あらすじ
これから一人だけ誰かを殺す。自然死にしか見えないかたちで――。
斯界の権威・光崎に宛てた犯行予告。悪意に潜む因縁とは!?
斯界の権威・浦和医大法医学教室の光崎藤次郎教授がテレビ番組に出演した。日本の司法解剖の問題点を厳しく指摘し、「世の中の問題の九割はカネで解決できる」と言い放つ。
翌朝、放送局のホームページに『親愛なる光崎教授殿』で始まる奇妙な書き込みが。それは、自然死に見せかけた殺人の犯行予告だった。
早速、埼玉県警捜査一課の古手川刑事とともに管内の異状死体を調べることになった助教の栂野真琴は、メスを握る光崎がこれまでにない言動を見せたことに驚く。
光崎は犯人を知っているのか!? やがて浮かび上がる哀しき“過ち”とは……?
死者の声なき声を聞く法医学ミステリー「ヒポクラテス」シリーズ、慟哭の第4弾!
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Posted by ブクログ
ヒポクラテスシリーズ4作目。
テレビ出演した光崎教授が、「解剖が十分に行われないのは死体の声を聞こうとしない警察と検屍官、そしてカネがないのが問題」と発言したことから、「一人だけ人を殺す、自然死にしか見えない状況で。死体の声とやらを聞いてみるがいい」という犯行予告がされる。コレクター事件で苦い思いをしている埼玉県警だが、この事態にどうするのか。
1、老人の声
老衰死と判断された老人。古手川の勘だけが老衰でない、と告げていた。なんとか解剖までこぎつけたが…
2、異邦人の死
ベトナム人技能実習生の死。鋳鉄をしている工場で腹を押さえて倒れたベトナム人。解剖することなく、CT検査から肝臓がんでの死亡、とされたが、古手川は納得しない。死んだ日の朝、死んだ実習生が中国人技能実習生に囲まれていたのも見られていた。川口市は外国人が多く、一部の外国人が事件を起こし、それを快く思っていない人間がいる(警察内部でも)。しかし新法解剖を盾に解剖をすることに…
3、息子の声
改造バイクを乗り回していたイチゴ農家の長男がバイクの自損事故で死亡。交通捜査の小山内は事故多発地点のため、カーブを曲がりきれなかった事故と結論づけたが、古手川がこの事故に疑義を挟む…
4、妊婦の声
フィリピンパブで働いていた女性が死亡。嘔吐とアスファルトに小さな血だまりが出来るほどの出血にもかかわらず、熱中症で死亡とされる。生理の出血だと言われたと言う古手川。真琴とキャサリンが異議を申し立てる…
5、子供の声
浦和医大、産科教授吉住の初めての子、真矢が生後5日で死亡。SIDS(乳幼児突然死症候群)とされるが、吉住教授は光崎と因縁のある人間だった…
今回も大変面白かった。川口の事件が少し多めか(外国人のお話が多かったためか)。クルド人でないのが、ちょっと前に書かれた話なんだろうなあ、と思える。光崎教授も万能ではなく、解剖をしたくても出来なかったこともあり、矢面に立たされたこともある、という巻だった。著者のレイシズムへの憎悪がよく分かる話。レイシズムが取り沙汰されるのは現在もだけれど、やはり実際に迷惑を受けている人、何かに対して狡いと感じている人(健康保険とか生活保護とか)がいることから沸き起こってくるものもあると思う。カネの問題というのは多分その通りで、例えば健康保険などは保険料を払う人よりサービスを受給する人が爆発的に増えているように感じるから危機感を覚えるのだろう。それでぼんやりと思い出すのは友人の従兄弟の話。アメリカに住んでいたが、グリーンカードがやっと手に入れられた、と思ったら、湾岸戦争への出征が決まった、という話だった。日本にはそういうことがないが、この先どうなっていくんだろう、という不安は自国民にはあるだろう。そう簡単に解決策はないだろうけれど、今のままでは駄目ではないかとは思ってしまう。
真琴が捜査協力に近いことをしているのが気がかり。なんか責任負わされるようなことはないのか。時津風部屋の暴行死の話が掲載されていて、解剖がしっかり出来ないことの弊害を実感する。
Posted by ブクログ
ここまでの続き…だけどテイストが少し違ってきてテレビ局のホームページへの書き込み犯の目標とされる人物がなかなか見つからず〜という流れ。
シリーズモノでパターン化された解剖へ至るまでの過程が分かりやすくもあるけれど、一辺倒には語れない遺族の気持ちやら、スタッフたちの感情やらでまたまたシリーズ続きに手を伸ばしてしまう。
Posted by ブクログ
このシリーズを読むと毎回思うんだけど、世の中色んなところにお金足りなさすぎません?
殺人だけじゃなく、場合によっては死因も違う場合があるわけじゃないですか。お金が理由で解剖がされず、本当のことを知れぬままお別れするのは…悲しいですよね。なんだか。
解剖に至るまで毎回とても大変すぎて、真琴先生頑張れ。と思いながら読んでました。
久々の津久場教授もお元気そうでよかった。
次はどうなるやら。