あらすじ
本書は、体や心の具合が悪いと感じたときに開いて、その対処法を知るために参考にしてほしい。
といっても、いわゆる健康本や医学解説書とはちがう。どこがちがうかというと、まず、取り上げている症状や悩みの種類がバラエティに富んでいる。体の痛みも心の痛みも区別することなく取り上げているので、この本を開けば、「腰が痛いとき」や「歯が痛いとき」と同様に、「恋人と別れたとき」の対処法もみつかる。また「ホームシックのとき」や「飛行機がこわいとき」など、ストレスを感じやすい状況も取り上げているし、「結婚相手をまちがえたとき」や「職を失ったとき」など、人生の深刻な危機も心身の不調をもたらす悩みとして取り上げている。さらに「二日酔いのとき」や「ユーモアがわからないとき」などのささいな症状や悩みも、ケアの必要な疾患とみなしている。
そしてもう一つちがうのは、ここがいちばん肝心なのだが、症状の改善のためにすすめる「薬」が、薬局ではなく書店や図書館にある点だ。場合によっては、ネットショップから手持ちの端末にダウンロードすることもできる。つまり治療に使うのは「本」なのだ。
取り揃えている「薬」は、ヘミングウェイ、トルストイ、メルヴィルはもちろん、古くは2世紀の作家アープレーイユスの『黄金の驢馬』から、現代の強壮剤ともいうべきジョナサン・フランゼンの作品まで、2000年に及ぶ文学史のなかから、最高の優れた知性にあふれ、もっとも心身の回復効果が期待できる小説を集めた。
読者の皆さんは普通の薬と同じように、処方された本は最後まで読み切り、いま以上の健康と、幸福と、より多くの知恵を手に入れてほしい。自分なりの処方箋をもっておくのもいいかもしれない。
「悪魔に魂を売り渡したくなったとき」「月曜の朝が憂鬱なとき」「自分がまぬけに思えるとき」
そんなときにはこの『文学効能事典』に相談してみましょう。きっとあなたに合った文学作品を処方してくれるはずです。「片思いのとき」「ストレスがあるとき」といった普遍的な悩みから、「性欲にさいなまれたとき」といった人には言えない悩みまで…! 多岐に渡る悩みに合わせて良作を紹介してくれています。「自分の本の好みがわからない」など、よくある読書の悩みに答えるコーナーも充実。紹介されている作品は海外文学が多いので、「海外文学を読んでみたいけど何を読めばいいのかわからない…」と感じている方にもおすすめです。
『文学効能事典』で新たな本との出会いを楽しんでみませんか?
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Posted by ブクログ
昔ジュンク堂で平積みされているのを見つけ買ってみた。さまざまなお悩みに対して処方箋としてそれぞれ読むべき本が紹介してある。
この本でまず面白いのが興味を引くお悩みの種類。人には相談できないけど、でもたしかにこういう悩みってあるよな。っていうことが細かく直接的に書いてある。
それで、なんとなくこの本をパラパラしてみる。すると、自分が言葉にできていなかった悩みも見つかる。 「なるほど 、自分は、これで悩んでたんだ」ってね。それに、ここに書いてあるっていうことは、他にも悩んでいる人がいるんだなって思えたりして安心する。「孤独なとき 」とか「思春期で悩んでいるとき」とかね。
それで、そこで紹介されている本を読むと解消できる。
まあ、絶対じゃないけどね。「読んだって気休めにもならないとき」、「自分の悩みが書いていないとき」。まあ、紹介されている本を読まなくたってそこの「説明を読むだけで気晴らしになるとき」もある。
Posted by ブクログ
事典好きの私だけど、これほど読んで楽しい事典は初めて。
「あ」から始まるこの時点の最初の項目は”悪魔に魂を売り渡したくなった時”に読む本。
トーマス・マンの『ファウスト博士』というのはまあ納得としても、”悪魔に魂を売り渡したくなった時”ってどんな時よ?
そんな時、本を読んでいる場合?
本を読む心の余裕がある時点で、悪魔に魂を売り渡さなくても大丈夫なんじゃない?
なんて突っ込みながら読んだけど、ふと気がついた。
これ、日本語版だから五十音順だけど、原書はABC順のはず。
訳すだけでなく、このように並べ替えも必要なんだ。
また、未訳の本も多数あるので、原書では347冊の小説が紹介されているけれど、日本語版で紹介されているのは202冊のみ。
それでもこの充実ぶり。
インフルエンザにかかった時は→アクロイド殺害事件
死ぬのがこわい時は→百年の孤独
無職の時は→ねじまき鳥クロニクル
花粉症の時は→海底二万里
等々、症状別に、または年代ごとの紹介が、理由と共に紹介されている。
そのチョイスに膝を打ったり、突っ込みを入れたりするのが楽しい。
だってさ、”鍵を忘れて家に入れない時”のために、家の外の物置に本を何冊か用意しておくといいと言って、それ用の小説を何冊か紹介しているけど、そんなもの用意しておくくらいならそこに合鍵を隠しておけばすむ話じゃんって思わない?
ただ、なじみがなくてピンと来ない作品が多いのも事実。
誰か、日本人向けのこういう事典を作ってくれないかなあ。
Posted by ブクログ
悩みの解決に役に立つ、立たないは別として(多分立たないけど)、色々な本がその簡単な内容とともに紹介されているので、興味がそそられて大変楽しい。
Posted by ブクログ
体や心の様々な症状別に「効く」文学作品を処方し、その理由も書かれた風変りなブックリスト。
症状は多岐に渡り、「不安なとき」「心が折れてしまったとき」といった確かに本に縋りたくなるようなものから、「お茶がほしくてたまらないとき」「鍵がなくて家に入れないとき」といった本を手に取る前に他の解決法が即座に頭に浮かびそうなものもあれば、「悪魔に魂を売り渡したくなったとき」「結婚相手をまちがえたとき」といった割とショッキングな症状まで網羅されています。冒頭から読み進めていくというより、目次から気になる症状の頁を眺めていき、目に留まった文学作品はひと先ず片っ端にチェックしていく、という使い方が正しいように思います。
海外の著者ということもあり、扱われているのは主に海外作品が中心で知らなかった作品も多く掲載されていました。あまり症状に捕らわれることなく、気になる作品に手を伸ばしてみようと思います。
Posted by ブクログ
文学のあらすじも紹介されているので読んでみる。
「結婚に失敗したとき」「孤独な時」と、過去から今まで変わらぬ人間の悩みを文字に起こしてきた文学ばかりである。
仲には「」お腹が痛い時などの症例に対応する処方箋の本が。トイレにこもっている間に読める短編だよ、という紹介だが、多分、当人はそれどころじゃない。
でもそんな緩さが面白い。
全部は読めていない。また読みたくなった時に続きを読もう。
Posted by ブクログ
こんな気分のときにはこの本がおすすめ!という内容。出てくる本はすべてフィクションの小説で、自己啓発本などが入っていないのがよかった。洋書なのでもちろんお勧めされている本もほとんどが海外の名作だが、安部公房や村上春樹などちらほら日本人作家も紹介されている。
Posted by ブクログ
心身のさまざまな不調やお悩みに効くブックガイド。中々面白そうなのですが、取り上げられている作品が、なぜにその心身の不調に効く本なのかが結局今一つ理解できない物が多く、どこまで本気か冗談か分からない感じだった。おそらく作者は大真面目なのでしょうが。
おまけにイギリスで出版された本なので、ブックリストのほとんどは海外のもので、日本からは遠藤周作、村上春樹、安部公房、三島由紀夫らごく一部の作品がリストに掲載されているのにとどまっている。
しかも、親しみやすいミステリーやエンタメ系の作品は少なく、斎藤美奈子さんの言うところの「中古典」と思われる作品が多く、いわゆる現代文学作品とおぼしき本が多いので、リストに親しみやすさはなかった。
それでもかなりの数の本をブグログに登録できたからよしとします。結局はブックリストが好きなんです笑。
Posted by ブクログ
病や悩みに対し、処方と称して本を勧めてくる。無責任で適当な選書と解説が非常に面白い。
自分でも処方箋を書きたくなる本。
面白くはあるし、紹介されている本を読んでみようかなという気にもなるが、座右の書にはなり得ないので星3つ。面白さでいえば4つに近い。
文学好きの人へのプレゼントなどにいいと思う。
トイレに置いておいて拾い読みするのもよい。
『カモメのジョナサン』や村上春樹に対する態度でその人がどういう人か言い当てられるというのは然りという感じ。
Posted by ブクログ
高橋源一郎のエッセイに掲載。
人生に悩みはつきものだ。
あるテレビ番組を見ていたら、モデル・女優のある女性が「悩んだことない」「悩むことなんてなくないですか?」と言っていたのは衝撃的だったが、まあ、大抵の人は悩むことが何かしらあるはずだ。
例えば、インフルエンザに罹り、辛い日々を超えてしかしなお家にいなけりゃいけないとき。
Netflixもいいけれど、『アクロイド殺し』はいかが?
あっという間に弱った灰色の脳細胞が奮い立つ。
ストレスがあるときは『木を植えた男』。
あの素晴らしい絵は、物語は、疲れて弱った心を優しく包む。
ストレスなんてない時も、何度も読み返したい。
読書の悩み:「読んでいる本を見られるのが恥ずかしい」(383頁)
そんな人にもし私が処方箋を書くなら?
こうだ。
日本に行きましょう。日本ならブックカバーだらけです。
100円均一の店にもあるし、書店で紙のカバーをつけてくれます。
そして何より英語で書かれた本の表紙を見る人はいませんし、みんなスマホに夢中です。
「本を大事にしすぎてしまう」(342頁)
本は書き込んでいいです、だって?
いやいや、私は書き込みや折り目なんてつけない。
風呂に持ち込むことだってしない。
手垢なら許せる。
大事にしすぎて何が悪い!
薬は人によって効果が違う。
効く本もあれば、そうでない本もある。
是非ともこの本を読んで人生を楽しもう。
でも、あまりに薬が多すぎるので、メモを取るのを忘れずに。
最後に一つ。
実存的不安を感じるとき(165頁)で紹介されている『シッダールタ』。
古代インドの架空の人物、とされているがゴウタマ=シッダールタは実在、ですよね?
それともそもそもその認識が間違っている?
いやいや、ここで書かれているシッダールタは釈迦とは別人?
気になる点だ。