あらすじ
文章を書く上で最も難しいのは、自分の文章の間違いを自分で見つけること。
作家、講師、編集者と20年の執筆経験を持つ著者が、「書き直す力」の技術と心構えを伝授。
あらゆる文章の質を高める方法を解説します。
「間違い」を引き受けろ。「正しい」「正しくない」を超えて、
「ほんとうに言いたかった言葉」に出逢うためのレッスン
大西寿男(校正者)
自分の主観を客観できる技術を身につければ、
よい文章が書けることを教えてくれる画期的な本
福岡伸一(『生物と無生物のあいだ』著者)
【本書「はじめに」より】
本書の目的はたったひとつです。
文章を書くすべての人々に向けて、「自分で文章を校正する」ための技術や考え方を伝えること。
それを手にすれば、文章の質が上がることはもとより、文章を書くこと自体が、とても楽しくなります。
なぜならば、書いた文章を自分で読み返す精度を上げれば、他の誰でもない、
自分自身が、自分の文章の最初の読者として、その価値を味わえるようになるからです。
本書を読んでくださった方が、明日以降、勇気を抱き、自信を持って自分の文章を書き、
かつ読み返せるようになってくれたら、これほど嬉しいことはありません。
そのための材料を、私なりに、懸命に皆さんに伝えたいと思います。
【目次】
はじめに
第一章 自分で校正をしたほうがよい三つの理由
第二章 自分で校正をするための基礎理論1/疑って読む
第三章 自分で校正をするための基礎理論2/肉体を思い起こす
第四章 自分で校正をするための基礎技術1/文法と日本語の変化
第五章 自分で校正をするための基礎技術2/構造とトーン
第六章 自分で校正をするための応用技術1/読者のために校正する
第七章 自分で校正をするための応用技術2/未来のために校正する
付録 ケース別・自分で校正をするための事例集
おわりに
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
私は、自分の思考を整理し、的確に「伝える力」を高めたいと常々考えていました。アウトプットの質を上げるには、文章を客観的に見直し、改善する「自己校正力」が不可欠だと感じていたのです。
今や生成AIを使えば、文章の校正はボタン一つでできてしまいます。しかし、AIは私たちの意図を100%汲み取ってくれるわけではありません。そもそも、執筆の段階で分かりやすい文章が書ければ、それに越したことはないはずです。
そんな時に目に留まった一冊が、川﨑昌平さんの著書『文とむきあう』です。
なぜAI時代に「自分で校正する力」が必要なのか?
本書が力強く説くのは、「書き手自身が、自分の文章を校正すべき」という点です。AIに任せれば楽なのに、なぜなのでしょうか。本書で挙げられている理由は、これからの時代を生き抜く私たちにとって非常に重要です。
1,自分の表現を、自分で完成させられる
第三者(上司やクライアントなど)のの意見に振り回されることなく、自分の考えやニュアンスを100%反映した文章を世に出せます。
2,自分の魅力を、自分で発信できる
SNSでの発信やブログ記事、資料作成などを外部の業者に頼ることなく、自分自身の言葉でダイレクトに魅力を伝えられます。コスト削減だけでなく、より「自分らしい」ブランディングが可能になります。
3,AIには書けない「人間味」を表現できる
定型的な文章は、今後ますますAIが担うことになるでしょう。しかし、人の心を動かし、感動や共感を呼ぶような情緒あふれる文章は、まだAIの苦手分野。この「人間味」あふれる個性的な文章は未だ人間しか書けないでしょう。
「校正」は2種類ある。
本書を読んで特にハッとさせられたのが、校正には2つの種類があるという指摘です。
文法的校正
「てにをは」の誤りや誤字脱字など、文章の表面的な正しさをチェックする、いわゆる一般的な「校正」です。
構造的校正
文章全体の構成や話の展開、論理的なつながりなど、文章の骨格を見直す作業です。文章が伝わりにくい原因は、文法ミスよりも、この「構造」にあることが少なくありません。
私が特に重要だと感じたのは、後者の**「構造的校正」です。文章の構造を見直すことは、すなわち自分の思考プロセスそのものを見直すこと**に他なりません。この作業こそが、「思考をまとめ、相手に伝わる力」を直接的に鍛えるトレーニングになると考えました。
すべての「書く人」へ
本書は、作家やライターといった文章のプロはもちろん、企画書やメール、日報など、仕事で少しでも文章を書く機会のあるすべての社会人が一読すべき一冊と言えるでしょう。
なぜなら、仕事において文章を書かない人は一人もいないからです。
AIに文章作成を補助してもらうのが当たり前になった今だからこそ、最終的にその文章に魂を吹き込み、読み手の心を動かすのは私たち人間です。そのための「武器」となる思考力と表現力を、本書で磨いてみてはいかがでしょうか。