あらすじ
多彩な論者が多様に語る、映画のこと
宮崎駿監督最新作にして到達点『君たちはどう生きるか』。重層的な物語の中に、各界のプロフェッショナル達は何を感じ、見出すのか。
【目次より】
Part1 映画『君たちはどう生きるか』誕生
Part2 『君たちはどう生きるか』の音楽
久石譲/米津玄師
Part3 『君たちはどう生きるか』を演じる
山時聡真/あいみょん
Part4 『君たちはどう生きるか』を読み解く
藤原辰史/千葉雅也/東畑開人/冲方丁/落合博満/塚原あゆ子/山崎貴
鈴木敏夫 特別インタビュー ほか
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Posted by ブクログ
1つの映画を作る上で、どれほど多くの人が情熱を注ぐのだろう。多視角に読めて面白い。宮崎さんは今まで隠してきた自分の内側の闇を初めて描く本作で、このタイトルを選んだ。表題の小説も以前読んだが、戦時中の少年の懊悩と叔父の温かな眼差しに、何故か心がかき乱されたのを覚えている。米津さんの作曲を初めて聞いて涙を流した宮崎監督の心の内に、戦争と少年時代のやるせなさが飛びすさっていったのを察する。私はこの本好きだなあ。また映画観たくなったし、地球儀が頭の中でリフレインした。
Posted by ブクログ
ジブリの教科書シリーズ、『君たちはどう生きるか』が満を持して発売。関係者はもとより、各界の著名人が今作について語る。本書での語りおろしも多数収録。
すでに『君たちはどう生きるか』については様々なメディアで語られている。本書はどちらかというと作り手の目線で語られており、宮崎駿が「何に挑戦したのか」を考察する人が多かった印象。なのでいわゆる「ストーリーの解説」のような内容ではない。そもそも錚々たる執筆陣でさえも誰も説明できない。今だに味わっている最中なのかもしれない。執筆陣の一人、山崎貴監督も「つまらなかった人ほど二回目を観てほしい」と言っている。
制作関係者の話を読むと、今までジブリが積み上げてきたものが結晶化したのだと感じられた。ナウシカからの長い付き合いのある久石譲の本作へのアプローチや、鈴木敏夫プロデューサーによる『宮﨑駿』にしか使えない戦略、若い語り手はジブリに育てられたと口を揃える。映画作りの到達点を垣間見たようで、宮崎駿ファンの私は涙が出るほど感動した。
制作には関わっていない語り手も、自らの業界に当てはめて、本作での挑戦の凄さを噛み締めている。『君たちはどう生きるか』は北極星のように、すでに多くのクリエーターの道標となっているのだろう。
国内外の高い評価を集めながらも、一筋縄ではいかない物語に難解と言われる本作。執筆陣の感想を通して読んでみて、改めてこの作品の底知れなさを感じた。
ダンテの『神曲』はもとより、ポーの『大鴉』やチャペックの『山椒魚戦争』など個人的に好きな作品が参照されていたのも嬉しかった。この作品が「時の回廊」のように、どこからでも入ることができることの表れだろう。漫画版『風の谷のナウシカ』に通じる奥深さを、2時間の映画にまとめてしまった。(そういえば漫画ナウシカも10年くらいかけている)
観る人の数だけ感想があるという当たり前のことですら、作品の一部にしてしまう懐の深さがある。宮﨑監督はこの作品で、古典や神話が持つ受け手のイマジネーションを信頼する力を、現代に取り戻したのではないか。
説明されないからこそ、作品と遊ぶ空間が生まれる。何度見ても違う場面で感動したり、自分が変われば作品も変わってくれる。この作品を語る人はとても楽しそうにみえる。