あらすじ
『意志と表象としての世界』を著したショーペンハウアー(一七八八―一八六〇)の『余録と補遺』から,生と死をめぐる五篇を収録.人生とは意志=欲望が満たされぬ苦しみの連続であるが,自殺は偽りの解決策として斥ける.皮肉と遊び心に富んだ人生観察家による珠玉の哲学的散文.新訳.
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Posted by ブクログ
自殺について 他四篇
著:ショーペンハウアー
訳:藤野 寛
出版社:岩波書店
岩波文庫 青632-1
考えさせられる書でした。大変参考になりました。
最近まとめ直されたものなのだろうか、冒頭に「余禄と補遺」からの訳出とある
読み進めるにつれ、ショーペンハウアーは、唯物論者であることがわかる。
また、期待しない悲観論、徹底したリアリストでもある。
キリスト教にある救いのもとにあるのは、どうしようもない、性悪説であると感じました。
冊子は薄いのですが、辛辣な表現を含めて、心に刺さる箇所がたくさんありました。
気になったのは、以下です。
死後
・死後の存続についての回答
最も適切で、またさしあたり最も正しい回答とは、「死んだ後には、君が生まれる前にそうであったものとななる」 まったく、気がきいている
・永遠の存続ということはいかなる個人もふさわしくない。個人は死とともに滅びる
・現在には2つの側面がある
客観的な側面と、主観的な側面だ
世界は私の表象である、という私の冒頭の文からは、さしあたり、まず私がいて、それから世界だ、と続く
苦痛と快楽
・苦痛に対するわれわれの感受性はほとんど無限なのに、
快楽に対する感受性は狭く限られている
・われわれの意思に立ちはだかり、衝突し、それに逆らおうとするものは、すべて、不愉快なものや苦痛をもらたすものは何であれ、われわれは直かに、すぐさま、とってもはっきり感じ取る。
・悪しきものは、それこそ積極的なもの、それ自体を感知可能とするものだ
それに対して
良いもの、すなわち、すべての幸福、すべての満足は消極的なものだ。願望が存在を終え、痛みが消えたことでしかない
・喜びは期待をはるかに下回り、苦痛は予想をはるかに上回るように感じるとしたものだ
・労働、難儀、骨折り、苦境は、ほとんどすべての人間にとって、人生の全体を通じての宿命である
・世界は苦境と悲嘆の舞台でしかなく、最も幸せな場合ですら、退屈以外の何ものではない。
・個人の根底にあるのは、罪深いもの、倒錯したもの、原罪の下に理解されてきたもの、それ故にこそ人間が死の手に堕ちてしまったものである
自殺
・あの手この手を使って長引かせようとするほどに、人生に執着すべきではない
・生きるがゆえのおそろしい事柄が、死ゆえの恐ろしい事柄を上回るに至れば、人間はたちまちその生に終止符を打とうとするという事態が全体として見出されるだろう
生きようとする意志
・生きようとする意志の肯定と否定とは、ただの意志すること、意志しないことである
・ギリシア人の倫理と、ヒンズー教徒の倫理には際立った対照がある
前者は、幸福な人生を送る能力を身に着けることを目的とし
後者は、人生からそもそも解放され救済されることを目的とする
・旧約聖書は、人間を律法の支配下に置くが、この律法が救済に導くことはない
新約聖書は、律法を不十分なものと宣言し、それから離反する。人は信仰と隣人愛と自己自身の全面的否認を通じてでないと、恩寵の国にはたどり着けないと説く
・旧約聖書から新約聖書への移行とは、単なる道徳的美徳から生きようとする意志の否定への移行である。
・女性は、生殖行為の最中に不意打ちされると、誰もが恥ずかしさのあまり消え入りたくもなるのに、
妊娠は恥じらう気配などかけらもなく、それどころか、一種の誇らしさすら示して見せびらかそうとする
・性交は主要には男性の事柄であり、
妊娠は女性だけの事柄である
子供は、父親から意志と性格を、母親からは知性を受け取る
・不正な行為、悪意ある行為は、それを実行する人にあたっては、彼の生きようとする意志の肯定の強さのしるしである。
したがって、真の浄福である生きようとする意志の否定、それに伴うこの世界からの救済は彼から遠く隔たっているのであり、そのへだたりのしるしでもある。
・人生はあくまでも、われわれに課せられた新しい教程と見なされなければならない
・幸せな人生など不可能である
人間がせいぜい到達しうる最高の幸福は英雄的な人生行路だ
西洋人でもたどりつくのは、仏教的な一切苦、つまり、人生は自分の思い通りにはならない、ままならないという結論にたどりつくのである。
目次
凡例
われわれの真なる存在は死によって破壊されえない、という教説について
生存の虚しさについての教説への補足
世界の苦しみについての教説への補足
自殺について
生きようとする意志の肯定・否定についての教説への補足
訳注
訳者解説
ISBN:9784003363270
出版社:岩波書店
判型:文庫
ページ数:164ページ
定価:700円(本体)
2025年05月15日 第1刷発行
2026年02月16日 第2刷発行