【感想・ネタバレ】原爆誕生 「悪魔の兵器」を求めた科学者たちのレビュー

あらすじ

ノーベル賞受賞者ら一二〇〇人もの科学者と空前の予算を投入したマンハッタン計画.「軍事的には不要」という軍の意見を退け原爆開発を提案・推進し,投下を主張したのはオッペンハイマーを始めとする科学者たちだった.彼らはなぜ大量殺戮に突き進んだのか.掘り起こされた肉声から「悪魔の兵器」誕生の全貌に迫る.

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Posted by ブクログ

「恐ろしい未来が待っているとわかっていながら、現状に甘んじて特に何も変えようとしませんでした。長い期間を経て、その状況を徐々に受け入れていくというのは、何とも奇妙な感覚です。ですが、それは人間のほとんどの活動に共通して言えることなのではないでしょうか。」
原爆開発に関わったある科学者の証言より

の書籍では、原爆開発に関わった主要な科学者たちの証言を集めることで、科学者達がどういう思いで開発に携わり、原爆がこの世に生まれ、広島と長崎に投下されるに至ったかに迫っている。記録に残る証言を丁寧に読者に示すことを徹底し、著者の主観はあまり含まれていない。その構成がよかった。もちろん、これが全てではないのだろうけど、少しでも知ることができたのがよかった。

ナチスの脅威が迫る中、亡命したユダヤ人やアメリカの科学者達は、それぞれの大義を引っ提げて原爆の開発に尽力を注いだ。その大義は、ナチスに開発の先を越されて祖国や家族の生命が脅かされるのを防ぐこと、今後の戦争を未然に防ぐ抑止力とすること、科学の力を世に知らしめて国家における科学の地位を高めること、科学者として新たなものを開発することなど多岐に渡る。
しかし、当初はナチスの脅威への対抗であったはずの原爆開発計画だが、1943年の時点では、落下地点の候補として既に日本が上がっていた。また、原爆を使用することを決める会議で、その倫理的な懸念はほぼ話し合われなかったに等しい。日本人が人間であるという認識が欠けていたのではないか。
国家機密として約3年間でマンハッタン計画に費やされた税金は20億ドルに及ぶ。後には引けない額であり、戦争終結のために原爆が必要だったという理論を成り立たせたかった者たちが、会議における発言権を握っていた。
憤りしか感じ得ない。原爆投下の理由には成り得ない。決して。
著者は、誰もが過ちを犯してしまう可能性を持っていることを呈している。このプロジェクトを率いたオッペンハイマーも、孫にとっては優しいおじいちゃんだった。だけど、原爆の開発、そしてその投下は犯してはならない過ちだ。今も尚、ロシアはウクライナへの侵攻を辞めないし、イスラエルによるガザへの非道も続いてる。地球上にある核兵器の数は、すぐに使用できるものだけでも4000を超えるそうだ。
様々なものが影響し合って成り立つこの世界が、少しでも平和な場所になるように、これからも学び続けて、周りの人との対話を大切に過ごしていきたい。

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2025年11月22日

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