【感想・ネタバレ】極北の海獣のレビュー

あらすじ

18世紀ロシア、19世紀アラスカ、現代フィンランド……絶滅した海獣ステラーカイギュウを巡り3つの時代に生きた人々が、時空を超え繋がる。史実に基づいた息を呑む冒険譚。各国話題の書!

◆川端裕人さん推薦!!◆

絶滅した生きものをめぐって、もはや四散しつつある記憶を掬い上げる。
著者の丁寧な語りは、静謐にして緊密だ。
魅了された読者は、自分自身、その静かな残響の一部となっていることに気づくだろう。
ここに絶滅文学の精髄がある。

(内容紹介)
「滅びたものと相まみえてみたいと、だれもが一度は夢見たのではないだろうか」
18世紀のロシア極東カムチャツカ半島(第1部)、19世紀アラスカ南東部(第2部)、現代フィンランドの自然史博物館(第3部)……300年の時を超えて、今はなき巨大海棲哺乳類ステラーカイギュウをめぐる、史実をもとにした息を呑む冒険譚。
葛藤を抱えその再生に情熱を燃やす人々が、いま歴史を変えるーー。

フィンランドですぐれた新人作家の作品に贈られるヘルシンギン・サノマット文学賞受賞&28言語で刊行のベストセラー。
消滅した世界を悼み、文学が弔う壮大な物語。

日本語版装画:ミロコマチコ
装幀:大倉真一郎


【目次】

第1部 栄光か、破滅かーー1741~〈ロシア極東・カムチャツカ半島〉
第2部 征服ーー1859~〈アラスカ南東部〉
第3部 命あるものたちーー1861、1950、2023〈フィンランド・ヘルシンキ〉


【訳者あとがきより】

登場人物それぞれが、時代によって課された制約の中で、
もがき、苦しみ、苛立ち、また喜びに震える、
その心のありようがいきいきと描き出される。

そして、互いに出会うことはない人々の思いが、
ステラーカイギュウを介して時空を超えて交差するとき、
読む者の胸に深く響く物語が立ち現れる。

(略)どれほど資料を集めても埋めきれないもの、
それは実際にその時代を生きた人々の心の襞であり、
そこを想像の力で補って骨太な作品世界を構築した著者の、
作家としての手腕は確かなものだ。

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Posted by ブクログ

凄い本に出会ってしまった。という感想しかない。
海獣というのはジュゴンのような〜?という予備知識しかなく、アラスカに到達したロシアの博物学者の冒険譚なのかと思って読み進めた。そしてわかったことは絶滅してしまった動物たち。人間のせいで…ということ。
ほとんど歴史に名を残せなかった人たちで紡がれたこのフィクションは博物学のみならず世界の広さもそこに住まう人間の傲慢さも生きとし生けるものすべての存在価値も考え直されてくれる。そして、訳者先生の淡々としているけれど鋭く的確な品のある文章が私たちに理解の助けを与えてくれた。
著者、訳者、出版社誰も彼にもお礼を叫びたい。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3世紀にわたって、1頭の生態がわからない動物を調べるために命を張った調査や、のちの復元について書かれていて「滅びたものと相まみえてみたいと、だれもが一度は夢見たのではないだろうか」という言葉に衝撃を受け、良い冒険小説を読んだと思いました。

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2025年05月25日

Posted by ブクログ

 ヘルシンキの自然史博物館に展示されているステラーカイギュウの骨格標本にまつわる人々の物語だ。第一章はカムチャッカ半島の周辺を探検していたベーリング隊の学術員シュテラーさんだ。半島探検中に遭難し、無人島に漂着したベーリング隊は、そこに住むステラーカイギュウを捕獲し命をつなぐ。その肉が美味であることが世間に伝わり乱獲される。同時にラッコが乱獲されることにより、ラッコが主食としていたウニが増殖し、ウニが海藻を食べつくすことによりステラーカイギュウが主食を失った状況も併進する。結果ステラーカイギュウは絶滅する。

 100年が経過し、アラスカ総督府夫人と義妹の物語、さらに100年経過し、ヘルシンキの大学教授と博物画作者、さらに100年後の現代の標本管理士、鳥卵コレクター。おおよそ100年ごとにステラーカイギュウにまつわる人間もようが展開される。特に女性の置かれた状況が良く書かれている。

 博物館で存在感を放つ骨格標本の説明書の裏に、まだまだストーリーが埋もれているんだろうな。

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2025年08月19日

Posted by ブクログ

発見から27年で絶滅してしまったステラーカイギュウを巡る物語。探検家、博物学者、最後から2番目のアラスカ総督、昆虫画家、鳥卵博物館の標本管理士…面白くないわけがない。

史実の隙間の誰も知り得ない詳細を埋めるように作られたフィクションであるがゆえに、タイムワープしてその時代を覗き見ているような感覚に陥った。

人類による絶滅、という概念がなかった時代にそれを証明する事自体が困難だったなんて、これを読むまで考えたこともなかった。生物への愛と探究心に溢れたかつての人々の努力によって、いま当たり前に知ることのできる事実がある。彼らに敬服する一方で、同じ人間によって絶滅に追いやられたいくつもの生物がいるという事実に複雑な思いがする。最後の兄弟の話が好きだ。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

今はこの地上にいない巨大な哺乳類にちなんだ近世の物語。それぞれ違った目的で彼の地に向かう彼らの精神力が凄まじい。

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2025年06月10日

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