくわからなかったし、獏の正体も謎なので、続編も出るといいな。
それにしても、結の両親の事故のあとやけにあっさり獏との生活を始めていたけど、お葬式とか実家とか親戚の方とかどうしたんだろう…と現実的な問題がとても気になった。
Posted by ブクログ
夢魔が本当にえげつない。
結さんを追い込むそのやり方がえげつない。
でもそれもやむなし。
夢魔は悪魔だ。
悪魔との契約には代償がつきもの。
たとえそれが苦しい現実から、苦しい夢から目を逸らしたいという衝動的な願いだったとしても。
夢に関わるトラブルを獏さんの家業と結さんの特殊能力で解決していく話だが、ずっと上記の夢魔の影が付き纏う。
獏さんもまた夢魔と因縁のある仲。
でも、その獏さんをしても、夢魔には決定的な勝利を掴み取ることができない。
結さんの視力を奪っていった夢魔との決戦は、結局勝利という状況にはならなかった。
改めて言うが、夢魔は悪魔。
人間が敵う相手ではない。
たとえ夢に関する特殊能力を持っていてもだ。
だから、結さんが払った代償は戻ってくることはなかったし、獏さんも彼を一旦退けることしかできなかった。
つまり、夢魔の影は今後もずっと付き纏うことになる。
それこそ、悪夢のように。
てっきり夢魔をばっちり叩きのめすのかと思いきや、以上のような状況、つまり予定調和なご都合主義の物語でないことに驚いた。
フィクションの世界だが、容赦はない。
でも、一方で救いになるエピソードもあり(福寿さんとの話がそれ)その塩梅が良かったと思う。
これからもきっとしんどい対応が続くと思うが、今後も夢魔の障害を乗り越えてほしいと思う。