あらすじ
「あんな男といたら、不幸になるよ」この台詞があたしに突き刺さったのは、基樹と離れられない自分と重なったから。彼は浮気をしている。別れなきゃと言い聞かせても、今はただ一緒にいたい……(「彼女じゃないあたし」)ある映画を通して、戸惑い、嫉妬、希望――不器用に揺れ動く女性のリアルな感情を綴った8つの物語。それぞれに短歌を添えて贈る切ない小説集。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
不登校の高校生。OL。主婦。大学生。映画の主演女優。それぞれが同じ映画を見る話。それぞれの登場人物の映画の受け取り方がちがうのがおもしろい。「彼女じゃないあたし」がすごくよかった。最後の決断が潔い。短編のあとの短歌もすごく胸にしみた。
Posted by ブクログ
ある小さな映画館の同じ上映時間に居合わせた女性たちの連作短編。
高校生、大学生、OL、主婦、フリーター、転職活動中、そして主演女優。
年齢も置かれている状況も違うけれど、
それぞれのストーリーに共感できる言葉や思いが
ちりばめられている。
登場人物たちは、人から見たら些細なことかもしれないようなことで悩んでいるんだけど、
それがすごくリアリティがあって、共感できる。
加藤さんは
日常の中にある誰もが抱えたことのあるような
思いをくみ取るのが、本当にうまいです。
あたしの日々だって、
映画じゃない。
劇的なことがおきなくても、大切に生きたいって
思えるような作品。
Posted by ブクログ
あ゛ーーーー、私がたくさんいた。
高校生のときに体育祭の練習をサボって一人で映画を見に行ったし、優越感に浸りたくてでもなんか傷ついたのは自分だったこともあるし、バイトしてたから普通に就職して結婚している友人に強がってみせたこともあるし、嫌いな子だってもちろんいるし、無職経験者だし(私は何回か職業の蘭に無職って書いたなぁ)、彼女じゃないあたしの今はもうそれでよかったなんてついこの前思ったことだよ!
ブサイクな気持ち隠してみてもほら、見抜いて言葉にする人がいる。
Posted by ブクログ
けっこう好きな作品です。
この人の文章はあんまりクセがなくて、読みやすいと思います。
ひとつの映画に対して、登場人物がそれぞれの立ち位置から見る角度がちょっとずつ変わってて、著者の感性に惹かれるきっかけになった一冊。
Posted by ブクログ
ハッピーアイスクリームの短歌に共感しまくった私は千恵さんの短歌が載ってる、ということで即買い。
加藤千恵さんは短歌も好きだけど小説も好き。
何でもない閉塞的などこにてもある日常を切り取るのがすごく上手い。
ひとつの映画を軸にしていろんな人の話が展開していく。
すぐ忘れちゃいそうだけど確実に何かを私の中に落としていきました。
やっぱり短歌はどれも好き!
すとん、と心に響いた。
Posted by ブクログ
読み終わった後、悲しくも楽しくもならない作品。穏やかで、日常の中に溶け込むような物語だと思った。
様々な立場の8人の女性が、それぞれ主人公になっていて、誰も現状に満足していないが、それを変えようと思うこともない。今の立場を納得して、受け入れて、自立している感じがした。
私は、ひとりで外食も映画を観ることもできないので、「ゴールじゃない結婚」の主人公に共感できた。たまに、他人の不幸話が嬉しいのって、やっぱり自分は幸せだと確認したいからかも。
Posted by ブクログ
連作短編というのはよくあるけれど、これは「同じ日の同じ映画館の同じ回を観ていた」7人と、スペシャルゲストとでもいうべき8人目、という形が面白い。
同じ映画を観ても、つまらん人もいれば良かった人も。しかも良かったと思っているくせにそう言えない人も。女子高生にOL、主婦、フリーター、女子大生と、どの女性も大なり小なり鬱屈した思いを抱えていて、心に残る言葉や琴線に触れるシーンもそれぞれちがう。読んでいて時折イライラさせられるのは、きっとそんな部分が自分にもあると気づくから。
あ、私は映画はひとりで観たいです。劇場で年間250本、99%ひとりです(笑)。
Posted by ブクログ
購入当時、映画館で映画をみる事が増えそれが楽しかったので、映画をテーマにした加藤千恵のこの小説が読みたいと思った。
前からすこし気になっていたし。
共感したりなるほどと思ったり、登場人物の暮らしぶりにへぇと思ったけれど、そこまで響かなかったな。
なんか、文が固いというか何というか…そんな印象をどの話にも感じて。
最後が映画主演の女優というのが面白かった。
映画館受付の女性も出るかなーと思ったけど、出なかったね。
Posted by ブクログ
とある映画館である1本の映画を同じ日の同じ時間に見た10~20代の女の子たちの物語。加藤千恵さんは若い女性の心理描写が本当に上手。そして登場する男の子は大概ダメ男。同じ映画を見ていてもそれぞれ違う思いで映画館に足を運び、それぞれに物語がある。加藤さんの日常の切り取り方が好き。最後に添えられる短歌も絶妙なスパイスになっている。2012/645
Posted by ブクログ
同じ映画館で同じ映画を見た女性たちそれぞれの話。目立つこともない普通の人たちにもそれぞれ悩みやストーリーがある。
加藤さんの言葉は綺麗だな、と思う。
この言葉書き写したい!と思う箇所がいくつもある。
ただ私的にはハニービターハニーとかの方が良かったかな。友達に読ませたいと思う話はあったけど、あたし自身が共感できる部分は少なかったかも…。
ただみんな必死に悩んで生きているのだなとは思った。
Posted by ブクログ
ひとつの映画を通じて、女子高生から主婦にいたるまで、いろんな女性の思いがつづられた作品。
全体的に悩みを抱えた人達のお話しなので明るい雰囲気はないけれども、いろいろと女性について考えるのに参考になる。
Posted by ブクログ
映画はいいなぁ。
満ち足りない日常も、閉塞感も、悲しみですら綺麗な画になる。そして1番幸せなところで「めでたし、めでたし」となる。
ところが、現実はもちろんそうはいかない。満ち足りなさも閉塞感も悲しみも、乗り越えて、もしくは抱えて一緒に生きなければならない。もちろん「めでたし、めでたし」の向こう側にある日々も。
そんな「映画じゃない日々」を生きる8人の女性たちの短編集です。
加藤千恵作品は読むと苦しくなることを知りながら、いつも読んでしまいます。淡々と過ぎる日常に潜む、むなしさとか閉塞感を描くのが本当に上手くて辛いです。
加藤千恵の別の作品に、「悩んでいるなら言えばいいんだ。弱っているなら癒せばいい。傷があるなら治せばいい。けれど。けれど、悩んでも弱っても傷ついてもいないなら、どうすればいいのだろう。 」っていう言葉があって、この本に描かれている閉塞感とか、なにか足りない感じって、まさにこの手のものだと思います。
明確な解決策も逃げ道もない、でもそれは確かに存在していて、だからこそもがくという種類のもの。
痛いから、絶対に棘が刺さってることは間違いないんだけど、どうにも目に見えないから取れないみたいな?笑
だから、主人公達もみんな霧が晴れてスッキリ!なんて結末にはならないのだけど、少し心が軽くなるとか、小さな光が見つかったりします。
そんな小さな光でも、そちらに目を向けることで、棘の痛みを少し忘れることができて、そのうちに、棘のことすら気にならなくなっていくのかな。でもたまに思い出したように痛んだりして。それって「映画じゃない」からこそ味わえる機微なのかもしれません。