あらすじ
終戦から33年が経過した1978年、著者・真尾は沖縄へ向かう。県民の四人に一人が犠牲になった地上戦に巻き込まれ、親を、子を、夫を、友を、尊厳を、あらゆるものを奪われた女性たちの痛みの記憶は、戦後なお静かに秘められていた。黙する声を聴き取ろうとする「己の罪深さ」を強く自覚し、それでも未来へ言葉を残す。祈りを届ける傑作ノンフィクション、待望の復刊。解説 吉川麻衣子(沖縄大学教授)
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Posted by ブクログ
沖縄の地上戦を体験した女性の方々の声を聞くことができた。
今更ながら、自分の中にある沖縄戦についての認識不足を痛感させられた。
沖縄の地上戦の事は学校の歴史で習った程度しか知らなかった。知ろうともしてこなかった。
女性たちは当時の事を思い出し語ることで、また、辛い過去が蘇えってくる。
言葉では「辛い」「悲しい」で終わってしまうが、それ以上の「死」「恐怖」「生る」という言葉の奥底にあるものが読んでいて伝わってきた。
例えば、隠れていた壕で赤ん坊が泣くと『米兵に見つかる危険があるからと一緒にいた友軍から射殺された』
これが愛国心ということなのだろか?日本国を守るため。同じ日本人を殺さなければならなかったのか。読んでいて、そのことが腑に落ちなかった。
弾から逃げる途中段々に麻痺しくる。それは、死人を見ても何とも思わなくしまう事。
人間は常に死の恐怖と背中合わせの状況では、冷静な判断が出来なくなる。それが戦争の恐ろしいところだと思った。
ノブ子さんの漏らした言葉が心に残った。
「言葉っていうのは、焦れったいものですねえ。あったことを、そのまましゃべろうと思ってても、どこか、少うし、違ってしまう。物事を、まったく同じに再現して伝えてるってことは、実際は不可能なのかもしれませんね。・・・わたしは、飾らないで、事実通りに話してるつもりなんだけど、ズレがあるような気がしてくる。あの戦争は、やっぱり、その場にいた人間でないと、ほんとうには分かりっこない、とそういうしかないんですよ」
私がこの本を読んで衝撃を受けても、沖縄戦の一片を知ったにすぎない。
しかし、この事実は忘れてはならないと心に刻んだ。
この本は沖縄戦の事実を伝えるだけではなく、人間の弱さや生について示唆に富む本だと思う。
Posted by ブクログ
「戦争を体験したことない者には、戦争の恐ろしさなんてわかりっこない」
本書に登場する何人もの方々のこの言葉が心に重くのしかかる。言葉で伝えること、伝えられた言葉を受け止め、想像することの限界を私たちはどれほど実感できているだろう。
いまだに戦争は終わらない。非道な虐殺も終わらない。なぜ、私たちは同じ過ちを繰り返してしまうのか。なぜ、暴力に走る前に対話が生まれないのか。
絶対に、もう二度と新たな戦争を生み出してはならない。この本を1人でも多くの方に読んでもらえるよう、まずは呼びかけるところから始める。こんなことしか自分にはできないけれど、こんなことが意味を持つと信じて、声をかけ続けるしかない。