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実在の大工の棟梁、鈴本新吉(本名鈴木新吉)の一代記。
次々と訪れる不幸と貧困の中に育つ。ヤクザ相手にも引かず、軍隊に入っても自分が正しいと信じるならば上官にも引かず。
決して強いばかりでなく、弱い者への慈悲の心を持つ。強い男が悲しんだのは、自分の誠心誠意が通じない相手がいることを知った時。
過酷な生い立ちは、何かの罰が当たってるんじゃないかと自身も他者も疑うほど。キリスト教と出会い、キリスト教の神は罰を与えない神で、イエスの職業が同じ大工だったことを気に入り洗礼を受ける。
本文前の「身を殺して 霊魂をころし得ぬ者どもを 懼るな」(新約聖書 マタイ伝 第10章 28節)が、新吉の生き様そのもの。
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塩狩峠記念館の受付の方にすすめられて読みました。同じ著者の作品で「母」という作品もあるのですが、この「岩に立つ」と同様に、主人公本人に語らせるような表現がとても読みやすく、作品に入り込めるような印象でした。
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著者が自身の家を建ててもらった大工の棟梁をモデルに書いた本。貧しさや誘惑に屈せずにまっすぐ生きた棟梁。「あっしは…」と人間味あふれる口調で半生を語る。
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回想風に話は進む。まるで、浅田次郎だ。いや、浅田次郎の方が時代は新しいから間違った表現だけど。
一本気の棟梁が子供の頃からおとなになり、戦場に行っても、自分の三年を曲げず生きたって話だ。著者の主題にいつもある許しというのは本書にはない。ただ、弱いものを助けるというのがあるのかな。
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久々の三浦綾子、いい意味で『らしい』作品。実在する一般の人物をモデルにしているので大きな出来事があるような筋書きではないのだけれど、彼女の文章の根底に一貫して通じる、人間の在り方・生き方というテーマがしっかりと盛り込まれていて、胸を打つ台詞もいくつかあった。三浦綾子の他の作品と比べるとどうしても地味ではあるけれど、読んでよかった。20140224