【感想・ネタバレ】三浦綾子 電子全集 果て遠き丘のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年02月16日

大学時代、三浦綾子さんの著作を読みまくっていた時期があり、この作品もその時に読んだもののひとつなのです。いわゆる純文学風でない作品であるゆえ、太目の文庫なのに妙にとっつきやすかったように思います。


この作品の説明をする時に私は、
「確かねー、「悪徳の栄え」のような姉妹が出てきて(姉がいい人で妹が...続きを読む極悪人ちゅう感じね)最終的には姉が幸せになって、妹がギャフンと言わされるという話だったと思います」なんて言い方をしてしまいます。さらっと読んだ時の印象はまさにこんな感じだったのです。ところが2回目に読んでみたらもっと複雑で奥が深い作品でした。


主人公香也子は、自分より美しいものが嫌いで、また、他人が自分より幸せになるのが許せない人。それがゆえに義姉である章子の婚約者金井を奪い、実姉恵理子(最初の説明で言う、いい人の姉はこの人)と西島との間を裂こうとしたりします。そして金井を奪うことには成功しましたが・・・ところがどっこい、この金井という男、超がつくぐらい極悪人で、結局香也子は捨てられることに。


 最初にこの作品を読んだ当時は香也子ってとんでもない女!って思っていましたが、再読してみて、この人は自分を一番に愛してくれる人が欲しかっただけなのかなーとも思いました。最後の、金井に捨てられた後の彼女の行動は、誰かに心配してほしいという無言の叫びがあったように思えます。


 また、これは最初に読んだ当時も考えさせられましたことですが、恵理子の恋人西島は、
「好きだからといってむやみに会ったり、たちまち肉体関係に陥るよりは、会いたい思いに耐えるそのせつなさが、恋愛の重さである」
「会うという自由もあるけれど、会わないという自由もある。会いたいから会うのなら子供でもできる。でも、会いたくても会わない自由を行使するのは、ほんとの大人にしかできない」と、恵理子に話します。


 それを読んだ時私は、「あえて会わないでいることで愛を育てることも大事」と解釈し、思わずうなってしまいました。
 結婚してからはこういう恋愛に関して考える機会が著しく減ってしまったのでピンと来なくなりましたが、当時確か「そういう愛情の育み方もありか」と思ったような気がします。
 というよりもむしろ、恋愛以外にもやりたいこと、すべきことがいっぱいあるのだから、感情に任せきりにせず、それらをきちんと自己管理しながら、愛を育てるのが大人の愛だな、という風に今は考えています。


でも、この作品自体のテーマは別のところにあったはずなので、今度もう一回じっくり読んでみようと思います。

0

「小説」ランキング