【感想・ネタバレ】ままならぬ顔・もどかしい身体 痛みと向き合う13話のレビュー

あらすじ

顔は、身体は、誰のもの?
顔認知研究の第一人者が、アイデンティティとコミュニケーションのジレンマに引き裂かれる顔と身体を対比させながら、ルッキズム、ジェンダー、病や死の受け止め方など、身近な偏見や矛盾について考える。科学的知見を交え、社会問題のヒントを提供するエッセイ。


【主要目次】
1 ガーンな身体(病とどう向き合うか/健康と病の境界/病や死をどう受け止めるべきか)
2 「しびれ」は幻の痛みなのだろうか(痛みという主観的体験/痛みとしびれ/身体感覚の侵食)
3 顔研究者の顔に麻痺が起きる(麻痺による影響/表情の大切さ/表情が感情を作る?/顔を見るとはどういうことか)
4 マスクのもたらす影響を知る(人はなぜイタイ話を求めるのか/コロナ禍での痛み/マスクへの忌避感が小さい日本/顔は重要なコミュニケーションツール/顔処理は変わるのか/ふれ合いの重要性)
5 確率の世界を生きるということ(正常バイアスの恐ろしさ/数値化されることの不安/闘病記と身近な人々からの情報/私の闘病の経緯/数値を持つ人、持たない人)
6 共感をうまく使う、共感に使われない(心を読む能力と、感情を共有する能力/感情を考える/表情を通して感情を研究する/共感性と「心の理論」/共感性と感情の共有と同調と)
7 顔の区別が必要になったわけ(いたるところに顔を発見する脳/相貌失認を再考する/顔を見るためのモデル/顔を見る能力の多様性/区別できる顔は増え続けるのか)
8 ルッキズムとアンコンシャスバイアス(就職活動をルッキズムから考える/人は外見を区別する生物である/アンコンシャスバイアスの存在に気づくことの大切さ)
9 男と女、違いはあるのか(自分への問いから始める心理学/男女の違いを進化から見る/顔だけで男女は区別できるか/男女で色の好みは違う?/社会が男女を作るのか)
10 すべてのジェンダーが解放され、女子大が必要なくなる日が来ますように(男性研究者を優遇しない女子大/男女雇用機会均等法がもたらしたしこり/女性の職業が限られていた時代/女性を二極化する歪んだ社会を生きて/女子大はオワコンか)
11 「かわいい」のマジックはどこにある?(「かわいい」で動物と親しくなる/いつまでもかわいいネオテニー/かわいいマジック、ベビースキーマ/「かわいい」と日本のポップカルチャー/「かわいい」は格下)
12 がんになって五年たちました(自分の身体は誰が管理するのか――身体への気づき/退院直後にやったこと/自分の中のルッキズムとともに)
13 顔と身体を持つことによるもどかしさ、生きること(ナルシストの苦しみは必然なのか/偏見という攻撃にさらされる顔と身体/思い通りにならない人生を知るための顔と身体/顔や身体への執着)
あとがき

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Posted by ブクログ

もとは東大出版会のPR誌「UP」に「顔身体通信」として連載された。単行本は『ままならぬ顔・もどかしい身体』というタイトル。キャッチーなネイミングに、座布団2枚!
著者は顔の心理学の研究で著名。ところが2008年に顔面神経麻痺になってしまった。顔の研究者が顔面麻痺とは、なんたる皮肉。でも、体験者だからこそわかることがある。顔についての思索や洞察はそれで深まった。
そして2018年。大型科研費「顔・身体学」が採択されて、代表者として研究体制を作りあげた矢先、がんが発覚。研究をしながら、治療に勤しむことになる。そしてここでも自分の体験から、痛みや身体について深く考えることになった。
研究者でありながら、麻痺や痛みの当事者でもあるという偶然。13の章では、それらに始まり、正常性バイアス、共感、ルッキズム、男女の就職問題にまで話がおよぶ。さらにこれまでの自分を振り返った箇所もある。
13の章は話題がばらばらのように見えて、読み進むうちに、みなつながって、ひとつの全体をなす。学術書を超えた、ふしぎな読後感がある。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

わたしの顔とはなんだろう。
わたしの身体とはなんだろう。
どう、向き合おう?
ガンと診断された「顔・身体学」の研究者が、ご自身の闘病経験と科学的見地を交え言いよどみながらも真摯に文章をつむいでいる様子が想像される、押しつけがましくない、丁寧な文章。

健康や共感、ジェンダー格差、ルッキズム、死。
だんは見えづらいけれどいざというときにはよく視える社会の課題を、顔や身体から出発して向き合おうと考えているエッセイが並ぶ。

以下あとがきより抜粋。
『顔には複数の側面があって、顔を見る他者からすれば相手の様子や表情を読み取るもの、顔を持つ当人からすれば自身のアイデンティティの象徴でもあります。
そのバランスが絶妙で、どちらを重視するかは個人によっても違うし、文化によっても異なるからです。
そんな各人の主観に陥りがちな顔については、あえて客観的なデータのお話を中心にしています。
一方の身体は、他者にとっては物理的に存在する対象であるとともに、当人にとっては「どのように動かすか」という一人称視点の対象でもあります。
そのため、身体については、闘病などの経験を交えた一人称視点の話を中心にしてきました』

女性全般に特におすすめな本ですが、一見見えないものを見ようとする勇気ある男性にもおすすめ。
男性女性問わず看護師さんにも個人的におすすめしたい本です。

自分自身の身体と顔が、わたしの人生にとってなにをあらわしているのか、社会にとってどういったカテゴリー化がしたたかにされていて、それについて声なき声を本当はずっと叫んでいたのではないかと、思わずはっと考えてしまう本でした。
2項対立の、単純なカテゴリー分けの世界観からぬけだす一歩になれる本だと個人的に思います。







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2026年06月30日

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