あらすじ
いま、もし田中角栄ありせば……。民主党政権の「不甲斐ない弟子たち」を叱り飛ばしているだろう。陳情こそ「日本型民主主義」の原動力なのだぞ。政治献金を禁止するかわりに「政党助成金」を税金でまかなうとは何ごとだ。選挙目当ての税金のばら撒きを連発して、国家財政がもつと思っているのか。アメリカとの対等関係を望むあまり、中国や韓国におもねっても日本はけっして尊敬されないぞ。かつて首相に対する野党委員長として、国会で丁々発止の論戦を繰り広げた著者が、哀悼の想いをこめて綴る天才政治家・田中角栄の真実。自身の40年に及ぶ議員生活を振り返りつつ、政治家を正当に評価することの難しさを実感をもって書き下ろした力作。日本憲政史上に燦然と輝く業績を残した庶民政治家を、ただ「金権汚職の首魁」として葬り去ってしまうのはいかにも惜しい。「三分の非理」をわきまえながら、田中角栄が示した「七分の理」を高く評価しよう。
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Posted by ブクログ
■エネルギー安全保障
田中は自ら建設会社や関連する「幽霊会社」を駆使したりして、公共事業が行われる土地を買いあさり、のちに高い値で行政に買わせ、また公共工事の口利きあっせんでは出来高払いで平均3%の口銭を取っていたといわれ、自民党議員の慣例となったとさえ伝えられる。
このように、田中は不動産を使ってヤミ政治資金をつくっていたのだが、その一つが柏崎原発用地であった。
権力を得るためにカネがばら撒かれ、そのカネを得るために利権政治が横行した。地方の活性化という聞こえの良い公共工事を推進していく水面下で、土地ころがしや口利き斡旋等を手にして肥えていったのが、当時の自民党を中心とした政治家だった。
角栄の功として7割が認められても、残る3割の負に対しても軽視は危険だ。
原発に関していえば、原発は電気を生み出しながら、同時に核廃棄物も生み出している。政府はその処分に困り、青森県六ケ所村に核処理施設を作った。何万年もの間、天災や人災から守らないとけない施設である。守ることができなければ、核廃棄物による大規模汚染という悲劇が待っている施設である。
「原発そのものも、いずれ巨大な廃棄物となります。安全かつ適正に解体処分されればよいのですが、未来の経済情勢によっては、そのまま放置されることにもなるかもしれません。解体しても、そもそもそれらを運んで捨てるところがあるのでしょうか。」反対者の中で、このように叫ぶ者もいた。
■ロッキード事件の本質
アメリカが田中内閣のエネルギー外交、日中外交の行方を注視していたことは確かである。しかしながら、ここで考えなければならないのことは、田中の「独自外交」に対してアメリカ政府が持っていた懸念なり不快感が、上述したようなリスクや、アメリカにとっての田中の利用価値(田中は通産相時代に繊維交渉をまとめ上げたため、アメリカは彼を高く評価していた)を無視してまで田中を潰そうと思わせるほどのものだったのか。利用価値が高いからこそ、逆に仕返しをする能力と対立を恐れたのかもしれないが……。
実際、田中は「私の資源外交に対して、アメリカのメジャーからいろんな横槍があるだろうということはわかっていた。こっちは初志貫徹だ。」と語っている。
当時のニクソン政権としては、日本の輸入を増やしてもらい、貿易収支の改善を図ろうと懸命な時期だった。昭和47年8月の田中-ニクソンのハワイ首脳会談で、アメリカのドル防衛と、日米貿易摩擦改善のために、アメリカから7億1000万ドルの緊急輸入を行うことが決定した。その目玉が日本の民間航空会社による3億2000万ドルの航空機輸入だった。田中は、日米関係強化のためにも、民間航空機調達といった手みやげを、ハワイ会談までに用意しなければならなかった。
こうした日米間の貿易摩擦問題の中で、日米をまたぐ形でロッキード事件が起きたことを強調しておきたいと思う。