あらすじ
「どこに身を隠しても必ず探し出し、一人でも多くの日本人を殺害するつもりだ」
――アメリカ極東航空軍報告書より。
NHK BS1スペシャル「果てなき殲滅戦~日本本土 上陸作戦に迫る~」では、ジョージ・マーシャルら米陸軍が強行しようとした「オリンピック作戦(九州上陸作戦)」の全貌が克明に描き出された。本書は同番組の書籍化である。
太平洋戦争末期、一億玉砕を掲げる日本に対し、米軍は報告書に「日本に一般市民はいない」と明記し、都市はもちろん農村・漁村に至るまで徹底的に破壊しようとした。互いの憎しみの中で多くの市民が犠牲となり、75年以上経った今もその傷は癒えていない。
取材のなかで次々と明らかになる衝撃の計画の数々――日米両国での取材で発掘された関係者の証言と極秘資料からは、どこまでも残酷になる戦争の本質が見えてくる。日本殲滅を目論んだ作戦の全貌を掘り起こす。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
戦争は狂気
日本は戦争を背景に富国強兵へ突き進んでいった。
皆が洗脳され、オカシイ、違うと声をあげられない状況だった。
戦争で誰かが傷つき、戦争で誰かが死んだ
物が壊れ、建物は破壊され、たくさんのものを失った
でもそれだけでは無く、目の前で健康だった家族親類友人が苦しみのなか死んでいく様を見なければばならなかったと言う最も辛いことに直面した。
その傷は癒えることなく、ずっとずっと付き纏い心を蝕んでいる。
今もこれからも…。
アメリカは原爆を落としたけれど、その前には日本に民間人はいないとし、戦闘員でない国民も殺傷していく
こうした作戦があった、その事実がこの本にある。
足を失い年老いてもなお義足が馴染むことなく痛み義足をつけられない日が続いている。
この方の足はまだ昭和の戦争が終わっていないのではないかと思う。
目の前で友が体の一部を吹き飛ばされたのを見ただけでなく旅立ちに立ち会い、家族の遺体があまりの損傷で絶対見てはいけないと言う父親の怒り。
改めて世界が平和でありますようにと誓いとも思える祈りを捧げて。
Posted by ブクログ
オリンピック作戦に関する書籍は少ないため、新たな知見を得る事ができた。本土空襲時に九州への空爆が激しかった理由は単に沖縄が近いという理由ではなく、この本土上陸作戦が理由の一つという認識を持つことができたのは新たな視点で面白いと感じた。
Posted by ブクログ
私が本を読む理由の一つに、戦争がどの様にして、如何なる理由で始まっていくかについて、様々な歴史的事実、推測・視点などから自分なりの答えを探し出したいという欲求がある。勿論限りある時間と触れることのできる情報量、最終的には自分の分析力の限界から、それも完全なものにできない事は理解している。太平洋戦争一つ取ってみてもかなりの量の本を読んでみたが、未だ他者の考えを飲んで腹一杯になる迄で、そこから何か明確な材料とレシピを確立した訳では無い。だからこそ未だ未だこれから先も多くの本を読むだろう、恐らく死ぬまで。一度始まってしまった戦争が中々終わらない、終わらせられないのは太平洋戦争に於いても当て嵌まる。
本書は1945年8月の終戦から75年が経過した2020年にNHKのBS1で放送された番組を書籍化したものだ。題材は、太平洋戦争末期にアメリカが日本を無条件降伏に追い込むために企図した「ダウンフォール(殲滅)作戦」のうち、主に九州上陸作戦にあたる「オリンピック作戦」に的を当てたものだ。なお、千葉の九十九里浜や相模湾から関東に上陸する作戦を「コロネット(小冠)作戦」と呼ぶが、これは通常の王冠よりも小さく頭を締め付けるサイズ=皇居を取り囲む意で用いられたと記憶する。ダウンフォール作戦全体を取材するには時間が足りない。だから本作は九州中心の作戦に絞って記載される。その分中身は濃厚、多数の存命にある証言者たちの言葉も、身近にあった戦争という悲劇をまざまざと見せつけ、その証言にある一言一言が、現代に生きる戦争を知らない世代に重くのしかかる。戦争はゲームの画面でもなければ映画の中の話でも無い。そこに現実に存在していた事実であった。
本書を読んで嫌というほど目の当たりにするのは、全体主義に陥り、一億総火の玉になった時代の一般市民における被害の大きさや悲しさ、加えて始まってしまった後の戦争とは、悲しみや恐怖が憎しみに変わり、行き着く果ては狂気になる事である。アメリカのジョージ・マーシャルは戦後有名なヨーロッパ復興策「マーシャル・プラン」でノーベル平和賞をもらう様な人物だが、ダウンフォール作戦を推進し、尚且つ世界的にも非人道的兵器として使用が禁止された(アメリカは条約に批准してない)毒ガス兵器までも戦術に組み込もうとしていた。マーシャルにとっては沖縄戦や硫黄島での日本人の戦い方、最後の1人まで果敢に命を惜しまず突撃する姿はモンスターの様に映ったに違いない。正に日本人は殲滅しない限り戦いをやめない人種として認識された。運良く日本が原子爆弾2発によりポツダム宣言受諾に至ったから作戦実行予定日の11月前に終戦、作戦は未実行に終わる。マーシャルの頭の中には、既に一般市民を殺害してでも、アメリカの被害を減らし、トータルでの死傷者を減らすという単純なコスト計算しかない。戦争はそうやって人を狂わせていく。未だアメリカでは原爆を肯定する意見が多数を占めると思われるが、その様な考え方が本心であるかは疑問だ。当事者では無い人間が深く考えずに言っている意見としか思えない。
本書はNHKのディレクターが限られた時間と予算の中でコロナ禍の困難な状況を乗り越えながら集めた情報で構成される。さすが映像前提で作られているため、新書の文面になっても文章から映像が鮮明に浮かび上がってくる。文章や写真から非常に読みやすく、目頭を熱くするシーンも多く登場する。我々が経験したことのない戦争の悲惨さ、罪深さ、人を狂気に変えるプロセス、失って戻せない深い悲しみ、そして戦争に対する数々の疑問など、僅か250頁に満たない書籍ではあるが、読み方によっては映像より更に濃厚に頭に染みつくものとなる。
Posted by ブクログ
本土決戦思想→国民義勇軍(国民総皆兵)→日本には一般市民はいない →無差別攻撃
以前に読んだ「僕は少年ゲリラ兵だった:陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊」の感想に同じ。遅かったが、8月15日に戦争を止めて良かったと思う。その一方、サイパン陥落の時点で止めていればとも思わざるを得ない。
Posted by ブクログ
NHK BS で放送された番組の補足本。 太平洋戦争末期のアメリカ軍による日本本土上陸作戦、オリンピック作戦について、日本側の証言や米軍側の資料情報を元に作戦の内容を紹介する。 昨年、関東上陸作戦、コロネット作戦についての本を読んだが、この本はコロネット作戦の前に実施される予定だった九州南部上陸作戦を取り上げたもの。 沖縄を制圧した米軍の次の目標は日本本土で、その足掛かりとして九州南部の制圧だった。 九州、特に鹿児島に基地を作り、関東への進行を計画していたらしい。 そのため鹿児島は標的となって、交通網や工場等が爆撃された。 沖縄戦の教訓から、日本の基地だけでなく、民間人も軍の一部とみなされて攻撃の対象になった。 この本では、その犠牲となった当事者の証言も紹介されている。 欧州復興の Marshall Plan でノーベル賞を受賞したマーシャルは、日本侵攻作戦に深く関わっており、日本に対しては、軍民間人を問わず冷酷な作戦を実行しようとした。 九州には、7発の原爆投下のプランもあったらしい。
この本はオリンピック作戦の全貌というタイトルだが、内容はテレビで取材した日本人の証言、戦争被害者が主体で図版や作戦の詳細の記述も少なくて、内容はやや物足りなかった。 作戦は米軍も多大な犠牲が伴うことが考慮され、実施されなかったことは、今を生きる自分たちには幸運だったと思う。九州上陸作戦には、化学兵器の使用も考えられたというので、大変な事態になっていただろう。
ちなみに自分の父は小学生の頃鹿児島空襲を体験したらしい。戦闘機に機銃で撃たれそうになって、物凄い恐怖を感じたそうだ。 戦争体験した人は、高齢化が進んでいるので戦争の体験は生きているうちに聞いておきたいと思う。