【感想・ネタバレ】たえまない光の足し算のレビュー

あらすじ

若者たちの生を鮮やかに描く、芥川賞候補作

第173回芥川賞候補作
若者たちの生を鮮烈な文章で描く、これが文学の未来!

「かいぶつ」と呼ばれる時計台が見下ろす公園で出会った二人の少女と一人の青年。
美容外科のポスターに啓示を受け、花を食べる“異食の道化師”薗(その)。
「みんなのひと」になりたくて、フリーハグを続ける“抱擁師”ハグ。
“プロの軟派師”としてデビューしたばかりの弘愛(ひろめぐ)。

「こんなふうだったら、かんぺきだと思う」
「なにが」
「人と人とのむすびつきがさ」

ここは帰るべき家を持たない少年少女たちの残酷な楽園
21歳の新鋭が爆発させる愛と幻想の世界!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

衝撃的な作品だった。

薗やハグ、ひろめぐたち「とび商」は、「かいぶつ」と呼ばれる時計台のまわりで商売をしており、薗は異食、ひろめぐは軟派、ハグはフリーハグをしていた。
爆発を待つ時計台は薗たちの気持ちを表しているようで、気持ちがいつ爆発するか分からない危うさを感じた。

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「痩せたらなにもかもが変わる!」
美容外科に飾られたそんな広告をきっかけに、薗はダイエットをして痩せ、異食をするようになった。
口にするものが「食べ物」であればあるほど食べられず、「食べ物ではないもの」であれば食べられる。
特に花の雄蕊と雌蕊を好んで食べる描写が強く印象に残っている。
そんな薗の行為は異様で考えられないものであったが、途中から登場する抱擁師・ハグにより、薗の異様さが私の中で薄れた。

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この小説を読む中で考えたことは、大きく分けて二つある。

一つは、世間からの性別の捉えられ方だ。
性行為に関して、世間から向けられる目が、性別(この小説では女性と男性)によってかなり異なり、イメージが固まってしまっていると感じた。
ハグ(女性)とひろめぐ(男性)の行為をSNSで目にした人たちは、ハグをか弱いもののように扱い、抱擁師としてのハグの仕事は破綻してしまう。
本当は、抱擁師であるハグの包容力で成り立っていたものなのに。
動画一つでハグの仕事が成り立たなくなってしまう流れの中で、頭のどこかで「やっぱりな」という諦めにも似た気持ちが浮かんだ。
女性を弱いもの、支配されるものだと捉えられてしまうのは、本当に悔しい。
そして、その人自身の光を性的魅力だと思われ、それが生涯拭い去れず、何をしても「そのせいだ」と思われてしまうのは、とても苦しい。
その人自身の光は変わらないはずなのに。

考えたことのもう一つは、過剰な包容力についてだ。
ハグとひろめぐの行為について、「抱擁師であるハグの包容力で成り立っていたもの」と書いたが、その包容力が恐ろしかった。
「包容力」という言葉からは温かく優しいイメージを抱くが、ハグのそれは果てしなく、それゆえに近寄りがたいような感じがした。
ハグは「みんなのひと」になりたかったし、そのためならどんな手段を使ってもいいと思っていた。
そのいきすぎた包容力は、薗の異食よりも怖く感じた。

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ハグの仕事が成り立たなくなる中で、薗の気持ちに変化が起きていたのが印象的だった。
これまで疑わず迷わず生きてきた薗が、初めて「方向転換」をすることを考える。
ハグとひろめぐが《痛くない出口》に向かったあと、「非生活者」だった薗が「人間(=生活者)」になるために動きだすラストは、ほんの少し希望があると思った。

0
2025年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ぬくぬくで育った私には、ハグとひろめぐが強すぎて怖い。自分である力に圧倒される。
日々野コレコの表現もどうやって持ってきたんだそれ!?みたいなのが多くてすごい。
自分にバチっとハマったら「分かる✨✨」で気持ちいいけど、分からないのも多くて悔しいので、もう1回読む!

0
2025年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

書き出しの「異食の道化師」で「誤植かよ」と思ったが、間違いではなかった。普通の食物を食べられない薗(その)は、時計台で異食を見せ物にしていた。その時計台の側には池があり、飛び込めばどこかにある“出口”にいけるという。薗はフリーハグをする女性のハグと知り合う。薗は花の雌蕊が好物で、雄蕊を陽根、雌蕊を陽蕊と呼んでいる。これは性器のメタファーとなっている。ハグの陽蕊が軟派師の弘愛(ひろめぐ)の陽根に侵害され、ハグと弘愛は池に飛び込む。残された薗は···。生と死と再生(輪廻)を感じさせる時計台。薗はどのような状態になるのか想像するのが読みどころなのかなあ、と正解のない読解をしてみた。

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2025年08月29日

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