あらすじ
昨今混迷化するパレスチナ情勢を受け、パレスチナに暮らしている人々や故郷を追われた人々の現状、イスラエル国内の世論等、一元的な対立構造ではない多様な視点からパレスチナ問題がわかる別冊エリア・スタディーズが誕生。どのようにガザを支援しているのか、パレスチナ国内のカルチャーや商業活動等、現地の日常も活写したパレスチナ理解の決定版。
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Posted by ブクログ
いまのことはもちろんであるが、バルフォア宣言の時からの説明を行っている。パレスチナの手工芸品などの説明があった。LGBTQのパレスチナへびイスラエルの宣伝については、日本ではほとんど報道されない。日本の支援についての説明もめずかしかった。
2024年現在の状況を説明しているので、パレスチナを知りたい人必読である。
Posted by ブクログ
「ガザとは何か」に続いての関連本。
24章は、歴史・生活・国際社会・政治等の切り口で、大学教授、国連職員、中東やユダヤの研究者、NPO職員、国境なき医師団、外務省出身の方々からの投稿をまとめたもの。
パレスチナ人の扱われ方を知ると、胸が張り裂けそうになる。
イスラエルの国是は、純粋なイスラエルの国家を作ること。パレスチナ人との共存などありはしない。
1948年、パレスチナに「ユダヤ人国家」の建設を目指したシオニストの武装組織は、先住していたパレスチナ人を虐殺して恐怖を煽りながら、75万人(人口の約半分)ものパレスチナ人を同地から追放していった。イスラエル人歴史家のイラン・パペによれば、この戦争が終わった時、彼らの531の村落が破壊され、11の都市部が無人にされたという事実からも伺い知れる。
彼らにとって、パレスチナ人は虫けらであり奴隷なのだろう。
2019年6月、1人のパレスチナ人男性が、イスラエル兵士に向かって花火を打ち上げたとしてイスラエル兵士に射殺され、その集団罰として7ヶ月間で600人以上の恣意的な逮捕・拘禁が行われた。逮捕された中には、4歳の子どもも含まれていたという。
その後射殺されたパレスチナ人男性の遺体の返還をイスラエル側に求めたところ、遺体返還費用の請求がされたこと、そして今後デモをしないことや武器を手放すことを約束させられたという。さらに事件後、パレスチナ人男性が家族と居住していた家に、イスラエル当局が深夜に踏み入り、家族への尋問が頻繁に行われており、父親も一時拘禁された。このように、罰が連座的に、家族やコミュニティにまで波及し、まさに「見せしめ」としての機能を果たしていることがわかる。
ガザにおいて、2007年からイスラエルが人や物資の出入りを制限する封鎖政策をはじめ、住民は水・食料・薬・電気・燃料などを得られず、人道危機が起きた。人びとは2018年3月から1年9ヶ月間、毎週金曜日に封鎖の解除と故郷への帰還を訴えて、封鎖用フェンスをち破るため、「帰還の大行進」と呼ばれる非武装デモを行ったが、フェンスの外で待ちかまえるイスラエル兵にことごとく銃撃され、多くの死傷者が出た。そして2023年10月7日、八マースらガザ武装抵抗組織が、封鎖用フェンスを壊してイスラエル領内で軍事作戦を行ったというのが、現在の紛争の起こりだ。
国連のグテーレス事務総長が、ハマースの攻撃には理由があると述べ、イスラエルは激怒したと言うが、そんなことを言う資格があるのだろうか。
2023年2月、南アフリカ政府がジェノサイド停止を求め、国際司法裁判所にイスラエルを提訴。翌年1月、国際司法裁判所はイスラエル政府に対し、ジェノサイドを防止するあらゆる措置を講じ、ジェノサイド実行を呼びかける者を罰するように暫定的に命じた。
これは、一般の考えに通じるものではないか。
現在も続くジェノサイド。
死者はすでに4万人を超え、その75%が女性と子供だと言う。
殺す武器の多くはアメリカからの援助だ。
アメリカでは金持ちのユダヤ系の政治的バックアップが、大統領選をも左右する。
それに対し、多くの学生が反対の声をあげていることにも納得する。
アメリカにも良心を持つ人がいるのだ。
Posted by ブクログ
イスラエルによるガザ地区攻撃により過去最悪の人道危機が続く中、現地での経験もある研究者やNGOなどの実務家など34人の執筆者が、中長期的な視座から、パレスチナ/イスラエルの「いま」を理解する手がかりになるよう多角的に論じる。
イスラエルによるガザ地区攻撃が深刻な状況の中でその背景等について少しでも知ろうと本書を手に取ったが、現地での活動経験のある人やレバノン在住のパレスチナ人の方などの実感のこもった報告や解説が多く、現在の状況に至るパレスチナ情勢の実情について多面的に理解が深まった。ちょっと全体的にパレスチナ側の視点に偏りすぎな気はしたが、問題の根本はイスラエルによる入植・占領にあるという認識を新たにした。