あらすじ
毛沢東「文化大革命」にも相似するトランプ革命。
何がポピュリズムを台頭させたのか?
著者書き下ろし「あとがき」を特別収録。
1965年、毛沢東は文化大革命を開始した。それから約半世紀後、トランプは「ディープ・ステート」との闘いを宣言した。この2つには共通点がある。既存の支配層を徹底的に攻撃したことだ。
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旧来のエリート層は、出自や家系で選ばれていた。こうした上流階級による支配が終わったあと高学歴エリートが新しい支配者層となった。だがこの「能力主義」の平等性が、格差の拡大によって疑問視されている。
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欧州諸国でポピュリスト政党が躍進している。支配層から無視されていると感じている人々がポピュリスト運動を支えている。その目標は現状の改革ではない。支配の正当性を欠いたエリート層を排除する「革命」である。
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「取り残された」と感じている人々に、帰属感と意味を取り戻させられるだろうか?
右派ポピュリズムがあまり見られない日本は、欧米の経験から何を学べるのだろうか?
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著名コラムニストが、執筆に10年を費やした話題作。
【目次】
第II部 現在の革命
第6章 過熱するグローバル化――経済
第7章 解き放たれた情報――テクノロジー
第8章 トライブ(部族)の復讐――アイデンティティ
第9章 二重の革命――地政学
終章 無限の深淵
あとがき 文化大革命
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Posted by ブクログ
相変わらずザカリアの文章はとても面白い、確かに面白いのだが、今作はなんだかしっくり来ない。いくつか理由があるように思う。
本書では、オランダ、イギリス、フランス、アメリカの4つの革命を取り上げ、ここから何らかの示唆が出そうとする。ただ、その4つを取り上げた理由は判然としない。普通に考えればロシアか中国が入るべきではないか?ザカリアは、イギリスでは「ボトムアップ的変化」が成功した一方、フランス革命では急進的な「トップダウンの変革」が恐怖政治と混乱を生んだと対比するが、では日本の明治維新は何だったのかとも思う。
後半は、テクノロジーの進化やグローバリゼーションについて論じるが、特にテクノロジーについての記述は前後の文脈とあっていなくてちぐはぐな感じがするし、現代で見られるポピュリズム的な機運についての議論も、あまり前半の分析(過去の革命について)と繋がっていないような気もする。
総じて、これは私の読み方のせいかもしれないが、最初の8割くらいで色々と面白い話を聞いた後、最後の2割でいきなり足元の問題に切り込む感じがして、読み終わった後にこれは何の本だったんだろうなという感じがした。(その感想は、日本語版向けに追加された章で「むしろトランプ政権は文革と近似性があるのでは」と本編と無関係な話をされたことでより深まった。)
とはいえ、過去の革命から示唆を出す、それを現代の問題に当てはめるというチャレンジングな活動は評価されていいと思う。そして何より、読み物としては非常に面白かった。