あらすじ
震災後、日本中に響いた「頑張れ日本!」のかけ声。一日も早い復興を願うのはもちろんだが、今の日本には悲しみを正面から受け止める力が失われつつあるのではないか、と著者は主張する。つらい現実から目をそらさずとことん悲しむことで、生きる力が涌き、真に優しくなれるはず。孤独死・自殺問題に取り組んできた若き僧侶が被災地で見た死と祈り、そして希望を、仏教の言葉を通して伝えていく。
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Posted by ブクログ
「死についての悲しいできごと」から少しでも立ち直りたく、本のタイトルから手に取ってみました。
著者は僧侶。サブタイトルの「2000人の死を見た」そのまま、さまざまなケースの死の現場の実体験をいくつも紹介しています。
ホスピス現場や東日本大震災の現場での学び、気づき、患者さんの思い、痛々しいほど伝わってきました。
当たり前のことですが、いろんな生があって、いろんな死があって、遺された人もいろんな想いがあるのだと改めて考えさせられました。
仏教の教えは誰もが学べることで、誰もが引用できますが、こちらの著者はたくさんの活動をされ、その中で学びや気付きがあり、嬉しいこともあれば辛辣な悲しい思いもされ、目を塞ぎたくなるような現場を見てこられたという、リアルな言葉であるということ。
だからこそ胸に刺さるシーンがいくつもありました。
悲しむ時間が長ければ、つい「立ち止まっている(その間に遅れを取ってしまう、こんなはずじゃなかったと思ってしまう)」と焦ってしまって。
焦りが辛さを助長している現状、誰かの死の場面を知ることで、もう少しゆっくりでいいかなと思えました。
著者が立ち上げた『寺ネット・サンガ』にもとても興味を持ちました。
Posted by ブクログ
人間の心の推移をしっかり見つめて、お話を聴いて行くことが必要ということが理解できる。時には親鸞聖人やマザー・テレサの言葉などを引用しつつ、しかしあまり宗教色は感じられず読むことができる。筆者自身の経験があまり美化せずに現実に即して書かれていることに好感が持てた。
Posted by ブクログ
チェック項目32箇所。お釈迦様の悩み・・・人間として生まれてきた苦しみ。仏教では「悲しみ」の心を大切にしている・・・慈悲・・・悲しみから慈しみが生まれる。悲しみから目をそらさずに受け止めることができた方ほど穏やかな気持ちになれる。生まれてこなければ良かった・・・愛されたい、必要とされたい。思い通りにならないことを思い通りにしようとするから苦しみが生まれる。すべてをあるがまま受け入れる。一切皆苦・・・人生は苦しくて当たり前。「死にたい」・・・自分のことをわかってほしい。自分の行いを認めるのは勇気がいる。死から目をそらさない・・・親が子にする最後の仕事は死に様を見せること。明日はどうなるかわからない。今が大事、今を大切に生きる。マザー・テレサ、自分の家族の外で人々にほほえむのはたやすいこと。あまり知らない人を世話するのはとてもかんたんなこと。家の中で毎日会っている家族を思いやりをもって、やさしく、ほほえみを忘れずに愛し続けることはとても難しいこと。悲しみ比べに意味はない。孤立死を防ぐ。他人に迷惑をかけたくない・・・助けてと頭を下げたくない、人に弱みを見せたくない。プライド。死んで迷惑をかけるなら生きているうちに助けを求めた方がずっといい。孤立死は高齢者だけでなく若者もある。辛いときはお互い様。男子学生のほうが弱みを見せられない。女性は話す傾向高い。すべての死は平等・・・・お釈迦様。人は衣食住を確保しても生きていけない。気楽に相談できる仲間がいて初めて生きることを肯定できる。被災地ではなく生まれ故郷。「祈る」ことで自分自身を見つめ、他者の痛みを感じることができるようになる。人の為・・・偽り。お布施をする・・・執着を断つ・・・「捨てる」こと。生きる意味を考える。
Posted by ブクログ
子供の時、感受性の強かった僕はそれを素直に受け止めることが出来なくて、できるだけ能面を装うようにしていたように記憶する。でも、心はいつもヒリヒリしていた。大人になってからもそんな一面は残っていて、感情を制御するためにいろいろなものを切り捨ててきたような気がする。
切り捨ててきたものとはなんであったか。それは、悲しみであったり、寄り添う気持ちであったり、祈りであったり、抱きしめる行為であったり、お詫びする心であったり、そのようなものであったということが、この本を読んで思うことができる。
著者はまだお若いお坊さんであるが、ホスピス勤務そして東北の大震災で多くの方の死を看取られ、悲しみや苦しみに寄り添ってこられた方である。決して強い人ではなく、ご自分の心を引き裂きながらも、悟りを開こうと努力されている方のように思える。
本書の様々なエピソードは、著者の中下大樹さんの心の弱さもさらけ出しながら、人に寄り添い繋がって生きていくことの大切さが謙虚に描かれている。そう、被災地の方には、遠くの安全な場所から「がんばれ」ではなく、一緒に悲しむことが大切だと。
Posted by ブクログ
悲しいんでいる人を前に、人は「早く元気になって」「頑張って」
と声をかけがちだ。
この本は、「はやく悲しさから抜け出し、元気になれ」と
強要される風潮からの違和感から出発し、
「悲しいとき、まっすぐ悲しさを受け止める」ことの重要さを
説いている。このテーマは非常にすばらしい。
また著者が触れ合った人の体験談を通じ、
著者の主張の全体像を伝えようとする編集も秀逸。
ただし、各論では、若干著者の思想や主張がわかりづらい。
たとえば著者は、死を前にした方への苦々しい思いを
その当人に指摘される。
そして著者は自己肯定されたと感謝して涙を流したとある。
なぜ感謝? 反省ではないのか?
このあたりの心情の経緯がはっきりと描かれていない。
また、そこかしこに見られる自己アピールにより、
著者の人間的な未熟さが浮き彫りになって見える。
(もちろん著者の経験自体、すさまじいとは思うのだけれど)
しかしそれを差し引いても、テーマと本の作りは良いので、
単なる仏教本、自己啓発本とは一線を画した
読む価値のある本だと感じた。