【感想・ネタバレ】「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本のレビュー

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Posted by ブクログ

安くて若い労働力が欲しい日本政府と中小企業、その間に入って日本政府、中小企業、実習生から搾取していく監査機関に現地の送り出し組織、そして様々な事情がありながらも受動的にぼんやりと日本での技能実習生を選んでしまった本人たち。

全員に責任があるからこそ、一朝一夕には変わらないだろうが、こんな感じで技能実習生の定住が進んだら今後どうなるのだろうと不安になった。

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2022年05月04日

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 外国人技能実習生制度と言えば、たいした技術も要らない単純労働を安い賃金で外国の若者にさせる、いわば出稼ぎ労働を国がなかば公然と認めている制度である、という理解は実は広く共有されているであろう。
 というのは劣悪な労働環境であったり、長時間労働を強制したり、はてまたその賃金を払わなかったりするという、違反行為がしばしばテレビなどで報道され、その結果、派遣先を逃げ出し、不法滞在者になる人が多いなど、問題の多い制度であることはよく知られている。
 しかし、本書によると、この実習制度で多くの中国人が日本に来ていたが、今はベトナム人が大半を占めているそうだ。また、派遣先を脱走したベトナム人は自由に住む場所を選べるし、平気で無免許運転もするらしい。本書の冒頭でも、仲間と飲み会をした後、酔っ払い運転をして交通事故を起こすベトナム人が紹介されている。
 これらのベトナム人を取材するうちに、元実習生達が必ずしも同情に値する可哀想な人ではなく、ベトナムの地方の貧しい農村出身の、知識も専門性もあまりない、低度外国人材であることが明らかになってくる。
 そして現地の送り出し機関を経営しているのは、日本での労働経験、留学経験のある同じベトナム人が多いそうである。ベトナム人がベトナム人を搾取しているという実情もあるそうだ。
 技能実習生以外にも、外国人労働者が多く入り込んでいるのは,偽装留学生の存在である。就労ビザが簡単には下りないので、仕方なく留学ビザで来日し、週28時間以内という制限を超えて、働きまくるのである。著者が面接した広島在住のベトナム人夫婦は、日本語学校で勉強した筈なのに、「あなたはいくつですか?」という日本語さえ、理解できなかったそうである。
 豊かになった日本人がもう働かないような職種に、これら「低度」外国人材を採用するのは致し方ないことなのかもしれない。これらの人材は以前は多くが中国から来ていたが、発展した中国からはあまり来なくなり、その代わりに今はベトナムから大量に日本に働きに来ている。そのベトナムも発展すれば、次は、カンボジアとかラオス、ミャンマーからやってくるのだろう。本書の副題に「移民焼き畑国家、日本」とあるのはそのような将来を示唆しているのである。
 現状が続く限り、「低度」外国人材の流入は止まらないし、彼らが日本社会の重荷になっていくのは避けられないだろう。日本人労働だけでは回っていない実態を前に、移民労働をどう許していくのか、本気で考えるべき時期に来ていると実感する。

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2021年06月13日

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ネタバレ

いやほんとにおっしゃる通り。なれること、入りこむ努力をすること。地方にゲットーができつつあること。どうなんだろう。

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2021年04月28日

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ネタバレ

技能研修生などで話題になる「外国人労働者」の現状を、著者の体当たりな取材を通して明らかにする一冊。主にベトナム人労働者(働いてない人もいるが…)の状況を書いている。

読んでの印象は「かわいそうなまでに、弱くどうしようもなく救われない」。
親戚が岐阜の工場で働いているんで多少状況はわかるんですが…あのあたりの田舎の中小企業にはろくでもないのが結構含まれている。「プレス機で従業員が死んだあと、社長夫人は車をいいのに買い替えた。保険金で払ったのでは?」なんて噂が流れる会社でその親戚が働いていたこともある。そんな会社でも、製造業の盛んな中京圏では潰れることなく会社自体は存続してしまえる。

それに対し日本人であれば「転職」という”現実解”を選びうるわけだけど、技能研修生は「逃亡」し在日ベトナム人社会で生きるしかない。
そして、今のご時世に出稼ぎ先としてあえて「日本」を選んでしまうような”情弱”ばかりが日本に来ているので、本人も在日ベトナム人社会の新入りもその生き抜き方が稚拙。反社会的な行動に手を出すことにも抵抗が低い。本国でもまともに頼れるような社会がない階級の人間が、外国人慣れしてない日本社会をあてにするわけがない、と言ってしまえばそれまでだけど、社会への期待感のなさの裏返しとしての社会規範意識の低さが露骨に出てる。
その対比としての、第五章(「現在の奴隷」になれない中国人)は別な意味で興味深い。国力が上がり信頼度が増した中国社会が、中国人労働者の不満を妥当なやり方で一定解消させる役割を果たしているらしい。

第七章に出てくる「群馬の兄貴」にしても、「豚の大量窃盗」の指導的役割を果たしたかは怪しいとしても、そういうことをベトナム人がやっていてもおかしくない、というムードは既にあった(岐阜県でも数年前に「除草用のヤギをベトナム人がバラシて食った」という事件があった)。「これだからベトナム人は…」と言われても仕方のない現状が一方であり、それが日本人社会の態度を硬化させさらに状況が悪くなる、という日本の現状を象徴するような章だった。

日本語能力はあるのに年齢などの問題で日本への入国すらままならない例(第六章)は「日本は…もったいないことをしているなぁ」と思う。一方で『君の名は』を本国で見てあこがれた日本にやってきてセクハラ被害にあった外国人労働者が、その『君の名は』の舞台である岐阜県で働いていることを告げられ絶句する例(第五章)なんかは「『君の名は』の微妙なセクハラ的演出を見てそこに驚くか」と言いたくなる。
日本社会に普通に存在するチグハグさが、外国人労働者を送り出す側のチグハグとの相乗効果でほんとに救いのない状況になっている、そのような印象を受けた。

労働者2世の教育問題含め誰がどうこの問題の落とし前をつけるんだろう、とは思いつつ…一時期中京圏の外国人労働者界を席巻したブラジル人労働者の多くが「ブラジルにワールドカップを見に帰る」と言って大半が帰国したように、本国が経済成長して労働者自ら日本を見放してくれるのを期待するより他ないのかもしれないなぁ…。

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2021年04月18日

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外国人実習生について、排外的な思想の記事あるいは偽善的な思想の記事しか無いという著者の問題意識が印象深い。深い取材で実習生のリアルを描いた貴重な本だと思う。

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2022年01月02日

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外国人実習生の本を何冊か読んだけど、ブローカーの会社名が出てるのは初めてかも。ホントこいつらが元凶だわ。朝から晩までキャベツ切るののどこが技能実習なんだよ。3Kの仕事を安くやらせる人材を調達してるのは誰の目にも明らか。筆者は中国語で取材ができ、以前は中国人を取材することが多かったようだが、ベトナム人と中国人の違いが興味深かった。同じ社会主義国でも中国人はスマホがあれば法テラスを探し出し、人権派弁護士にたどり着く。ベトナム人は経営者を訴えられるところまで来てもポカーンとして主張しない。あまりにも抑圧され過ぎて、特に、田舎の若者は考えることをやめてるらしい。ベトナム国内でも良い仕事につくためには賄賂が当たり前で、ブローカーに支払う金額も「そんな値段で本当に日本で働けるのか」と逆に確認してきたりする。安いブローカーはろくでもなく、高いほうが良いと思い込む。マイナス1は技能実習生として働いたあと南昌に帰り筆者の取材を手伝ってくれた青年の留学計画失敗を本人に断りなく載せてるっぽいこと。。まあ、写真とられてる時点で全て取材と理解されてたのかもしれないけど、音信不通になっちゃった人をこんな、どアップで載せて良いのかな。 エピソードも中途半端だったのでこの青年載せるなら他の話かもう少し深い考察を入れてほしい。

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2021年09月18日

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日本社会に徐々に浸透しつつある移民。国の政策と相反して不法滞在を続ける外国人たち。その実情を追ったルポ。

群馬県であったり都心近くでも葛西や西川口など外国人のコロニーが近年増加している。正規に入国し就労する外国人ももちろん多いだろうが、それ以外の人材、日本語も話せなければ学力もない。しかしそんな底辺の労働者に日本経済は依存している。

中国人からベトナム人、今後はカンボジア人、焼畑農業のように移民を酷使する現実に迫ったルポ。

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2021年09月03日

Posted by ブクログ

ホントに難しい問題で、コロナで一旦ストップしているけど、これからずーっと続いていく問題だ。
システムの変換が必要だと思うが、この著者がそれにはあまり期待できないような感じで書かれていたので、そうなのか、こんな感じのまま、ズルズルと「移民焼畑国家」続けるのかと絶望的な気持ちになった。でもやっぱりこのままではいけないよなぁ。

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2021年08月15日

Posted by ブクログ


日本が作ったこの腐った制度を変えてくれ。

この方の記事をネットでよく見るので購入。
他の記事では突っ込まないところまで深く語ってくれているけど、この人ならもっといけると思う。この制度の内部にいる人間は往々にして制度を肯定しがち、という部分、少し保留にしてもう少し多角的に見てほしい。まーーー色々とあるし。
外国人材を受けいれざるをえない日本がこの制度をどう変えていくか、ここまで書いたらその先まで牽引してほしい。


指摘している通り、技能実習なんていう日本が都合よく作った呼び名を理解し来日する人なんてほんのわずか。ほとんどは、数多くある『出稼ぎ』先の一つとして日本を選んでしまった出稼ぎ労働者の感覚。

ベトナム側では、どこに出稼ぎに行こうが、手数料を取るブローカーが存在する。イギリスだろうが台湾だろうがオーストラリアだろうが、国を出るためにはブローカーに世話になるしかない国。病院一つかかるにも賄賂がいる国だから人々もそれが当たり前だと思ってるんだろうな。

まーみんな好き勝手言うけど、結局国民の総意がないまま進めてるからこうなるのよね。
考えてみてよ。

出稼ぎに来たい外国人
人が足りない日本経済
日本の治安を悪くしたくないそこのあなた
実習生がアパートの隣に越してきたらいやだなと思っているそこのあなた
ブローカーの介在はかわいそうだというそこのあなた
外国人にはアパートを貸したくないオーナーさん
ゴミ出し指導をちゃんとしてほしいそこのあなた

みんなのご希望を満たす制度、どうやったら作れるの?
何をどうしたらこの国が健全にグローバル化できるのか、怒るだけじゃなくて私たち自身がちゃんと向き合って考えていかないと。っていう問題を色々と提起してくれる本です。

あと意図的なのかどうか知らないけど、本来監理団体が監査すべき、制度上の禁止事項にはあえてあまり触れていないです。こういう本を出すのであれば、一通りの制度概要を掲載してほしかった。制度を理解していない読者の反発を無駄に煽る。
本の中ではネガティブに書かれているけど、制度が生きている以上、制度内で各種法律を理解し悪徳業者に屈せず実習生の人権を守りたいと必死に飛び回っている元実習生、日本人スタッフは大勢います。

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2021年07月07日

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日本人が”美しい”とする清貧思想「民間が切り詰めているから、国も節約しろ」「”低度”でもよいから安いがよい」がこんな”醜い”制度を培ってしまった。「現代の奴隷制度」「人身売買」米も批判する技能実習制度。日本を豊かと思い込んでいる方々の判断力・思考能力の低さ、権利意識の弱さに依存しているシステム。だが外国人労働者への同情を煽るような報道も的外れ。「労働力を呼んだのに来たのは人間」抱く感情を紋切り型では語れない。叩き出すべきも同情すべきもこんなシステムに依存させてしまった我々の乏しい思考力と想像力ではないか

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2021年07月04日

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私の暮らす地方都市には
小さな町工場がけっこうある。
10年ほど前までは
そこで勤めている彼らが
近所を通る時に
話す中国語が聞こえてくるのが
当たり前だった。
今は、その同じ道では
ベトナム語の会話が通り過ぎていく。

おそらく
日本の各地、
それも零細企業の工場が
あるところでは
同じ現象が起きているのだろう

「技能実習制度」という名のもとに
さまざまな社会問題が噴出ししている
この国のあり様を考えさせてもらった
良書である

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2021年03月31日

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本書のおわりに、著者が吐露する取材感想が最も印象深い。豊かになった中国にとって、日本は魅力的な国ではなくなり、労働集約型の産業をベトナム、そしてカンボジアなどの情報弱者が呼び寄せられ代替すること。今後地方で進む未来の姿がリアルに描かれている。

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2021年03月28日

Posted by ブクログ

以下、引用

●「技能実習生になるのは、ベトナムのなかでも貧しくて情報感度が低い人たち。彼らは自分自身で送り出し機関を探さず、『日本で働けば儲かる』と声をかけてきたブローカーから紹介された機関を利用するんです。言葉は悪いですが、ものを考える文化があまちないというか・・・・」
●日本の技能実習生制度は、身も蓋もない言いかたをすれば、発展途上国出身者の「”低度”外国人材」である若者の判断力や論理的思考能力の低さや、権利意識の弱さに依存して構築されているシステムだ。現代中国の九0後の青年との相性が悪いことは言うまでもない

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2022年03月06日

Posted by ブクログ

すべては研修生制度の矛盾が引き起こしているわけだが、悪質な雇用主と不当な扱いを受ける外国人研修生という単純な話ではないという事。
現地では不当な仲介料を取る悪徳ブローカーの方が仲介料が高いがゆえに信用されてしまったり、それでも一攫千金を狙って研修生となって来日したり、そういったさまざまな事情を十把ひとからげにとにかく日本で研修生を支援することに意義があると考えるNPOもいる。その上そうした研修生が無事に本国に帰ると今度は悪徳ブローカーになって送り込む側になるなんてこともあるらしい。まことに人の欲望は一筋縄ではいかない。

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2021年10月02日

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