あらすじ
昨今混迷化するパレスチナ情勢を受け、パレスチナに暮らしている人々や故郷を追われた人々の現状、イスラエル国内の世論等、一元的な対立構造ではない多様な視点からパレスチナ問題がわかる別冊エリア・スタディーズが誕生。どのようにガザを支援しているのか、パレスチナ国内のカルチャーや商業活動等、現地の日常も活写したパレスチナ理解の決定版。
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序章[鈴木啓之]
パレスチナ/イスラエル全景
パレスチナ難民の移動と現在の居住地
Ⅰ ガザ情勢から見るパレスチナ/イスラエル
第1章 ガザの風景――潮風が香る街道の町[鈴木啓之]
第2章 「封鎖」以前のガザ――うち続く反開発と人びとのスムード[藤屋リカ]
第3章 封鎖下の生活――若者の志を打ち砕く現実[手島正之]
第4章 国際社会とガザ――ガザの人びとと国際人道支援[吉田美紀]
第5章 ハマースとガザ――抵抗と統治のはざま[山本健介]
第6章 イスラームと政治――その規範的観点と歴史的文脈[ハディ・ハーニ]
第7章 パレスチナと国際人道法――継続する占領と集団罰[島本奈央]
第8章 イスラエルと虐殺の記憶――過剰防衛の歴史社会的背景[鶴見太郎]
コラム1 レバノンの政治運動とパレスチナ[早川英明]
コラム2 イスラエル南部のキブツ[宇田川彩]
コラム3 イスラエル軍の徴兵制[澤口右樹]
Ⅱ 日常のパレスチナ/イスラエル
第9章 東エルサレムと人びとの日常――支配の侵食に抗うこと[南部真喜子]
第10章 西エルサレムの人びとと生活――弦の橋が映し出す街の姿[屋山久美子]
第11章 イスラエル国籍のパレスチナ人――「1948年のアラブ人」の日常[雨雲]
第12章 ヨルダン川西岸での人びとの生活――入植地、分離壁、検問所の存在とその影響、生活する人たちの思い[福神遥]
第13章 テルアビブ――世俗的首都の「多様性」[宇田川彩]
第14章 終わりのみえない難民生活――レバノン在住のパレスチナ人[児玉恵美]
第15章 日常の中のナクバ/ナクバの中の日常――歴史の抹消にあらがう人びとの暮らし[金城美幸]
第16章 パレスチナをめぐるもうひとつの争点――LGBTQの権利について[保井啓志]
第17章 入植者植民地主義とパレスチナの解放――地中海からヨルダン川まで[今野泰三]
コラム4 教育と日常[飛田麻也香]
コラム5 「非日常」の抵抗――パレスチナと演劇[渡辺真帆]
コラム6 日常という抵抗、文学という抵抗[佐藤まな]
Ⅲ 日本や世界との関わり
第18章 UNRWAの活動と日本――70年続いてきた支援[清田明宏・角幸康]
第19章 国際NGOとパレスチナ社会――人びとの暮らしに寄り添って[大澤みずほ]
第20章 ガザの商品を扱う――フェアトレードの試み[山田しらべ]
第21章 パレスチナ・ガザ地区での医療援助――国境なき医師団の活動を通して見た紛争地医療の課題[白根麻衣子]
第22章 国際協力NGOとアドボカシー活動――日本外交への提言[並木麻衣]
第23章 パレスチナ勤務の経験から――緊急人道支援から大規模産業復興プロジェクトまで[大久保武]
第24章 帝国主義とパレスチナ・ディアスポラ――大英帝国からアメリカ帝国へ[イヤース・サリーム]
コラム7 14歳のパレスチナ難民が日本に伝えたこと[新田朝子・石黒朝香]
コラム8 転換期にあるBDS運動 ICJ暫定措置命令と対イスラエル武器禁輸[役重善洋]
コラム9 『ガザ素顔の日常』上映と映画の力[関根健次]
パレスチナ/イスラエルを知るための参考資料
Posted by ブクログ
いまのことはもちろんであるが、バルフォア宣言の時からの説明を行っている。パレスチナの手工芸品などの説明があった。LGBTQのパレスチナへびイスラエルの宣伝については、日本ではほとんど報道されない。日本の支援についての説明もめずかしかった。
2024年現在の状況を説明しているので、パレスチナを知りたい人必読である。
Posted by ブクログ
「ガザとは何か」に続いての関連本。
24章は、歴史・生活・国際社会・政治等の切り口で、大学教授、国連職員、中東やユダヤの研究者、NPO職員、国境なき医師団、外務省出身の方々からの投稿をまとめたもの。
パレスチナ人の扱われ方を知ると、胸が張り裂けそうになる。
イスラエルの国是は、純粋なイスラエルの国家を作ること。パレスチナ人との共存などありはしない。
1948年、パレスチナに「ユダヤ人国家」の建設を目指したシオニストの武装組織は、先住していたパレスチナ人を虐殺して恐怖を煽りながら、75万人(人口の約半分)ものパレスチナ人を同地から追放していった。イスラエル人歴史家のイラン・パペによれば、この戦争が終わった時、彼らの531の村落が破壊され、11の都市部が無人にされたという事実からも伺い知れる。
彼らにとって、パレスチナ人は虫けらであり奴隷なのだろう。
2019年6月、1人のパレスチナ人男性が、イスラエル兵士に向かって花火を打ち上げたとしてイスラエル兵士に射殺され、その集団罰として7ヶ月間で600人以上の恣意的な逮捕・拘禁が行われた。逮捕された中には、4歳の子どもも含まれていたという。
その後射殺されたパレスチナ人男性の遺体の返還をイスラエル側に求めたところ、遺体返還費用の請求がされたこと、そして今後デモをしないことや武器を手放すことを約束させられたという。さらに事件後、パレスチナ人男性が家族と居住していた家に、イスラエル当局が深夜に踏み入り、家族への尋問が頻繁に行われており、父親も一時拘禁された。このように、罰が連座的に、家族やコミュニティにまで波及し、まさに「見せしめ」としての機能を果たしていることがわかる。
ガザにおいて、2007年からイスラエルが人や物資の出入りを制限する封鎖政策をはじめ、住民は水・食料・薬・電気・燃料などを得られず、人道危機が起きた。人びとは2018年3月から1年9ヶ月間、毎週金曜日に封鎖の解除と故郷への帰還を訴えて、封鎖用フェンスをち破るため、「帰還の大行進」と呼ばれる非武装デモを行ったが、フェンスの外で待ちかまえるイスラエル兵にことごとく銃撃され、多くの死傷者が出た。そして2023年10月7日、八マースらガザ武装抵抗組織が、封鎖用フェンスを壊してイスラエル領内で軍事作戦を行ったというのが、現在の紛争の起こりだ。
国連のグテーレス事務総長が、ハマースの攻撃には理由があると述べ、イスラエルは激怒したと言うが、そんなことを言う資格があるのだろうか。
2023年2月、南アフリカ政府がジェノサイド停止を求め、国際司法裁判所にイスラエルを提訴。翌年1月、国際司法裁判所はイスラエル政府に対し、ジェノサイドを防止するあらゆる措置を講じ、ジェノサイド実行を呼びかける者を罰するように暫定的に命じた。
これは、一般の考えに通じるものではないか。
現在も続くジェノサイド。
死者はすでに4万人を超え、その75%が女性と子供だと言う。
殺す武器の多くはアメリカからの援助だ。
アメリカでは金持ちのユダヤ系の政治的バックアップが、大統領選をも左右する。
それに対し、多くの学生が反対の声をあげていることにも納得する。
アメリカにも良心を持つ人がいるのだ。
Posted by ブクログ
イスラエルによるガザ地区攻撃により過去最悪の人道危機が続く中、現地での経験もある研究者やNGOなどの実務家など34人の執筆者が、中長期的な視座から、パレスチナ/イスラエルの「いま」を理解する手がかりになるよう多角的に論じる。
イスラエルによるガザ地区攻撃が深刻な状況の中でその背景等について少しでも知ろうと本書を手に取ったが、現地での活動経験のある人やレバノン在住のパレスチナ人の方などの実感のこもった報告や解説が多く、現在の状況に至るパレスチナ情勢の実情について多面的に理解が深まった。ちょっと全体的にパレスチナ側の視点に偏りすぎな気はしたが、問題の根本はイスラエルによる入植・占領にあるという認識を新たにした。