【感想・ネタバレ】外来生物のきもちのレビュー

あらすじ

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本書は詩人として活躍されている大島健夫氏が
外来生物のきもちを代弁した読み物です。


大島健夫氏は2016年、
ポエトリー・スラム・ジャパン2016の全国大会に出場し優勝。
その後フランスのパリをはじめ
ベルギー、イスラエル、カナダの詩祭や
ポエトリー・スラムなどに出場している詩人です。

そんな詩人であるいっぽう、
子どものころから生きものが大好きで、
房総半島の里山を中心に時間を見つけては
生きものの観察をしています。

そしてときにはネイチャーガイドとして
里山の生きものの魅力を訪れる人々に伝えています。


そんな大島氏が外来生物になりきって
その外来生物のきもちを想像しながら話を進めます。

なぜ外来生物がはるばる日本にやってくることになったのか、
そして広く生息するようになったり、駆除されたりと、
人間に翻弄されながら生きている
今の外来生物のきもちを代弁します。

話の進行は外来生物の中でも凶暴な生物として恐れられているカミツキガメが、
アライグマやウシガエル、オオクチバス、
コブハクチョウ、アメリカザリガニ、
セイタカアワダチソウなど
さまざまな外来生物を訪ね歩き、
それぞれの外来生物と会話しながら
話を引き出すという手法で進められます。


大島氏は「あとがき」で
「人間のせいで、探していたいきものが、
もういないとわかったとき。
人間のせいで、いきものがたくさんいた場所が、
もう何もいない場所に変わってしまっていたとき。
以前はいなかった、人間の手で持ち込まれたいきものが、
もとからいたいきものを滅ぼしてしまったとき。
そんなときには、例えようもない悲しさ、悔しさ、怒り、やるせなさを感じます。

しかし、あるとき、ふと気づいたのです。
それは私が、本当は、いきものたちの住む世界が
失われていく光景の向こうに、
いつか、人間の世界が失われ、
人間が滅びてしまう光景を見て、
悲しみ、悔しがり、怒り、やるせなさを感じているのではないか…」

と書いているように
外来生物を通して人間の世界が
滅びてしまうことへの警鐘を鳴らしているのです。


収録されている外来生物は次の通りです。
・ カミツキガメ
・ アライグマ
・ シロツメクサ
・ アカボシゴマダラ
・ スクミリンゴガイ
・ ウシガエル
・ ミシシッピアカミミガメ
・ キョン
・ ヌートリア
・ オオヒキガル
・ ホンビノスガイ
・ クサガメ
・ セイタカアワダチソウ
・ オオフサモ
・ オカダンゴムシ
・ オオクチバス
・ ガビチョウ
・ クリハラリス
・ グリーンアノール
・ セアカゴケグモ
・ アフリカツメガエル
・ ヨコヅナサシガメ
・ コブハクチョウ
・ ブルーギル
・ フイリマングース
・ カダヤシ
・ クビアカツヤカミキリ
・ ワルナスビ
・ ハクレン
・ ワカケホンセイインコ
・ コナギ
・ ハクビシン
・ チュウゴクオオサンショウウオ
・ アオマツムシ
・ イエネコ
・ マメコガネ
・ コイ
・ アメリカザリガニ

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネイチャーガイドの作者が外来種同士の対談の体で、来歴や生存方法、それに伴い滅ぼしてきた在来種への思い、自分達の思いを代弁した一冊。

もちろん物言わぬ動物植物虫たちのここでの言葉ら想像の話でしかない。、
が、多分事実として確からしいのは1種類とて自分で日本に来た種はいなかったということ。
人間の都合で連れてこられて、都合が悪くなったら悪者扱いで防除対応される。

外来種の知識以上に人間の身勝手さ、浅はかさを突き付けられる一冊だった。

0
2025年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 面白い本でした。外来種に関する本は何冊か読んだことがありますが,こういう視点で書かれた本は初めてです。
 どういう視点かというと…特定外来種のカミツキガメさんが,ほかの外来種の所へ行って,いろいろとインタビューをするという設定になっているのです。その会話を通して,外来種たちがいつ頃日本に来て今どういう状況にあって,それは一体だれのせいなのか…人間のせいなのですが…を説明してくれています。そのインタビューにはユーモアもあり,本が苦手な神さんも,机に置いておいた本書を手に取り興味を持って読んでいました。
 最後の方には,日本から外国へ行ったマメコガネにもインタビューをしています。
 〆に選んだのはアメリカザリガニさん。やはり外来種の王様ですよね。もうずいぶん前から子どもたちの遊び相手でもありますし。近々,特定外来種に指定されるのではないかと思います。さて,そのアメリカザリガニの言葉です。

私はね,少し長生きしすぎたようですよ…。同じ場所で長く生きていると,いろんなことが見えてきてしまいます。この谷の田んぼはね,終わる時が来たんです。人間たちの動きを見ていれば,それはわかります。来年には耕作がやめられることでしょう。2,3年のうちには荒れ地となり,やがては在来だろうが外来だろうが,全ての水生生物が棲むことができなくなります。幸運にも,年寄りの私はそんな日を見ずにすみそうですが…若い子たちは辛い思いをすることでしょうね。(本書,p.156)

 さらに…

ねえ,カミツキガメさん。そんなことを放っておくこの国に,未来があると思いますか。自分たちが食べるものを生産する営みを守ろうとせず,自分たちの住む土地が崩れてゆくのを止めることもできない人間たちに,未来があると思いますか?(同,p.157)

 さてさて,本当に日本の原風景を壊しているのは,一体だれなのでしょうかね。
 

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2021年08月31日

Posted by ブクログ

面白かった。
かわいいは怖い。

外来生物の気持ちになって考えたことはなかったので、人間への辛口批評に返す言葉もなく、ごもっともでした。

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2021年08月23日

Posted by ブクログ

様々な外来生物が、カミツキガメのインタビューに答えるという形で、日本に来た経緯や拡散した理由が書かれており、どのようにして今のような状況になったのかがとても分かりやすかった。また、持ち込んだ自分達人間の責任についても、色々考えさせられた。

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2021年07月12日

Posted by ブクログ

外来生物に指定された動物たちの気持ちが聞ける本。
特定外来生物のカミツキガメさんが、他の特定外来生物のところに会いに行って、インタビューしていくって形態で繰り広げられる本です。
もう、ほんとに、害悪は人間なのよねって。

まず!えっ、これ、外国から来たの?!日本産(?)じゃないの?!!みたいな種類の子が多くてびっくりした……
シロツメクサとか、余裕で日本産だと……

あとほんとに、耳の痛い言葉だらけだった……
昔の田舎で思い浮かべる風景って、ほとんど外国から来たものだよ、とか
人間が自分たちの好きなように暮らしを変えて行った結果、在来種が住めない環境になっていって、なんとかしようとして、外国から餌としてだったり、在来の子を食べる天敵の駆除のためだったりで連れてきて、で結局外国産の子が増えまくって、「こいつらのせいで在来種が絶滅しそう!」とか言ってる、とか……
もう、この本読んでると、人間ってなんでこんなアホなんやろって思ってしまうんよ……いやもうほんまに、1回でいいからみんな読んだ方がいい……ฅ(*‎´꒳`*ฅ‪)ꪆ‬

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2025年08月19日

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